HMV/MODEL 101ポータブル蓄音機
最終更新 2011年 4月 1日
 
HMV 101
 
HMVこと「HIS MASTER'S VOICE(英国グラモフォン社)」のポータブル機として初期に属する101です。
一般的には102の方が人気はあるのですが、ロングホーンとマイカ(雲母)ダイヤフラム(サウンドボックス)という筆者好みの組み合わせで、知る範囲では他社を含む全ポータブル機中この101が筆者のベストです。

英国HMV と 米国VICTOR は共に、蓄音機から聞こえる主人の声に聞き耳を立てるフォックステリアの商標で超有名です。どういう経緯か詳しくは知りませんが、元祖と本家みたいなものでしょうか? って、それじゃますます分からん!?・・・・^^; 実際多くの共通部品を使用し・・・・、って言うか、ほとんど意匠の違いくらいでは?と言えなくもありません。
ビクターはいち早く日本進出した米国ビクターの子会社(当時)日本ビクターが販売を受け持ち、やがて国内生産に移行していきます。以降、瞬く間に日本コロンビアと共に2大勢力を築き上げました。
対してHMVはどちらかというと、ちょっと高嶺の花的・・・・かな? 価格的にお高いと言うか一歩リードと言うか・・・・^^; いずれにしろどのセットからも醸し出すある種の気品は、伝統を重んじつつも産業革命に代表される先進的英国人気質を表すようです。
主な仕様(自己調べ)
筐 体 実測/縦(奥行き)42cm×幅29cm×高さ15cm  開口時高さ約50cm  重量約7kg
ターンテーブル 10インチ(約25cm)
機 械 1丁ゼンマイ
サウンドボックス HMV No.4
ホーン  U型板金ホーン
時 代 1920年代
その他 手動スタート&ストップ
 
 
入手時状態 入手時外観
入手時外観

パッと見の外観は・・・・まあ良いとは言えないな〜・・・・^^;
筐体化粧布はかなりほころびが目立ち細かな傷みも多数。四隅や稜線となる角にはそれぞれ剥がれ・ほころびがあり、底面の足はすべてゴムが紛失していました。取っ手は残ってるもののそれなりの傷みもあり、特に外観側の金属部品はいずれも錆が酷い。幸い内部は比較的良い状態でしたが、それでもブレーキ周りなど操作面はキズだらけ。とは言え一応動作品ではあり、機能的には目立った問題もなく一安心。
 
入手時内部
入手時内部

ターンテーブルはシートに多少の傷みはあるもののまずまず。ポータブル機初期型とあって、オート機構は付いていません。ターンテーブルの回転ON−OFFは右手前の手動ブレーキのみと言う完全マニュアル機です。左のレバーはスピード調節、右奥のハンドル置きのクランプは破損していました。そのハンドルはねじ込み式。
金属めっき部分は比較的きれいなものの、右写真のように埃まみれの操作面にはけっこう使用傷がいっぱい・・・・^^; ホーン開口部付近にはお馴染みの丸い銘板があります。
 
銘板
銘板

その銘板がこちら。
シリアルナンバー「8673」と101の中でもおそらく初期に属すると思われます。実際、マイナーチェンジによるいくつかのバージョンがあり、外観色や仕上げの他オート機構の有無、ハンドルの挿し口や収納方法が替わったりしています。セット中の主だった部材すべてにそれぞれ部品ナンバーやシリアルナンバーが刻印され、極めて真面目な作りが他社汎用機とは一線を画しています。
101、102共に当時のリファレンス機となったというのも十分うなずけるでしょう。
 
サウンドボックス
サウンドボックス

サウンドボックスはこの機種オリジナルのHMV/No.4。同種No.2の発展型と考えていいでしょうか?
このサウンドボックス、どうも落とされた履歴があるようでマイカダイヤフラムのピボット付近に白く小さなヒビ割れがありました。オイオイ!と思いながらも試聴して、幸い聴感上は問題ありませんでした。
 
筐体化粧布補修
筐体化粧布補修

バラす前にまずは外観補修とばかり、化粧布の剥がれやほころびを木工用接着剤で貼り合わせます。白い接着剤は乾けば透明となり目立ちません。目立つ引っ掻き傷部分にも塗り込んで、現状以上のほころびを防いで完了。
 
