カインド・オブ・ブルー  No.04  980801
 
さて、サックスを聴いたからには次なる楽器はトランペット。トランペットと言えばやはりマイルス・デイビス。マイルス・デイビスと言えば「カインド・オブ・ブルー(アルバム名)」なんだそうである。
何でも閉塞感とマンネリに陥りつつあったジャズに新しい波として、「モード手法」なる演奏様式を持ち込んだ記念碑的名盤で、「サキソフォン・コロッサス」と同じくジャズ史上10指に入るような録音なのだそうだ。
マイルス・デイビスだったらさすがに当時初心者の私でも、他に名前を聞いたことのある有名アルバムがあった。だが、共演者がキャノンボール・アダレイ、ポール・チェンバース、ジョン・コルトレーン、ビル・エバンスなどとなると、みんな名前くらいは聞いたことがある。なんだか難しそうだけどいいか、ってな感覚でCDを購入したものである。
さて、アルバム内容だが、やはり聴き始め当初はちょっと困惑したものであった。
MJQもロリンズも、初心者が聴くにはある意味でわかりやすい。かたやサロン風の洒落た音楽、かたやテナーサックスの朗々とした吹きまくり。おそらく誰が聴いてもいい意味で共通の感慨が得られるに違いない。
で、このアルバムはどうか?というと、すこぶる怪しい雰囲気が漂う。
気に入った人は最初から「なるほどー」と思うかもしれない。ただ気に入らなかった人は「やっぱりジャズってんはこうゆんだよな」で終わりそうな気もする。
私の場合は可もなく不可もなく。最初から難しそうだなあという思いが多少あったから驚くことはなかったが、かと言って手放しで納得ってわけでもなかった。「なにこれ?」って思うところと、「ほぉー、なかなかいいじゃん」ってところが半分半分。
もっとも、50%の興味といったら、考えようによってはかなりのハイアベレージとも言える。クラシックの曲やポップスのアルバムだって、半分は消化不良で聴き飛ばすところが多いもの。「ましてやジャズだからねえ」とは当時の素直な感想である。
具体的にあれこれ言うにはこのアルバムに関してまだまだ聴き込みも知識も足りないのだが、私の中でも名盤としての予感じみた思いは十分に感じ始めている。だからこそこの欄でも紹介することにしたのだ。
先人の評価に間違いはなかったと言っておこう。
ところで余談だが、これまで登場した過去3者の共演した面白いアルバムがある。
ソニー・ロリンズの「SONNY ROLLINS with the MODERN JAZZ QUARTET」というのがそれ。アルバム名の通りロリンズとMJQの共演はいいとして、その中の1曲だけ、なんとマイルス・デイビスがピアノを弾いているのだ。
マイルスの簡素だがなかなか効果的なピアノのもとロリンズが吹きまくるという録音である。これがなかなかどうして、マイルスもけっこうなピアノの腕を披露(おっかなびっくりって感じもするけど)しているのだ。
なんの因果でそうなったかは知らないが、曲そのものがマイルスの作曲でもあり、ちょっと洒落っけを出してみたのかも知れない。
 
マイルス・デイビス

「カインド・オブ・ブルー」 1959年録音
ステレオ最初期の録音。ジャケットの「FIDELITY」なんていうロゴは同時期のクラシックレコードにもよく見受けられるもの。但し実際の音の鮮度は時代相応レベル。
 
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