NIPPONOPHONE/EUFON(ユーホン)1号卓上蓄音機 |
最終更新 2012年 2月 5日 |
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NIPPONOPHONE(ニッポノホン/日本蓄音機商会)/EUFON(ユーホン)1号卓上蓄音機は100年ほど前の明治末期、純国産としてラッパに替わるホーンを筐体内に内蔵した卓上蓄音機最初期の名機(民生用として国産1号機)。
当時の販売価格は30円。資料によって多少の差はあるが、およそ当時の一般庶民の月給程度に相当していたようだ。当時多くの外国製蓄音機がまだまだ高嶺の花だったのに対し、庶民にも手の届く価格で大ヒットを記録した。ひょっとして単一機種としては国内でもっとも売れた蓄音機かも?。
ちなみに、本項の「EUFON(ユーホン)」という機種名は、スペル、カナとも当時のチラシより参照した本名である。
現在にも通じる高密度筐体は小さな日本家屋に良く馴染み、機械やアーム、サウンドボックスなどの違いで同じ1号でも数種のバージョンがある。設計的には後年の蓄音機と比べ機械面などさすがに古さは隠せない。しかし、手に持った感覚は小さいながらけっこうずしりと重く、普及機とはいえ高級感がある。
前述のように大ベストセラー機なので探すのは容易だが、良い状態のものはそれほど多くない。古い蓄音機なのでそれなりに問題となるところも多く、特にターンテーブルが波のように上下動したりする回転軸のぐらつきや変形など多い。購入選定時には注意を要するので、状態の見極めには可能なら試聴した方がいいだろう。
ニッポノホンは後のイーグルであり、更に後年コロンビア(戦時中は日蓄工業)となる日本蓄音機界の名門中の名門。現在でもニッポノホンは日本コロンビア株式会社の商標として残っている。 |
主な仕様(自己調べ)
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筐 体 |
実測/縦(奥行き)29.5cm×幅35cm×高さ26cm 重量約7.7kg |
ターンテーブル |
10インチ(約25cm) |
機 械 |
2丁ゼンマイ |
サウンドボックス |
NIPPONOPHONE(雲母ダイヤフラム) |
ホーン |
木工(薄板製)ストレートホーン |
時 代 |
明治末期 |
その他 |
手動スタート手動ストップ 上蓋なし |
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入手時状態
パッと見、筐体はけっこうきれい。っと言うのも右の木製携帯ケースに入っていたからだが、それが専用箱かどうかは不明。筐体前面右の竪琴模様の引き戸を開けると木製ホーンが現れる。扉(ドア)ではなく引き戸というところがいかにも和風。筆者はニッポノホンの数機種以外に引き戸の蓄音機を知らない(他社製コピーのなんちゃってニッポノホンは多々あるが・・・・^^;)。また左側面には比較的状態良く残った特許シールが見える。
アームは白い粉が吹き全体にめっきの傷みが目立ち、サウンドボックスはオリジナルではなかった。ターンテーブルは錆び錆びで、正面から見て左に傾きパネル面と当たり気味。シートの状態も虫食い穴など多数でイマイチ。
多くの鉄針が付いてきたが錆び錆びでいずれも使用済み針だった。 |
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入手時操作パネル状態
ターンテーブルを外したパネル面。経年の埃がクッキリ。
手前のレバーはターンテーブルの回転スピード調節兼ストップレバーで、写真はフリー状態。左に振るとブレーキがかかる。
ニッポノホンのこのタイプは毎回このレバーを動かしてON−0FFし回転スピードを合わせなければならない。そのためどこが78回転なのか示す調整ネジが付いている。
また、ブレーキの構造上レバーをONとしただけでは動き出さないことがあり、スタート時のみターンテーブルを手でちょっと押してあげることも多い。 |
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特許シールとフロントグリル
お馴染み左側面にある特許告知のシール。「日本帝国専売特許」との縦書き文字が時代を感じさせる。転写したようなシールなので爪で引っ掻くと簡単に剥がれ傷みの目立つ物が多い。これだけ残ってればまずまずだろう。
右は竪琴を象った引き戸とその中の木製ホーン。引き戸はよく逆さに付いていたりつまみが紛失していることが多い。引き戸が逆さになってる物はレストア後の再組立の際上下を間違ったものだろうが、レストア状況が知れるので購入の際は判断材料となるかも。ホーンは3mm厚程度の薄板製で叩くとポコポコ音がする。とは言え小さなホーンなので作りはしっかり。 |
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筐体内部
薄板で単純な作りのホーンとは言えしっかりRが付けられており、限られたスペースで良くできている。ホーン横の筐体右側面に穴が見えるように、このホーンの上をゼンマイ巻き取りのクランク軸が延びる。小釘で打ちつけられた角にはテープ補強もされており、普及機とは言えこういう真面目な作りがうれしい。
このホーンはアームとの間でU字型の折り返しストレートホーンとなり、おそらくユーホンの名前の由来かと思われる。
左スペースには大ぶりの機械が入る。 |
