仏 JAZ(ジャズ)/革シボ柄目覚まし時計
最終更新 2010年10月20日
 
JAZ/革シボ柄目覚まし時計
概略寸法 全高10.5cm×幅9.5cm×厚み5.5cm (ツマミ類除く)
文字板 紙文字板/約φ7.5cm
仕 様 毎日巻/目覚ましアラーム
時 代 1940年代〜50年頃
 
可愛い小鳥のロゴとフランスらしい洒落たデザインがマニアに人気の「JAZ(ジャズ)」です。これは1940年代から50年前後と思われる、外観に革シボ柄を模した目覚まし時計です。

JAZ の名は創業当時流行っていたJAZZ音楽に由来しています。フランス語表記のため「Z」は一つなんだとか。およそ100年前の1910年創業で、本国でも日本でもジャズと言えば目覚まし時計で有名です。
小鳥のロゴはキレンジャクという鳥だそうです。第二次大戦中、ドイツ軍占領下のフランスでは敵国アメリカ発祥のジャズなんて御法度。なんだかどこぞの国でもあったような敵性言語禁止などという事情によるそうで、所詮そんな度量だから負けちゃうんだね。なんでもキレンジャクのフランス読みが「ジャズー」なんだとか? それで、文字が使えないならロゴを作ってと、これも一種のレジスタンスですね。

この時計と同じロゴが入った頃のJAZは、ドイツ製を思わせるやや無骨な筐体にガッチリした機械が特徴です。後に尾羽が跳ね上がったロゴと変わり、機械もより小型化され可愛いデザインが多くなります。
 
 
入手時外観
入手時状態
革シボを模した焼き付け塗装と思われる筐体には角を中心に細かな剥がれがあり、全体にやや色褪せやスレのある状態です。目立つ傷みはないものの、文字板のアルミ化粧枠には落としたらしい凹みと歪みがあります。ツマミは揃っていますがすべてオリジナルかどうかは分かりません。この手に良くある取っ手は無く、天面にはリン止めの小さなボタンがなんとも可愛く見えます。
さすがに半世紀以上に及ぶ経年感は隠せませんが、パッと見の印象は悪くはありません。
機械動作は時計は動くものの安定せず、リンは見当違いな時に鳴っちゃうと言うジャンクです。
 
文字板
文字板
だいぶ黄色っぽく経年の味!?が出た紙文字板です。
上にリン合わせの小さな目安針、下にはお馴染みのロゴが入ります。時間文字は夜光入りですが、ブラックライトを当てても反応はかなり薄れ気味で蓄光能力が落ちていました。
 
分解 
分解
レストアのためバラします。
裏蓋を開けるとその下にもう1枚、この種としてはなかなか立派な内蓋がありました。裏蓋はハンマーで叩かれるリンとなり、内蓋の留めネジは4個中左上の一つが紛失しています。下の写真ではアルミ化粧枠の歪みが良く分かります。ガラスは外側に緩やかな凸型の曲面ガラスです。
 
機械
機械
機械は鉄にめっきを施したと思われるしっかりしたフレーム(地板)です。歯車類もなぜか色分けされ混じって配置されています。応力の大小によって使い分けしているのかとも思いましたが、必ずしもそうではないようで・・・・? その鉄製部分に錆はありますが、機械全体に目立つ傷みはありません。
内蓋は上写真でも分かるように機械全体をカバーして異物の混入を防ぐと共に、機械と筐体を止める部材を兼ねています。ドイツ製を思わせるしっかりした作りの時計です。
 
機械2−1 機械2−2
機械2
大きめのテンプや機械全体に目立つ傷みやガタはありません。鉄部材に多少の錆はありますがそれも表面のみで、ミシンオイルを塗っておきます。ほとんど・・・・って言うかまったく弄るところもない状態良い機械でした。
右写真で分かるように地板の軸受け(ホゾ穴)部分にはわざわざ専用部材を埋め込み、この種としては大変手の込んだ真面目な作りです。ちょっと分かりづらいのですが左上に機械ナンバーと思われる「JAZ Mod.D」と刻印があります。
洗浄した後注油すると何事もなかったように動き出し、動作の不安定は単純に潤滑不足が原因だったようです。
 
ロゴと針
ロゴと針
ジャズのロゴも他社同様時代により変わりますが、これは1940年代から60年頃までのものです。6時下に「MADE IN FRANCE」、欄外に何やら書いてありますがアルミ化粧枠と擦れてる上にフランス語のようで読めません。
針は裏側から見ると文字と同じ夜光塗料が長穴を塞ぐように塗ってあったようです。残念ながら経年のため肝心の穴部分からはほとんど剥げちゃって表からは分かりません。
 
組み上げ
組み上げ
注油と錆止めを施し元気になった機械と他の部材を組み上げます。
針はリン鳴り位置に合わせて差し込み、時間ズレで鳴ってしまう問題も解消。内蓋を取り付け、木っ端で叩いて歪みを修整したアルミ化粧枠を入れた筐体と合わせて固定。最後に裏蓋とツマミ類を取り付けて完了です。
 
他項との繰り返しになりますが、目覚まし時計の場合設定時間通りにリンが鳴るよう、針の差し込みにはルールがあります。
まず秒針がある場合、適当に差し込んでかまいません。裏の針廻しツマミをゆっくり回してリンが動作する時間に合わせます。目安針をここで差し込みますが3時とか9時とか分かりやすい時間に差し込み、その指示時間と同じ3時とか9時に合わせて短針を差し込みます。再度12時間分針を回して設定通りにリン動作が始まるか確認し、最後に目安針の指示時間に微調整しながら長針を差し込んで完了です。良く目安針の指示とリン鳴り時間(短針の位置)が合っていない目覚ましがありますが、こうして合わせれば簡単に直ります。

とは言えこの種の目覚ましでは、構造上10分〜15分程度の誤差は正常の範囲と大目に見てやって下さいね。現在のクォーツ時計のように分単位秒単位で鳴らすことは出来ません。
 
新規追加 2009年 3月10日
 
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