精工舎/ウラビー目覚まし時計「主婦之友社」バージョン
最終更新 2011年 3月28日
 
トップ画像
概略寸法 全高8cm×幅8cm×厚み4cm (突起部除く)
文字板 ペイント/約φ6cm
仕 様 毎日巻き/リン(裏蓋)打ちアラーム
時 代 昭和初期頃
 
精工舎(服部時計店)は明治25年、創業者服部金太郎により東京市本所区石原町に産声を上げます。翌年には同区柳島町に移転し、それまでの家内工業的製造から動力を導入し本格的な時計製造が始まりました。工場移転後の発展は目覚ましく、10年を経ずにして早くも国内トップクラスの大時計メーカーに成長しています。今や世界に冠たる「SEIKO」ブランドとなったセイコーホールディングスの礎は、この頃より着実に築かれ続けて来たと言っていいでしょう。

可愛さが大人気のウラビー目覚まし時計から「主婦之友社」バージョンです。ウラビー目覚ましのオリジナルは上部の丸時計部分に足の付く良く見る目覚まし形状ですが、こちらは足の代わりに台座が付き、文字板には主婦之友社の名が入ります。どのような経緯で名が入ったのか、あるいは提携したのかイマイチ真相は分かりません。数多いウラビーシリーズの中では希少と言うほどではないにしても、ちょっと珍しい程度の部類には入るようです。

ちなみに、ビー型機械を使用し筐体後ろ側にリンとなる裏蓋が付いている目覚ましはみんなウラビーと呼んでもいいのですが、一般にはこの機種のように裏側に目覚まし合わせの小さな目安文字板がある機種を指してウラビー(裏ビー)と呼ぶのが普通です。精工舎の元箱にもあえて「ウラビー」との表示が有るようで、本名と言ってもいいでしょう。

戦前の大衆的目覚まし時計としてはへそ形目覚ましが有名です。対してこちらウラビー目覚ましが当時の目でどう見られていたかは分かりませんが、現代ではなによりその可愛さが人気の大きな理由でしょう。一番下の画像通りへそ形と比べると半分ほどの大きさながら、価格的にはベースとなる時計でもウラビーの方が3割前後高かったようです。その機械は丸形目覚ましスタイルの他、アンチモニーや鉄など様々な筐体にも載せられました。でも、へそ形以上になかなか状態の良いものは少ないようです。
 
 
入手時外観
入手時外観

入手時外観はご覧の通り・・・・^^;

どのような履歴を経て筆者の手まで世渡りしてきたのか分かりませんが、どう見てもここ数10年はメンテも動作もしてないなーって感じ。よく棄てられなかったなー・・・・って言うか、こりゃダメだ!って棄てられた物が筆者の手に入ってきたと思った方が正確なのかも?

筐体周りの酷い汚れもさることながら、特にリンとなる裏蓋は完全めっき剥がれ錆浮き状態。リン共用の裏蓋は音を響かせるため軽く焼きが入っており、へそ形のリン同様ウラビーに限らず多くの古目覚ましでめっき剥がれは当たり前。当時の鉄へのめっきは前処理の悪さも手伝って密着性が悪くピンホールも多いんですよね。よって、大なり小なり錆浮きのあるのが普通。それでもやっぱり、これはちょっとレベル超えてるか・・・・^^;

機械はもちろんジャンクでの入手ですが、振るとほんの数回、一応動作音は聞こえます。
 
入手時機械
入手時機械

けっこうな綿埃に加え、毎度まったく油っ気無い機械です・・・・^^;

ウラビーでも比較的新しい機械では、2階建ての小さなラグビーボール形地板に鍵Sの刻印が入ります。この機械では無名ですのでやや古手の機械と言うことでしょう。また左の写真を見ると分かりますが、目覚ましのON−OFF設定レバーを外さないと裏蓋の内枠(埃避けになっています)が外せません。これもウラビーでは初期機械の特徴で、昭和一桁くらいまでの時期かと思われます。

