22.天然高分子系生分解性プラスチック/澱粉系その3 |
澱粉系について3回目、今回は金型製作上の注意点をまとめてみた。 |
1.コマ構造 澱粉系プラは特にバリの出やすい材料ではない。通常は一般的に使用されるコマ割り構造で特に問題ないだろう。 但し、下記に述べるエアーベントや固化の遅さにより、過剰な射出圧力や保圧などの影響を受けやすい傾向にある。 |
2.エアーベント 澱粉系プラは数ある生分解性プラスチックの中でも、もっとも溶融時のガスが多い部類に属する。このプラの成形経験の無いみなさんにはなかなかイメージしにくいかも知れないが、おそらくその想像を遙かに越える半端じゃない量である。そのガスの多くはプラ中に含まれる水分による水蒸気であり、エアーベントは許される限り大きく広くとることが望ましい。エアーベントが悪いまたはメクラ部(←差別用語かも知れないが一般にこう呼ばれることが多いのでお許し願いたい)があると、餅を焼いたようなヤケが簡単に発生することもあるので注意する必要がある。澱粉系プラの金型では、いかに効率よくガスを逃がすかが最大のポイントになると思っても良い。 また、このガスは金型との温度差により水へと液化し半透明、または乳白の糊状物質となってエアーベントを短時間で詰まらせることもある。したがってその配置やメンテ方法も考慮した金型設計としなければならない。尚、これを防止する一案として金型を閉じた後キャビティ内に一瞬高圧ガスを吹き込む、または吸引する等の対策案もあらかじめ考慮に入れておきたい。 更に、澱粉系プラでは同時に固化が遅いという特徴もあり、前述のように無用な保圧など設定されている場合、やはりバリへの注意は怠りないようにしたい。以前述べたバイオポールと理由は異なるが、こちらも意図的に「タマリ」等設け、積極的にガスを誘導するような解決手段を考えても良い。 |
3.スプルー・ランナー・ゲート 固化の遅い澱粉系プラではランナー断面積を汎用プラより小さくすることが可能である。但し、ピンゲートでは型開き時にノックアウトピン(ダルマピン)で引っ張れない、ランナー取り出し時に分岐部で切れやすいなど、トラブルを起こしやすいので注意が必要。またもっとも肉厚となるスプルーとランナーとの接続部は製品部以上に固化に時間がかかり、こちらもかなり切れやすい傾向がある。したがって可能ならば成形機を延長ノズル仕様とし、スプルー長は出来る限り短くしたい。 |
4.温調・冷却 生分解性プラの成形金型すべてに共通することではあるが、金型の温調・冷却方法とその配管方法は成形品品質はもちろん、特に経済性については命運を握ると思って良い。暖めるにしろ冷やすにしろ、水穴配管はキャビティ各部へ合理的に配置することはもちろん、忘れてならないのがスプルーやランナーに対しての処理である。前述のように、一般に金型内でもっとも肉厚となる部位はスプルーとランナーの接続部であり、型開き時に引っ張られる部位でもある。盲点ではあるがここへの対応の有無が、成形サイクルにもっとも大きく影響することも珍しくないのである。 |
5.突き出し 澱粉系プラは金型に残留する水分等の影響により、金型を使い込むほどに製品は型へと密着したがる傾向が顕著となる。そのため特に細いEピンなどでは製品に極めて食い込みやすく注意を要する。また、成形後硬化が著しい反面、金型からの取り出し時には靱性に劣り変形しやすく、時には大きく伸びが生ずることさえある。更に突き出し部の白化または変形なども極めて出やすい。したがって突き出しを配置する位置や大きさには特別の配慮をしたい。本来このような場合エアーブローが有効なのだが、澱粉系プラでは特に薄肉部など塑性変形や破れやすい傾向もあるので注意しなければならない。 |
6.アンダーカット 澱粉系プラは成形時変形しやすく、完全硬化後は逆に割れやすい傾向がある。これらは前回述べた含有水分の影響ではあるが、アンダーカットや無理抜きに適した材料とは言えないだろう。 |
−つづく− |
次回からは天然高分子系生分解性プラスチックの中から「セルロース系」の話を進めてみたい。 |
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