精工舎/5インチ「No.190 ライン」小型スリゲル座敷時計 |
最終更新 2011年 5月11日 |
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概略寸法 |
全高57cm×幅25cm×厚み15cm |
文字板 |
5インチ/オリジナル・セルエト文字板 |
仕 様 |
14日巻/渦ボン打ち(半打ち付き) |
時 代 |
昭和初期 |
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精工舎(服部時計店)は明治25年、創業者服部金太郎により東京市本所区石原町に産声を上げます。翌年には同区柳島町に移転し、それまでの家内工業的製造から動力を導入し本格的な時計製造が始まりました。工場移転後の発展は目覚ましく、10年を経ずにして早くも国内トップクラスの大時計メーカーに成長しています。今や世界に冠たる「SEIKO」ブランドとなったセイコーホールディングスの礎は、この頃より着実に築かれ続けて来たと言っていいでしょう。
この時計は精工舎の数ある掛け時計の中でもとりわけ人気の高い小型スリゲルシリーズ中の1台です。ドイツ製機械をお手本とした香箱入り14日巻ゼンマイ機械による、やや小型の座敷時計となります。手持ち資料に無く名称や号数が不明でしたが、某有名サイトからの情報により「No.190
ライン」という時計だと分かりました。もちろんラインの名は左右の飾り彫りを指すものでしょう。人気の「スリゲル4号」らと同種且つ同字体のセルエト文字板のため、ほぼ同時代の時計ではないかと思われます。「筋硝子」など人気上位機種のホーロー文字板+香箱機械+飾り振り子には及びませんが、同種の香箱機械が付くことからシリーズ中では中位機と言っていいでしょう。
八角掛け時計であれば10インチクラスに相当する約57cmの高さはありながらも、この種としてスリムで小型の部類に入るスリゲル筐体です。外観に目立つ損傷なくフルオリジナル状態と思われたものの、機械は動かず、鳴らずのジャンク入手でした。幸い筐体・機械とも致命傷はなく、比較的簡単に直すことができたのは
(^_^)vラッキー!でしたね。 |
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入手時外観
経年なりのくすみ、汚れ、小当たりなどありましたが、パッと見外観は想定の範囲でした。それより問題は・・・・
某オークションからの入手でしたが、受け取った時点で手に持つ梱包箱からガラガラと音がして・・・・オイオイ! 開けた状態が上写真の状態です。無梱包の筐体をダンボールで直接覆い、振り子も巻き鍵も裸のまま筐体内に放り込んだだけ。一応「ガラス注意」とか貼り紙はあったけど、いくらオークションでもこれで送るかなー? 仮にもプロの古物商からなのに・・・・^^;
当然振り子には輸送中に付いたと思われる当たり傷がいっぱい。幸い機械や筐体に致命傷がなかったのは救いでした。
裏面に良くある焼き印や書き込みはなく、下飾りがキーコキーコ浮いて動きます。でも他に外観上目立つ損傷はなさそう。 |
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入手時機械と渦ボン
パッと見機械に目立つ傷みは無さそうでしたが、なぜかボンが台座に絡みつき、どうしたらこうなるの・・・・不思議?
その変形したボンにハンマーが挟まり機械の取り出しに気を遣います。左上写真のように振り竿も左にひょろんと曲がって動きません。良く見るとアンクル竿もボンに挟まっていて、取り出し前からすでに下写真のように曲がっていました。そりゃこれじゃ動かないし鳴らないよね。振り竿下にロゴとその左右に振りすぎ防止のストッパーとなるピンが立っています。この機械でこの仕様は筆者としてははじめて見ました。
幸いボンの絡みを外すと曲がり癖もなく普通に戻り問題なし (^^)(^^) |
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アンクル竿修正
その曲がったアンクル竿を真っ直ぐ矯正します。
ハンマーやアンクルがボンに引っ掛かってることに気づかず機械を取り出そうとして、途中であきらめたはいいけど曲がりが残っちゃったってとこでしょうか?
振りベラには少し曲がり癖がありましたが、修正可能な範囲で問題ありません。 |
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機械
振り竿を外した機械はそのまま縦置きでカタカタ動き、どうやら致命傷は無さそうです。ってことで、清掃&注油をしただけで問題なし。左上写真のように過去の修理で香箱周りなどに覚えのケガキがいくつかありますが、オリジナルの刻印等は先のロゴだけです。 |
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数取車と時計ゼンマイ
ボン打ちの数取車はドイツ式の矩形歯車です。右奥にアームの黒い爪が見え、写真の位置で半打ち1回分の隙間と、乗り上げて各時間分のボンを打ちます。凸側の矩形幅がボン打ち1回分ずつ長くなって行くのが分かると思います。
右写真は時計側香箱ゼンマイです。どうやら一度切れたゼンマイを繋ぎ直した履歴があるようです。 |
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筐体補修
筐体下飾り壁側の隙間を接着補修しました。タイトボンドを筆に取り隙間に塗ってから合わせ、自転車のゴムチューブを巻いて固定します。2〜3時間も経てばOK! |
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文字板
オリジナルのセルエトです。
セルはセルロイド、エト(干支)は文字板の古い言い方です。一般にプラスチック製文字板全体を指してセルエトと呼ばれています。現在でこそ大量生産と安っぽさの代表とも言えるプラスチックですが、石油化学黎明期の当時は先端科学材料でした。字体は先のスリゲル4号の他、8号、13号等にも共通するもので、当時の精工舎でもこの種として代表的もののようです。多少のスレ、汚れ、薄れは仕方ないととして、まずまずの状態と言っていいでしょう。
裏側から見た右写真で分かるように単純なプラスチック板だけではなく、ブリキベースにゼンマイ穴のハトメと文字板枠により挟まれ固定されています。 |
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振り子
振り子はごく普通の木竿、真鍮振り子です。
ちょっと安っぽい感は否めませんが、オリジナル振り子と思われます。写真では目立ちませんがガラガラ揺すられた木竿の側面に当たり傷があり、傷消しペンで目立たなくしています。重錘の汚れも金属磨きで磨いてピッカピカ! |
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針
針もごく普通の当時物と思われます。長針の角穴が小さい以外、当時の6インチ時計と共用の針のようにも見えます。 |
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筐体清掃
くすみと変質した塗装カスのような汚れを水拭きして拭き上げ、家具用ワックスで仕上げます。トップ写真のように輝きも戻りすっかりきれい
(^^)(^^) |
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機械取付
上がった筐体に機械を取り付けます。台座に載せて下ネジで仮固定し、上部を左右の木ネジで固定。前後の傾きなど確認し下ネジを締め直し完了。 |
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ガラス
扉ガラスは周囲が面取りされた弱いゆらゆらガラスです。左右小窓のガラスは強いゆらゆらの平面ガラスです。交換された様子はなく共にオリジナルでしょう。 |
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試運転
1回のゼンマイ巻き上げで2週間動くことは確認しました。でも、時計側ゼンマイが接がれていることもあり、安全のためには1週間〜10日巻としての使用がいいでしょうね。それを前提に、まずは時計動作、ボン打ち動作共に問題ありません。振り子の振れ幅もこの種としては大きく元気いっぱい。
尚、レンズの収差により左写真では側板が大きく反って見えています。実際反りはありますが、写真で見るほど酷くはありません。 |
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新規追加 2010年12月 1日 |
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