操作板と機械外観
操作板

毎回操作するブレーキレバー付近は使用傷がいっぱい。でも他は比較的きれい。ひっくり返すとけっこう白いカビが・・・・^^;
機械の留めネジは2本しかなく1個所紛失していました。
 
筐体内部とU字型板金ホーン
筐体内部とU字型板金ホーン

しっかり作られた板金ホーンはこれ以上ないくらい筐体いっぱいを使っています。左画像の底面に貼り付けられた紙には下記の機械図が描かれており、ホーン自身は白く厚いフェルトを使用し要所要所でしっかりダンプされていました。普段見ることのない部位でも手抜きせず、こうした真面目な作りがうれしいですね。
筐体内だけで1m近くある長尺ホーンと、これも音道の長いアームとの組み合わせでホーン全長はおよそ1.2mにも及んでいます。加えて大径マイカダイヤフラムのNo.4サウンドボックスとの組み合わせが、この機種最大の魅力と言っていいでしょう。
 
1丁ゼンマイ機械とラベル
1丁ゼンマイ機械とラベル

1丁ゼンマイ機械は大径幅広で、ガバナーは3点分銅。ポータブル型とは言え、筐体の大きさからすれば卓上型にも匹敵する大きな機械で力強く回ります。
右は前述の底板に貼り付けられていたラベル。機械の各部名称といったところ。
 
合板接着補修
合板接着補修

さすがにこの種の古合板に剥がれはつきもの。にかわ系木工用接着剤タイトボンドを水で薄め、剥がれた積層部に筆で塗り込んでクリップで固定しておきます。これで乾けばバッチシ!(^^)(^^)
 
アーム板取り付け
アーム板取り付け

接着の終わった化粧板を取り付け直し、磨いて錆止めしたアームも元通り取り付けます。
 
手動ブレーキ補修
手動ブレーキ補修

手動ブレーキはブレーキシューが磨り減りターンテーブルまでほとんど届かず、手で押してあげないと効きませんでした。そこで手持ちベルトの固い厚革を切って替わりに取り付けます。ミシンオイルを染み込ませて効き目はバッチリ!
 
レストア完了
レストア完了

化粧面にいつもの水拭き&ワックス掛けコースを施しすっかりきれい! 可動部も清掃&注油で軽く動き問題なし。筐体に元通り取り付け、最後にストロボスコープを使ってターンテーブル回転数を調節しレストア完了。
 
試聴
試聴

素晴らしい鳴りっぷりにびっくり!
音量はポータブルとして最大レベルどころか、一般の卓上型よりはるかに豊か。実際手持ち卓上型と比較しても、VV1−90やコロンビア115などリエントラントホーン内蔵機と遜色ないくらい。どうしてこんなに良く鳴るのかと、試しにサウンドボックスをもう一つの手持ちNo.4と交換。するとけっこうおとなしくなり(それでもまだ十分豊かですが)、どうやらこの鳴りっぷりのかなりの部分は付属サウンドボックスが関与していたようです。
聴感上の帯域も十分に広く、特にロングホーンから来るのか低域の再生能力が高く感じます。録音レベルの高い盤が多く意外に再生が難しいハワイアンなど掛けてもまったく問題なく、もちろんビビリ音が出ることもありません。これはその辺の卓上型では太刀打ち出来ないなーと、聴いてる本人が一番びっくり!
 
余談ですが・・・・
ELTの「Time goes by」のPVでこの蓄音機が登場します。ところが盤面向かって左側で垂直に立てたサウンドボックスがって・・・・^^; オイオイ!と思いつつ、他のPVや写真でもこの手の例はよく見かけます。きっと細工して動いてるように見せてるんだろうな!?
そうそうELPじゃありませんよ、ELT。ここを見るような年代の方には・・・エッ? ELP知らない!?・・・ じゃあELO・・・エッ?そう?
まあいいや、検索して! みんなトップかその付近に出るから、たぶん。
 
 
新規追加 2009年 2月 1日
 
 
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