2000/12/20  11.生分解性プラスチックのお話(基礎編−その3)
最終更新 2006年4月20日 
 
プラスチック工業は、石油化学の発展に伴い市場から繰り出される様々なニーズに応え、次々と品種を開発・販売してきた。
特にグレード開発(注1参照)は製品&製品メーカー、そして市場から要求されるあらゆる機能に対応すべく、強度、耐熱性、難燃性、耐薬品性等々、これでもかと言うくらいの開発競争が繰り広げられてきた事実がある。
現在日本で手に入る銘柄・グレードをすべて上げれば軽く万単位の数字が上るだろう。
大手化学メーカー1社だけでもおそらく、数百〜数千種くらいはリストに上がるはずである。
それは一方でプラスチック応用の裾野を広げ、あらゆる分野に浸透する糧ともなってきた。
木材(紙含む)・石材・金属・ガラス・コンクリート等の代表的素材の中でも、短期間にこれほど多くの開発が行われ続けた素材としてプラスチックを凌駕する物はない。
しかし、その使用量が莫大となった反面、同時に廃棄時の分別&後処理に対しておよそ四半世紀前頃より声高に叫ばれ始めるのである。
同じ頃「石油ショック」に代表される、将来への不安をかき立てられる事件も起きる。
奇しくも生分解性プラスチックの登場がそれらとほぼ時を同じくしていたことに、単なる偶然性以上のことを感じないわけにはいかない。
目を転じれば、今、私たちの身の回りにあるプラスチック製品、これらすべてがやがて耐用年数が過ぎた後、廃棄の問題に直面する訳である。
現在、年間1500万トン以上ものプラスチックが製造されるのも驚きだが、さらに驚愕なのはおよそその半分の量がプラスチックゴミとして出されていることである。
しかもその多くは未だ埋め立てまたは焼却処分となっているのだ。
これは日本1国だけの話しである。
世界的に見たらいったいどれほどの量が・・・・^^;^^;
もっとも、旗色が悪くなってきたからと言って理想論をブチ上げ、短絡的に否定に走ることが賢明な選択と思いたくはない。
たとえばプラスチックにも次のようなリサイクルだって考えられるのである。
原油(石油)→材料→商品→回収→油化→材料→商品→回収→油化→以下繰り返し。
ここで100gのプラスチックから、ほぼ等量の油が再生産出来ることに注目したい。
問題は「商品→回収→油化」この間のシステム作りなのだが、楽観主義者の私はそう遠くない未来にコスト的にも無理なくこのシステムは確立されると思っている。
また、確立されなければならない。
いわゆる「家電リサイクル法(注2参照)」の施行などはその先駆けとなるものであろう。
需要(市場性が高いほど、問題が大きいほど)があればその需要に見合ったビジネスは必ず起こるものである。
ビジネスが起こればその分野で大きな技術的発展も期待出来るだろう。
車も飛行機も電機製品もコンピュータもみんなそうであった。
さて、では生分解性プラスチックの普及を支えるポリシーとは何であろうか?
石油を出発原料としていた従来プラも前述のリサイクルシステムが完成すれば、それへの依存性はかなり改善されることが期待できるだろう。
それでも生分解性プラスチックの必要性はあるのか?
もちろんある。
 
−−つづく−−
 
注1)
「グレード」とはプラスチックのある1銘柄について、様々な要求に応えるよう開発されてきた品種を呼ぶ時に使う。高強度グレード、高耐熱グレード、高流動グレード、低ガスグレードなどなど。
実際は高強度グレード一つを取っても様々な品種が存在し、百花総覧状態。たとえば筐体用代表的プラスチックとしてABSがあるが、「みてくれ」にうるさい日本市場では外観用として理不尽とさえ思える要求の元、全メーカー合わせたそのグレード数は少なくても軽く数千種は存在するのである。
注2)
家電リサイクル法とは「特定家庭用機器再商品化法」の俗称で2001年4月より施行されるものである。
消費者に負担を求めることから賛否両論色々あるのだが、これからの世の中消費者だって責任の一端を持ってくださいよ、ということだろう。
詳細は経済産業省の こちら サイトへどうぞ。
アラレちゃんが優しく説明してくれます。
 
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