独 Mauthe /へそ形目覚まし時計 |
新規追加 2011年 4月20日 |
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概略寸法 |
高16cm×幅12.5cm×厚み6.5cm (突起部除く) |
文字板 |
紙文字板/約φ9cm |
仕 様 |
毎日巻き/リン打ちアラーム |
時 代 |
1920年頃 |
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ドイツ Mauthe(マウテ)のへそ形目覚まし時計です。
マウテ(Friedrich Mauthe Uhrenfabrik/Friedrich Mauthe Schwenningen)は1800年代半ばから1970年代まで、百数十年の歴史を誇るドイツを代表する古時計メーカーの一つです。木工に優れた協力先を持ち、質実剛健を地でいくいかにもドイツ時計らしい作りには定評があります。特に掛け時計ではマニア垂涎のメーカーなのではないでしょうか?
いくつかあるロゴの中からもっともお馴染みはこの時計にもある、鷲が頭文字「FMS」のメダル?を掴んだロゴでしょう。創業者マウテ氏の奥さんはあのキンツレ氏のおばさんとなるそうで、そんなこともあってかどうか羽を広げたキンツレのロゴに良く似ています。Web上では時々キンツレと間違って紹介されてることもあるようです。
ドイツ古時計として日本での人気はユンハンス、キンツレの2強に続く、ハンブルグアメリカン、ヘルムレらと並ぶ第2グループと言ったところでしょうか? ドイツ時計としてはどうしても装飾掛け時計や大型置き時計など高級機に目を奪われがちですが、もちろんリーズナブルな金属筐体の目覚ましだって各社作っています。あのグスタフ・ベッカーでさえ不況の時代には作ってたほど。それほど馴染みの目覚ましがへそ形です。
このマウテへそ形は1920年前後の時計と思われ、先のロゴが文字板にも裏蓋にもはっきり残っています。毎度のジャンク入手で外観的には良くない状態でしたが、幸い機械に目立つ問題はなく良い状態に上がりました。 |
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入手時外観
入手時外観は毎度・・・・^^;
錆び錆び、めっき剥がれ、汚れ&小傷、凹みも少々・・・・、毎度毎度の歴史の生き証人!? 特に裏蓋はご覧の通りで、写真の右側周囲部分では一部朽ちて穴があきそう。リンストップレバーは紛失ですが、他はオリジナルかどうか不明なもののツマミ類は揃っています。大きな目安文字板の中に上述のロゴが見えます。 |
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部品と内部状態
ツマミ類と裏蓋を外して機械を取り出します。筐体枠には溶剤でも垂らしたようなシミが内外にあり、その付近の裏蓋は錆が特に酷い状態です。案の定外す際に引っ張るとミシッと音がして朽ち、小穴が開いてしまいました。
元々動作不調というジャンク時計ではあるものの、機械に限っては多少の埃がある程度でパッと見目立った問題はなさそうで一安心。 |
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文字板と機械周り
針や文字板を外すと更にさびさびの五徳が・・・・^^; でも、頑健な厚板五徳はいかにも質実剛健なドイツ製らしく好感。油染みもなく経年からすれば十分良い状態の文字板にも救われました。 |
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入手時機械
多少の綿埃・土埃と五徳の錆は目立つものの、意外にも機械の鉄部材に酷い錆はなく概ねきれいです。鋼線と思われるヒゲゼンマイもきれいでした。目立つ補修跡もなく外観部の傷みの割に機械自身は思った以上に良い状態。これなら注油だけで動くのかな?と、テンプや軸回りに注油してみると期待通りすぐ動き出しました。どうやら致命傷はなさそうです。 |
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メンテ済み機械
それではと、洗浄と注油を行い機械メンテはあっけなく終了。
ご覧のように地板のどこにも刻印・書き込みの類が無い無名機械ですが、これがマウテのオリジナルであるようです。特徴と言っていいのか、この地板にはネジ穴3個所以外にも使用されてないたくさんの穴があっちこっちにあります。おそらく当時、何種類もの時計に仕様を替えて使い回されていた、言い換えれば多くの置き時計に共通するベースとなる地板なのかと思われます。 |
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汚れ・錆落としメンテ
筐体は汚れさえ落とせばきっとピッカピカのニッケルめっきが・・・・ニッケルめっきが・・・・^^; 出てこない? なんで?
