ジョン・ルイスとMJQ  No.02  980401
 
MJQ(モダン・ジャズ・カルテット)の実質的リーダーと言われたジョン・ルイスが、私のジャズ経験の第一歩であったことは先に述べた。今やスタンダードともなった多くの曲の作者としても知られるルイスが、元々クラシック音楽にもかなり傾倒していたことはよく知られている。
最近は黒人芸術家としての演奏者や歌手に事欠くことはなくなったが、クラシック音楽界の作曲者となると、未だほとんど思いつく人のいない世界ではある。はたしてそんな思いがあったかどうかはわからないが、すでに映画などのショー音楽では勇名を馳せたルイスである。次は自身の作曲・演奏によるピアノ協奏曲など、私としては是非聴かせてもらいたいところなのだが。
MJQの演奏にはサロン音楽的趣が強い。そのままバロックや古典派の時代にタイムスリップしても、当時の王侯貴族から案外拍手で迎えられるかもしれない。録音でしか知らないMJQであるが、ロココ風の曲などやらせたらクラシック奏者も顔負けだろう。
オリジナル曲の多くはルイスやミルト・ジャクソンの作であり、彼らの趣味的要素がそのまま曲にも強く現れているのは誰もが指摘する通りである。
サロン音楽と言うと甘っちょろいBGMと思われそうだが、なかなかどうして、当時のサロンは作曲者や演奏者が認められようと、熾烈を極めた戦争の場でもあったのだ。
乱暴な言い方をすれば、クラシックの弦楽四重奏をジャズの世界でやったのがMJQである。
ジャズファンの方には多少無理を承知した上で、ベートーベンの弦楽四重奏曲を聴いてみることをお薦めしたい。もちろんアドリブやユーモアというようなジャズ特有の要素があるわけではないが、その演奏には少人数時に共通した緊張感を感じることだろう。
同時にクラシックファンの方にはMJQの「ジャンゴ」や「フォンテッサ」をまずお薦めしたい。いずれもMJQの代表盤であるだけでなく、ジャズ嫌いであったクラシックファンの筆者が最初に啓蒙を受け、見事にはまってしまった音楽である。
 
MJQ

「ジャンゴ」 1953〜55年録音(MONO) CD番号:VICJ−2026
「フォンテッサ」 1956年録音(MONO) CD番号:AMCY−1018
いずれもモノラル録音であるが、音の鮮度は比較的良好である。もっとも音の善し悪しよりも雰囲気を楽しみたい。
ベートーベン

「弦楽四重奏曲 第7番〜9番(ラズモフスキー第1番〜3番)」 ジュリアード弦楽四重奏団など
私の所有しているCDはいずれも古いので番号は省略する。現在では廉価盤になってると思われる。名曲だけに録音は多く、ジュリアードの他にスメタナ弦楽四重奏団などもお薦め。
クラシックの場合ラズモフスキーだ何だと、どうしても取っ付きにくい名前がくっついて来ることをご容赦願いたい。一般から敬遠される理由もこんなことが一因になっているのだろう。
 
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