独 Badische Uhrenfabrik/へそ形目覚まし時計
新規追加 2010年 8月13日
 
完成品
概略寸法 全高16cm×幅13cm×厚み7cm (突起部、リング除く)
文字板 紙文字板/約φ9cm
仕 様 毎日巻き/小秒針付き/リン打ちアラーム
時 代 1900年前後
 
独 Badische Uhrenfabrik(バディスチ・ウーレンファブリク?) の1900年前後と思われるへそ形目覚まし時計です。国内ではロンバッハ合名会社という香港の商社扱いだったようですが、詳しくは分かりません。

日本で言うところの庶民派目覚ましのルーツ、と言っていい時計がお馴染みへそ形毎日巻き目覚ましでしょう。私感ですが、その中でも骨董屋で見られる大半(当地付近では感覚的に8割前後?)は精工舎と英工舎が占めているように思われます。こちらはそれらのお手本になったとも思われるユンハンスらと同じ、ドイツ製の無骨なほどにガッチリした機械が特徴です。

Badische Uhrenfabrik 社の詳細はイマイチはっきりしません。同社はドイツ黒い森地方での1880年代の創業から、比較的短い間に業務中断を余儀なくされたようです。その後復活するもこの時計のような「三日月にB」のロゴが付く商品年代は同社初期に当たるとされ、概ね国内では明治中期〜後期頃として良さそうです。ネット上では日新堂時計らのお手本になったと思われる、回転振り子の高級時計などヒットしました。

他に、筆者手持ち時計の中では「JOKER(ジョーカー)」と呼ばれる、菊?の花株をロゴとした角形時計が一般的には良く見られるようです。名前の由来は分かりませんが、「切り札」的な意味合いを持たせたのでしょうか? 年代的には三日月にBの後とされ、1900年代初頭以降からとなるようです。

まあ、いずれにしろ日本国内ではとても大手とは言えず、総量的にはユンハンスやキンツレーよりもかなり少数派となるんじゃないでしょうか?
 
 
部品一式
部品一式

入手時外観はまっ茶に錆びた状態でしたが、写真を撮り忘れてしまい・・・・^^;

っで、これはすでにバラして簡単な清掃と筐体を磨き終わった状態です。その筐体は小さな当たり&つぶれなどけっこうありましたが叩き出すなどして、幸い致命傷はありませんでした。頑丈な鋳物五徳(ゴトク)にはガッチリした機械が付きます。見たところ紛失部品はリンのストップレバーくらいでしょうか? 2つある小針はリンの目安針で指針側が折れて欠落しています。この他画像には写っていませんが、オリジナルと思われる真っ赤に錆びたリンが付いていました。

肝心の機械はゼンマイは巻けるけどまったく反応無いというジャンクでの入手です。確かに揺するとわずかに1〜2回音がしてすぐ止まっちゃう状態でした。
 
入手時機械
入手時機械

多少の綿埃に加え、まったく油っ気無い機械です。状態は良さそうに見えますが・・・・

地板にメーカー刻印のない無名機械で、ヒゲゼンマイ(テンプ)の振動サイクル調整のみ「S・F」と刻印されています。幸い両ゼンマイ生きており、全体の状態に目立つ問題はなさそうです。軸受けのポンチ跡もありません。時計側ゼンマイにはこの種としては贅沢な保護カバーが付いています。幅広の骨組みでガッチリした地板のせいか、機械部分だけのパッと見では少し小さめに見えるのが愛嬌です。大きなテンプは時代を感じさせ、動くようになればさぞかし派手な動作音がすることでしょう。
 
機械メンテ
機械メンテ

機械に目立つ問題はありませんでした。

エアー吹き、556吹き、エアー吹きと念入りに清掃した後しばらく寝かせておきます。その後あらためて地板の各軸受けや可動部に上質の機械オイルを注油。ゼンマイを巻くと何事もなかったように・・・・って言うか、最初の556吹き後からすでに元気に動き出していました。

上がった機械を五徳に固定しますが、右写真でも分かるようになぜか左中央と右上の2個所しか留めネジがありません。左上と右下の舌状の突起は単に地板に触れているだけです。通常3点留め機械が多いと思いますので、ちょっと珍しいかもしれませんね。
リンゼンマイは最大8回転までの巻き過ぎ防止のカムが付いており、セス・トーマスなどの機構と似ています。1度巻けばリン打ち8回分巻かなくても使えるのかと思ったら、鳴りだしたらほどけきるまで連続動作でした。
カムの形は違いますが精工舎のへそ形などでは、2回転だけ巻ける同じような機構の付いてる機械があります。
 
文字板
文字板

文字板はブリキ板に薄い紙貼りです。ちょっと安っぽい?^^;^^;

状態は時代経過からすれば十分満足いく範囲でしょう。まるで申し訳ないように小さく、「三日月にB」のロゴマークが針軸上にあります。五徳への固定は2個所のピン留めですが、共に紛失していて手持ち真鍮釘で代用しました。ここでも固定位置は3点ではなく写真にある2個所のみです。前項画像を良く見ると、五徳にはちゃんと3個所の穴が用意されているんですけど・・・・これって合理化?
 
目安針補修
目安針補修

指針側が切れ落ちていたリン目安針を補修しました。

左上写真のように目安針は軸部分のみで指針部分が切れ落ちていました。この機械の軸径は他のへそ形機械と違うため流用ができません。そこで部品取りとしている他のへそ形機から指針部分を切り取り、片側をL字に曲げておきます。
それを針金で縛り付け重石で固定し、小さな20W半田コテで軸穴に半田が流れ込まないよう慎重に半田付けします。
左下写真が半田上がりの状態です。針金をほどいて余分な半田をカッターで削り落として完成 (^^)(^^)
 
組み立て
組み立て

針を差し込み筐体と組み立て完成させます。
針の指し方は こちら 最下項参照!

組み上げた機械周りを筐体に入れて完成させます。このタイプでは筐体がリン支柱と足2本で直接五徳にねじ固定され、後年のプレス五徳とは違い重く堅固に高級感があります。国産機も初期のへそ形はこのタイプでしたが、大正中期頃から順次プレス五徳に変更され合理化が図られたようです。
 
ゆらゆらガラス
ゆらゆらガラス

オリジナルと思われるゆらゆらガラスです。

周囲に多少の貝殻割れはありますが、時代を感じさせるゆらゆらガラスの風防です。蛍光灯など直線的な物を反射させるとご覧のように揺れて見えるガラスです。

これら平面ガラスは1950年代頃から製造法が著しく変わったようです。それ以前のガラスは程度の差こそあれ、平面度不足によるゆらゆらがありました。国内では特に明治期のガラスで、オリジナルであれば酷いゆらゆらガラスとなっているのが普通です。中にはまるでヘアラインのようなスジが入ったガラスもあります。古時計ではそれらも良い味わいと時代考証の一助として受け入れられています。
 
完成品外観
完成品外観

経年色たっぷりですが、まずまずいい状態に上がりました。

写真では分かりづらいのですが、裏蓋上部に「MADE IN GERMANY」とあります。ツマミがすべてオリジナルかは疑問ですが、ゼンマイツマミに関しては古い特徴を残しているようです。筐体左側面は酷かった汚れを落として行くうち、銅下めっきのような赤茶色となってきましたので磨き込みもほどほどにしています。リンや持ち手(リング)周りの錆も経年色の内としてちょうどいい雰囲気でしょう。
もちろん完動品として蘇りました (^^)(^^)
 
 
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