ちなみに、この写真に見える小さな文字板が目覚まし時間合わせとなり、短い固定針が先のラグビーボールに付いてますよね。目覚まし合わせは文字板側をツマミで回し、この小さな固定針に合わせます。
また、ウラビーの名の由来は上述の通りですが、ここでは特に「裏蓋兼用のリンを叩き、小さな目覚まし合わせがあるビー型機械目覚まし」というような意味として良さそうです。
 
文字板
文字板

真鍮板にペイント文字板です。

へそ形の多くが厚紙製であることと比べると小さいながら贅沢な作りです。状態は時代からすれば満足いく範囲でしょう。12時下に鍵Sロゴと6時上に右書きで「主婦之友社」、6時下欄外に「MADE BY SEIKOSHA, TOKYO, JAPAN.」とあります。

裏側には判押しのような「14.107」、手書きで「吉田時計・・・・」などとあります。昭和14年の修理歴と思って間違いないでしょう。
 
部品一式
部品一式

一通りバラした部品類です。

筆者の呼び方ですので正確ではないと思いますが、上段左から裏蓋、台座、裏蓋内枠、文字板枠、小物部品。下段左から筐体枠、機械、文字板です。写真にはありませんがこの他に面取りのガラス風防とリング状の文字板飾り枠があります。
 
機械メンテ
機械メンテ

っと言っても機械に目立つ問題はありませんでした。

いつものエアー吹き、556吹き、エアー吹きと念入りに清掃した後しばらく寝かせておきます。この時点でテンプは自然に振動し始め、今回も単純に潤滑不足と思って良さそうです。その後あらためて地板の各軸受けや可動部に上質の機械オイルを注油。ルーペでよく観察し、目立つ磨耗や致命傷はありません。多少ガタの大きかったテンプの受ネジを締め込んだくらいです。

尚、前述のようにラグビーボール形地板上にロゴ刻印はありませんが、上画像にあるアルファベットの「Q」の字が刻印されていました。残念ながら意味は分かりません。
 
筐体メンテ
筐体メンテ

筐体メンテは1に根気2に根気?・・・・^^;

っで、その汚れの酷さから今回はこれまでと違う方法で行いました。こんな方法がいいのかどうか分かりませんのであくまで参考です。
まず手っ取り早く汚れが浮かないかと熱湯浸けから自然冷却。冷めたところでナイロンタワシに台所洗剤を付けゴシゴシ。再度水洗いして下段の裏蓋と内枠は錆も汚れも落ちました。元々錆び錆びだった裏蓋は全体にミシンオイルを塗り、しばらく放置してからウェスできれいに拭き上げておきます。上段の筐体枠と台座は続けてワックス入りコンパウンドで磨き仕上げています。
 
組み立て
組み立て

上がった部品を組み立てていきます。

機械に文字板枠をネジ留めします。
文字板を左右のピンで取り付け、目覚まし時間に合わせて針を差し込みます。
機械周りでは唯一紛失していた目覚まし設定レバーの留めピンですが、代わりにSUS(ステンレス)針金(写真でS字形の針金)を差し込んでいます。
裏蓋の留めネジは3本中2本がオリジナルとは別のネジに替わっていて、ピッチ違いのネジを無理にねじ込んだのか完全になめてしまっています。実質1本しか効いてない状態はまずいと、同タイプの手持ちネジに交換しました。
 
完成品外観
完成品外観

毎度経年色たっぷりですが、初めが初めですからまずまずいい状態になったと思います。

筐体も台座もコンパウンドでもっときれいに磨き上げることは可能ですが、外観全体のバランスからすればこんなもんでしょう。紛失していた左側(リン側)ゼンマイツマミは手持ちの中から同種のツマミを付けています。
もちろん完動品として蘇りました (^^)(^^)
 
大きさ比較
大きさ比較

ご参考までに既出の目覚まし2台と大きさ比較です。

前2台がウラビーで左が通常の目覚ましタイプ、右は本項の主婦之友社バージョン。目覚ましの中でも大きなへそ形とでは約半分、同じく平均的サイズよりやや小さな JAZ と比較してもこんなに小さいんです。手乗り文鳥ならぬ手乗り目覚まし!?
 
新規追加 2010年 5月 5日
 
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