この筐体枠、磨いてもくすんだ暗い色調からして亜鉛めっき? つまりトタン? 母材も厚く固く真鍮ではなく鉄みたい。まさしくトタンですね。とにかく、いくら磨いてもピッカピカのニッケル面は出てきません。いかにも溶融めっきらしいざらつきがあり、20〜30年雨ざらしのトタン波板みたい。トップ画像でも分かるようにくすみながらも青光りする筐体は、これはこれで経年の良い雰囲気が漂います。
いずれも錆び錆びの裏蓋、五徳、リンは鋼線や真鍮ブラシで丁寧に擦って錆や浮いためっきを落とした後、機械オイルとオイルストンで軽く磨きを掛けます。仕上げにウェスできれいに拭き取り、当面の防錆効果は期待していいでしょう。 |
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文字板と裏蓋
文字板は画用紙程度の薄紙ですが、固く張りがありそれほど弱々しくはありません。それでも水が染み込むとヨレヨレになっちゃいそう。幸い経年からすれば十分良好と言え、裏面も五徳の錆が多少染みてるくらいです。その裏面に良くある修理歴など書き込みはありません。
錆び錆びだった裏蓋もここまで戻れば十分でしょう。補強と思われる特徴的な同心円模様が目を引きます。天面側の凹部にはちょっと見えにくいですが文字板にも見られる同じロゴが刻印されています。 |
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プレス五徳
特徴的な五徳はプレス物です。でも上述のようにかなり厚い板を抜き曲げしていて強度は十分。同時代の日本製のようにやわではありません。写真手前側が天面で、両鈴目覚まし等と共用らしいステーが両側に立っています。 |
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メンテ完了部品
一通りのメンテ&清掃の完了した部品一式です。 |
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組み立て1
五徳に機械を3本のネジで固定。潤滑を得たテンプはかなり緩んだゼンマイながらも元気に駆動。 |
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組み立て2
文字板を手持ち2本の真鍮釘で固定します。
紙の釘穴が大きくバカになってるため、その際M2ワッシャーを追加。この種の釘留めでは通常先を曲げて固定しますが、今回は裏側に合成ゴム系接着剤を盛って固定(右下写真)。後で外す時簡単だし紙にも余計な負荷を掛けませんからね。
またバカになって大きく動いてしまう穴側には別の合成ゴム系接着剤を垂らし、しっかりガタ止めも完了(左下写真)。
良く見ると2時付近に薄くたぶん万年筆書きで「キ??」と3文字くらい見えます(右上写真)。この時計全体を通じて唯一の書き込みです。 |
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組み立て3
リン鳴り時間を確認しながら針を付け直し、足には手持ちお椀状の真鍮ワッシャーを追加。これも筐体枠側の穴が広がってバカになってるためです。
更に天面のリン支柱ですが、五徳と筐体枠との間に隙間がありねじ込むと枠が潰れて歪んでしまいます。ここにはM4ワッシャー2枚を追加。紛失と思ったリン止めレバーは実は元から切れていて、ワッシャーのようになっています。支柱の先にはサイズ違いのナットがあり、これがリンの受けとなっていました。これが無いとリン留めの輪っかをねじ込んでもリンにガタがあります。オリジナルがどうなのか分かりませんが、細部ではさすがに手が加えられているようでした。かく言う筆者も先の文字板の付け方など手を入れてますからね。
尚、マウテのへそ形では、他社で良くあるストッパー押さえのコイルバネは元々付かないとの情報があります。 |
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レストア完了
最後に裏蓋を被せツマミ類を取り付けてレストア完了!
もちろん動作に問題なく、思いの外、って言うか日に30秒と狂わずこの種としては時間もかなり正確。さすがドイツ製と、満足いく状態に仕上がりました(^^)(^^)
筐体枠のニッケルめっきとは違う異質な質感が側面写真で良く分かると思います。これがオリジナルだとすれば時代的にドイツの混乱期であった、第一次大戦中、もしくは敗戦後の1920年代前半ってとこでしょうか? |
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