アメリカ/NEW HAVEN(ニューヘブン)/12インチ八角掛け時計
新規追加 2009年 1月 5日
 
レストア完了後外観
概略寸法 全高60cm×幅42cm×厚み11cm
文字板 12インチ/ペイント文字板
仕 様 8日巻/渦ボン打ち
時 代 1900年前後(明治中〜後期)
 
アメリカ「NEW HAVEN(ニューヘブン)」の12インチ八角掛け時計です。
ニューヘブンはアメリカでもセストーマスに次ぐ2番目に古い古時計メーカーであり、1800年代半ばから1900年代半ばまで1世紀を超える歴史を誇ります。詳細はこちら(英文)

アメリカの古時計メーカーとして国内では、セストーマス、イングラハム、アンソニアが人気ビッグ3と言ったところですが、ニューヘブンはそれらに続くグループと言っていいでしょう。このニューヘブン社にはアメリカ古時計界のリーダー的人物 Chauncey Jerome が関わっており、彼は1820年代という最初期より時計の改良・製造に携わっていました。そのノウハウを正当に受け継ぐ形となったのが1850年代 Hiram Camp の興したニューヘブンなのです。

この時計は大きな12インチ文字板の最もオーソドックスな八角掛け時計です。Simple is Bestを地でいくような何の飾りもない筐体に、大きな19世紀の色香たっぷりの機械が入ります。文字板ガラス紛失やボン側ゼンマイ切れなど現状で欠点もありますが、筆者好みの時計を紹介しましょう。
 
 
入手時外観 突板破損部
入手時外観
多少の埃や汚れはあっても全体に悪くはない外観です。しかし、文字板ガラスの紛失と、振り子室左下部のカッターで削り取ったような突板の剥がれが目立ちます。
機械は多少動くもののすぐ止まっちゃうと言うジャンクで、ボンも鳴りません。早速ゼンマイを確認すると時計側は大丈夫でしたが、やはりボン側は手応えなく空回りして切れているようです。
 
入手時文字板 文字板補修部
文字板周り
ブリキのペイント文字板はオリジナルと思われ、細かいヒビ割れがびっしり。幸い現状で剥がれ落ちるほどではないものの、右写真のように周囲の剥げた所には補色補修がしてありました。文字は全体に擦れや色あせがやや目立ち、一部補筆修正してあるようです。とは言え、遠目にはそれほど悪い印象は受けず、年代相応と言ったところでしょうか?
この文字板で面白いのは12インチの大きく重い文字板を、わずか3個所の木ネジだけで筐体に固定しているところです。更にネジ留め位置もヤケに内側となっていて、最初のレストア完了画像でも分かる通り普通ガラス枠に隠れるネジの頭が見えてしまいます。
 
振り子室 筐体裏面
振り子室と筐体裏面
共にオリジナルの振り子室ラベルやガラスペイントは、時代から考えれば最良レベルで残っています。
筐体裏に良くある保険証やメーカーを示す貼り紙はありません。掛け金具は木ネジ1本締めで、大きな時計の割にはちょっと心許ない気がします。これも時代の表れでしょうか?
 
入手時機械 文字板裏の修理履歴
入手時機械と文字板裏の書き込み
文字板を外して現れた機械は時代を感じさせる大型機械が付いていました。地板にメーカーを示す刻印はありません。それでも下記の筐体への取り付けネジ穴位置など考え合わせ、オリジナルの組み合わせと思って間違いないでしょう。ゼンマイ交換などメンテの履歴を示すように、2枚の地板を繋ぐポスト回りには小さな傷がたくさんありました。留め方は後年のネジ留めやC環ではなく針金を横から差し込んで固定する仕様で、これも往年の証でしょうか?。ボン側ゼンマイは写真のようにやはり切れていました。
文字板裏には写真のような筆文字で明治と思われる「41.7.25」や、「大正元年」等修理歴の書き込みがあります。この修理歴から推測して、時計そのものは明治30年前後の年代かと思われます。
尚、白丸は個人名のため筆者の方で消しておきました。
 
取り外した機械と筐体内部
取り外した機械と筐体内部
上下に枕木の付いた機械はその枕木ごと4本の木ネジを緩めて外します。筐体のネジ留め穴と枕木の跡も1:1の関係になっていて、オリジナルであることを示しています。筐体内部は掃除の必要もないほどきれいでした。
 
機械表面 機械裏面(取付面)
機械
大きな機械は前述のように枕木を付けたまま外します。左のボン側ゼンマイは破断していますが時計側は大丈夫です。それなりの年代は感じさせますが、ガタ止めのポンチ跡もわずかな修正のみできちんと注油されて使用されていたことが分かります。100年を超えてこの状態なら文句ないでしょう (^^)(^^)
たびたび止まってしまった時計動作も単純に潤滑だけの問題でした。
 
ボンゼンマイ暫定処置 破断したボンゼンマイ
ボン側ゼンマイ固定
右写真のようにボン側ゼンマイは軸付近で破断していました。交換ゼンマイを入手するまで、とりあえずいつものように針金で縛って固定しておきます。
 
振り子室扉補修部 振り子室扉接着補修
振り子室扉補修
振り子室扉の釘留め部分に割れと組木の緩みがあり、木工用接着剤で補修しておきます。
 
突板補修 突板補修部
突板補修
と言っても突板そのものを作り直すことは出来ませんので、右写真のように傷消しペンを塗って目立たなくします。何色か重ね合わせて色を合わせ、まあまあ遠目には目立たなくなりました。
 
組み上げ1 組み上げ2
組み上げ
水拭き&ワックス掛けコースで仕上げた筐体に、洗浄&注油を施した機械を元通り取り付けます。続いてガラス枠、文字板、針の順に取り付け、とりあえずのレストア完了です。
ボン側ゼンマイと文字板ガラスは入手出来た時点で交換することにしましょう。
 
 
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