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2丁ゼンマイ機械
2丁ゼンマイのなかなか立派な機械だが、やはり設計的には古さを感じさせる。
鋳物製の地板上下2枚を4本のポストで接続する構造で、ターンテーブル側がカシメ、画像で見える側がナット締めとなっている。後年の機械の多くは片側の地板とポストが一体化された鋳物製で問題ないが、この機械の構造ではどうしてもガタの出やすいことは否めない。ターンテーブル軸となるスピンドルも前述のようにガタの大きめの物が多く要注意。機械全体の部品点数が多いのも難点の一つだろう。 |
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機械取り付け
5mm厚の市販板ゴムを加工して劣化したゴムに替わりパネルとの間に使用。
もう少し軟らかめのゴムの方がいいのだが、なかなか固さやサイズのあったものが無い。形を変えた1mm厚ゴムを数枚ラミネートするとか、工夫すれば防振対策も上がるだろう。
右は劣化したゴム。固く潰れて単に硬質プラスチックと化し、大概のゴムはこうなっちゃってる。 |
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スピードアジャスター部
ニッポノホン機械の最大の特徴がこのスピードアジャスター部。
後年の機械ではスピード調節とストッパーは別々に設けられているのだが、この機械では一つのレバーで兼務している。スピード調節のブレーキの効きを強くすればそのままストッパーとしても働くだろうとのことだろう。
一般に蓄音機では高速で回るガバナーの回転を1個のブレーキパッドで抑えることによりスピード調節するが、この機械では左画像のように2個のブレーキを備えている。考えようによっては合理的な発想なのだが、毎回スピードを合わせなければならないのが難点。そのため解決策として右写真のように、レバーの動きを正しく78回転の位置で止めるよう調整ネジが付属している。
後年オートストッパーが発明されるなどしてこのストップ機構は不要となり、アジャスターは初めにスピード合わせした後はほとんど動かすこともなくなった。そのためアジャスターツマミはビクターのようにネジに変更された機種も多い。
尚、レバーは左画像の「の」の字型カムを回転させ、ブレーキユニットを動かしている。 |
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筐体底面
筐体底面には底蓋が付き、額縁に付くようなフックで取り外しできるようになっている。グリスアップなど機械メンテのためには便利。
このセットでは底蓋に「S7417」とのスタンプが押され、製造番号だとしたら比較的初期のセットかもしれない? |
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アームとサウンドボックス
くすんでいたアームとアームベースを錆取りワックスで磨いてだいぶ輝きが蘇る。
ユーホンはアームをアームベースから取り外せるようになっていて、アームはサウンドボックスやクランクと共にホーンの中へ紙箱に入れて収納できる。携帯時のことを配慮してだろうが、時代的に当時はまだポータブル蓄音機がなかったのだろうか?
尚、簡単に取り外せる分ガタもあり、嵌合部をグリスアップしないと再生中カタカタ音を立てることがある。
サウンドボックスはオリジナルではなかったので手持ちの「NIPPONOPHONE CONCERT
SOUND BOX」に交換。元々ラッパ型に付いていたものだが、当時の輸出用チラシではこちらがオリジナルとも思える。一般には羽を広げたイーグルマークの描かれた、もう少し大径のサウンドボックスの方がよく見かけるだろう。 |
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レストア完了した筐体
フラッシュのせいもありかなり赤っぽく見える筐体だが、肉眼での実色は下の写真の方が近い。幸い筐体にも機械にも大きな問題はなく満足できるレベルに仕上がった。(^_^)v |
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試聴
大きさからして決して大音量という訳にはいかないが、普通の部屋で聴くにはむしろちょうどいいくらいの音量と思われる。
このサウンドボックスでは音質がやや硬質に聴こえるが、開口径の小さい短めのホーンによる影響もあるかもしれない。悪く言えば低音も高音も出てないレンジの狭い中音のみの音とも言え、時代的には良い意味でSP盤初期の機械録音時代の蓄音機であることが実感できる。
そんな本機にあって1910年代という当時では、低音楽器の少ない邦楽再生が中心だったろうことも十分伺える。その意味で上写真のような電気録音のボーカル曲再生には、さすがにレンジ面でちょっと無理もあるように思えた。とは言え、邦楽全般と特に男声では声に芯や張りがあるように思え、独特というかこれも良い意味で個性的な音を聴くことができる。そんな音の傾向はサウンドボックスを先のイーグルマークに代えても基本的に変わらない。 |
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新規追加 2008年 7月 2日 |
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