龍水社/8インチ宮形掛け時計 |
新規追加 2009年 6月25日 |
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概略寸法 |
高さ75cm×幅32cm×厚み15cm |
文字板 |
8インチ/ペイント文字板 |
仕 様 |
14日巻/半打ち付き2本棒リン |
時 代 |
昭和30年前後 |
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希少?な龍水社のけっこう大きな8インチ宮形掛け時計です。
龍水社は昭和20年代、敗戦後の地方産業育成という国策もあり「農村時計技術講習所」が設立された後、その第1期卒業生を中心として南信地区の長野県伊那谷で設立された時計会社です。元々龍水社は上伊奈蚕糸(製糸)組合が経営母体となり、昭和23〜4年頃その蚕室を改造して時計工場が作られたと言われています。
昭和36年(1961年)には現在のリズム時計やシチズン時計らと龍水時計株式会社を設立しますが、龍水社自身の時計生産がそのまま続いたのかどうかはっきりしません。昭和48年(1973年)その龍水時計株式会社もリズム時計工業に合併されます。
戦後という時計メーカーとしては新しいメーカーですが決して大企業とも言えませんので、現在まで残された初期龍水社名義約10年間の完動品時計もそう多くはないでしょう。それでも地元伊那地方にはけっこう残っているかもしれませんね。龍水社については情報も乏しく、お詳しい方がいらっしゃいましたらお教えいただければうれしく思います。
山岳県長野らしい霞みの上の三峰中にRのロゴがなんだか可愛く見えます。 |
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入手時外観
目立つ当たりや傷みもなく塗装の輝きもあり、当時の国内状況からすれば良好な外観です。
大きな宮形筐体は状態良く、わずかなくすみや汚れなどある以外ほとんど傷らしい傷もありません。当時の宮形木製筐体では半ば当たり前のようにある扉や筐体の反り、組木の剥がれなど大きな筐体ながらまったくなく、大変丁寧に作られまた大切に使用されてきたことが分かります。振り子室ガラスは面取りされたステンドグラスのような作りで、ちょっと高級感もあり隅々まで丁寧な作りです。
尚、画像にはありませんが右側面に寄贈を示す書き込みがあります。 |
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文字板と機械
文字板を外して現れた機械とその文字板です。
文字板はアルミ板のペイント文字板で、12時下に三峰の中にRのロゴ、6時上に「RYUSUISHA」と社名があります。多少の変色や細かな傷も経年の味でしょう。裏面には「8.2.17y」とありますが製造年にしてはおかしいし、マジックペンのようですので平成17年の補修記録でしょうか? |
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機械室
大変きれいなガランとした機械周りです。
っと言うもの筐体が大きいからですが、機械は普通の8インチ時計サイズです。2本の棒リン打ちで、低めの良い和音を響かせます。背板の継ぎ目にはしっかり波釘が打たれ、丁寧な作りの筐体はほとんど反りもありません。 |
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機械
8インチ八角掛け時計などと同じこの種としては良くある半打ち付きの機械です。
目立つ傷みや問題もなくきれいな状態で、写真撮影のため外した以外は注油&点検を行っただけです。正面左にロゴの刻印があり、非常に短い振り竿を少し右にオフセットして取り付けています。
ゼンマイは目一杯巻かなくても実質12〜3日間稼働します。上のゼンマイ写真を見ても14日(半月)巻きとしていいでしょう。 |
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針補修
短針は差し込み、長針はナット止めです。
オリジナル塗装だと思いますが、塗装液から引き上げた後そのまま乾かされたのかいずれも先端にダマが出来ています。短針はヨレヨレでしたのでヤットコで直してから再塗装しました。 |
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振り子
直径約11cm余りと大きな振り子です。
何の変哲もありませんが、シンプルな作りは筆者好みの機能美として好感持てます。 |
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試運転
レストア・・・・と言っても直しを入れたのは短針くらいですが・・・・^^;
とにかく再度組み直して試運転です。前述のように90%程度のゼンマイ巻きで2週間弱程度動き、動作に問題ありません。ゼンマイが緩んでも狂いは少なく、実用機として十分な実力です。
先の講習所卒業生とあればまだまだ若い技能士のみなさんから生まれた時計だと思いますが、この時計を見れば他社に負けない気合いを感じます。機械はもちろんのこと、木工部の狂いの少なさにはとにかく驚かされました。戦後の時計故画像でも分かるように通常見えない背板部分などラワン材が多用されていますが、塗装された外観部分はいずれも年輪のある材(たぶん地元の国産材?)を使用しています。十分乾燥させた良い材を使ってたのでしょう。時計業界では新参者であっても、高度成長期に向かう同時代他社とは一線を画したポリシーがあったように感じます。 |
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