28.化学合成系生分解性プラスチック/PBS系その3 |
PBS系生分解性プラスチックについて、今回は金型製作上の注意点をまとめてみた。 ビオノーレに代表されるPBS系プラは外観及び物性上概ねPEに近似したプラスチックであるが、連続して良品を得るための金型構造には注意を要する部分もあり、軽く考えると痛い目に遭う可能性もあるので注意したい。 |
1.コマ割り構造 PBS系プラの成形では微生物産生系のバイオポールなどと同じように、しっかり充填し且つバリを完全に防ぐということには困難を伴う場合が多い。特に流動性の良さ、固化の遅さから来るバリの発生には苦労させられるのが常で、安定した製品を得るには金型側からも対応しておくことが望ましい。 通常、成形金型ではいくつかのコマを組み合わせてキャビティを構成するが、PBS系プラの金型ではコマの境界を出来る限り少なくしたい。特に成形圧力のかかる部位や外観面など製品設計段階で十分検討することはもちろん、金型製作上も極力コマで割らない工夫が必要となる。 |
2.エアーベント PBS系プラは特にガスの多いプラスチックではないものの、やはり適度な位置にエアーベントは必要となる。上述のバリの問題から通常より浅いエアーベントを広く取ることが望ましい。ここでもバイオポールと同じように深さ0.01mm以下で、流動方向に対して充填終了点となる位置に確実に設けなければならない。可能ならば流動解析ソフトなど利用し、終了点を見極めておきたい。 |
3.ゲート 各種ゲートが可能であり、生分解性プラスチックの中では扱いやすい部類に属する。但し、ピンゲートでは多少ランナーの切れやすい傾向もあり、ゲートも伸びることが起こりえるので、しっかり固化するまで型開きは出来ない。また、ピンゲートにストレート部を残すのも好ましくない。 また、前述の1項2項にも関係して、ゲートはパーティング面から確実にガスが逃げる位置に配置すること。 |
4.スプルー&ランナー 流動性が良く固化の遅いPBS系プラではランナー断面積を汎用プラより小さくすることが可能である。また、後述の温調・冷却次第ではスプルーとランナーとの接続部が切れやすく、こちらも要注意。あらかじめエッジ部にRを取るなど配慮したい。 更に可能ならば、成形機を延長ノズル仕様とし、スプルー長は出来る限り短くする。尚、完全固化後は特に脆いプラではないので、スプルーのテーパーは標準的な2〜3度で問題ない。 |
5.温調・冷却 生分解性プラの成形金型すべてに共通することではあるが、金型の温調・冷却方法とその配管方法は成形品品質はもちろん、特に経済性については命運を握ると思って良い。暖めるにしろ冷やすにしろ、水穴配管はキャビティ各部へ合理的に配置することはもちろん、忘れてならないのがスプルーやランナーに対しての処理である。 一般にホットランナーや特殊なプラスチックでない限り、スプルーやランナー部への温調はあまり意識しないと思われる。しかし、それらは製品自身よりも肉厚であることが普通で、固化の遅い生分解性プラにとって、その対応の有無が成形サイクルに大きく影響するのである。可能ならばスプルーやランナーを取り巻くように冷却管を配置しておきたい。 |
6.突き出し PBS系プラは金型に密着したがる傾向が強い。細いEピンなどでは製品に食い込みやすく、特に結晶化の浅い状態ではある程度伸びが生ずることもあり、白化または凸凹になりやすい。薄肉部ではその傾向も顕著で外観上極めてNGとなりやすく、そのような製品の取り出しではあらかじめエアーブローとの併用を考えておく必要がある。 |
7.アンダーカット PBS系プラは比較的柔軟で特に割れやすいプラスチックではない。PEやPPと同様ある程度のアンダーカットは可能で、いわゆる「無理抜き」も可能である。但し、伸びることもあるのでしっかりニゲを設けること。 |
8.その他 a.金型材質は特に選ばない。 b.インサート成形への対応も一般的な範囲で可能と思われる。 c.成形収縮率は一応2%前後を基本とするが、組立物等の場合は必ず試作型で確認すること。 |
−つづく− |
次回からは化学合成系生分解性プラスチックもう一つの雄「乳酸系プラ」の話を始めてみたい。 |
Home Column−index |