2001/3/5  12.生分解性プラスチックのお話(基礎編−その4)
最終更新 2006年4月20日 
 
工業原材料から素材・製品・廃棄そして再利用までの過程で、「閉じたサイクル(注記参照)の実現」は、現代科学が抱える究極の目標の一つと言っていいだろう。
遙か未来はともかく、地球という一つの閉じた惑星(空間)に生活して行く以上、その目標はあらゆる素材・製品に共通したものと思われる。
その理念からは従来の石油化学工業(プラスチック工業)においても、「有限資源とされる石油からの脱却」、それも一案であることが導き出される。
すなわち、複数の原材料(資源)から同一素材(又は代替え可能な素材)を生み出す。
選択肢を広く求めることで一点集中による特定(国・企業)支配からの脱却を試み、その様々な弊害を取り除くと共により多彩な競争原理を導入させるのである。
競争原理による技術革新を後押しすることで、より効率的で環境負荷の少ない「閉じたサイクル実現」へ適した方策を見いだすのだ。
更に従来プロセスからの解放は、ともすれば環境破壊より経済発展が優先されてきた過去の歴史を見つめ直し、その教訓を次の世代に伝えることでもある。
人間は学習能力に長けた動物であると信じたい。
犯してきた過ちを繰り返さず未来への道標を示す。
新たな選択肢を見いだすことは、現在の環境問題解決への糸口となるかもしれないのだ。
科学技術発展のためにも目標は高いほどいいのである。
さて、私は生分解性プラスチックも、先のサイクル実現に向けた一選択肢であると考えている。
生分解性プラスチックと一言に言ってもその種類は多彩で、原材料に対する選択肢の広さは特筆すべき大きな特徴だからである。
万能ではないが、けっこうイケそうなのである。
まず入り口では、
1. 生分解性プラスチックの多くは、毎年再生産可能な穀物澱粉や芋澱粉(注記参照)を出発原料としている。
遺伝子操作による大量生産もこの利用法なら反対は少ないだろう。
ひょっとして途上国などでは農業振興や現地生産により外貨獲得に役立つかも?
2. もちろん石油を出発原料とする生分解性プラスチックもある。
3. 経済的かどうかはともかく、LNG(液化天然ガス)や石炭からも可能であろう。
4. 最近では生ゴミからも生分解性プラスチックを作り出せるし、その研究もなかなか盛んでかなり希望が持てる。
出口では、
1. 従来プラ同様、成形加工時に排出される不要物の再利用がその場で可能である。
2. 廃棄時に単に土に埋めるばかりで無く、コンポストなどの再利用が自治体・町内会・一企業など、比較的小規模な施設でも実現可能と思われる。
3. 燃焼カロリーが小さいため小規模な一般の焼却炉でも炉を傷めることが少なく、酸素消費量も少ない。
発生する二酸化炭素も広い意味で元々大気中にあったものと考えられる。
また熱利用の面でもその多くは大気中に逃げることから、少々カロリーが低くても利用面での効率には大差ないと思われる。(実利用は数%と聞いている)
但し、高温燃焼によりダイオキシンなどの発生を押さえる焼却炉には不向きかもしれない。
ちなみに一般プラの燃焼では、原油という形で地下に閉じこめられていた二酸化炭素を大気中に放つこととなるので、地球温暖化防止には逆行する行為となる。
更に前回述べた様々なグレード開発により多種多様な化学物質が含まれるため、燃焼ガスへの不安は相応の設備を要しても簡単には解消できないだろう。
将来的に、
1. 時限装置的な使用法が可能となるかもしれない。
すなわち保存時は(缶詰のように)窒素などの不活性ガス中に保管して、使用時に大気中や水中に曝すことにより狭い範囲の特定期間(2カ月後の2週間以内にというように)で分解させるのである。
2. 身体適合性の高い素材(乳酸系の手術糸など有名)でもあり、埋め込み型の医療用品などに期待が大きい。
3. 同一銘柄でも分解性能に大きく差を付けることを可能とする。
4. 生分解性プラスチックの部分使用により、製品中の特定部位のみを選択的に分解させたい用途。
などなど。 
 
では次回はもう少し具体的に。
 
−−つづく−−
 
閉じたサイクル
地球内を循環する様々な出来事を「閉じたサイクル」と表現した。いわゆる最近よく言われる循環型社会と同義と思って良い。地球で発生するすべての出来事は再びそのすべてが地球に降りかかる訳で、外へ出ることのない閉じた空間である。水の循環など代表例であるが、人の営みや行いもそのすべてがまた人に巡ってくる。その閉じられた地球という空間の中で安全な循環を目指すという意味である。
穀物澱粉・芋澱粉
「食糧危機が叫ばれてる時代になんだ!」との誤解を受けそうだが、ここで言う澱粉はあくまで家畜飼料用の余剰作物を使用することとなる。時々質問を受けるので注記しておく。
 
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