2001/4/1  13.生分解性プラスチックのお話(基礎編−その5)
最終更新 2006年4月20日 
 
石油から出来るというプラスチックの固定概念。
それを多少なりとも揺るがせようとしている生分解性プラスチック。
その生分解性プラスチックは材料・製造方法などから大きく3種に分けることができる。
「微生物産生系」「天然高分子系」「化学合成系」の3種である。
 
「微生物産生系」
微生物の中には代謝の結果として体内にプラスチックの一種(と言うより代表的種類の)ポリエステルを溜め込む奴がいる。
元々自身の保全やエネルギーにする目的で溜め込むものなのだが、そいつをちゃっかり利用しちゃえ、っていうのが微生物産生系生分解性プラスチックである。
余剰穀物澱粉などをそんな微生物の餌として与え、脂肪細胞のように丸々太ったところでポリエステルだけいただく。
どこかの高級食材で聞いたようなやり方だが、その食材でもそうであるように当初はあまり効率的とは言えず、価格も異常に高いという難点があった。
出来たプラスチックは成形がやたら難しく、あまり心地いいとは言えない臭いまで付いてくる。
が、生分解性能はすこぶるよろしい。
いやいやなかなか万能という訳にはいかないものだ。
現在、代表的銘柄であった「バイオポール」がワケありで入手困難な状況だが、近い将来遺伝子操作等の先端技術により一挙に大展開が期待出来るかもしれない。
 
「天然高分子系」
こちらは天然高分子である澱粉、キトサン、タンパク質などなど、そいつらを上手く利用しようぜ、って奴。
と言ってもプラスチックとして利用するには、ただその高分子を寄せ集めればいいじゃん、ってほど事は単純ではない。
色々工業的に改質したり他の材料と混ぜ合わせたりする。
つまり高分子そのものの分子量をいじったり、組成を変えてみたり、PVA(ポリビニルアルコール)などを加えたりと涙ぐましい努力がなされてきた。
まさに短所を補い長所を伸ばす、そんな作業の繰り返しである。
生分解性プラスチックの中でもこの仲間は比較的初期から研究されてきたのだが、どうしてどうしてなかなかハードルは高い。
天然高分子系ばかりじゃないが、新素材だからって弱点を許してくれるほど世の中甘くはない。
むしろ、新素材と言うなら新素材らしい有能部を列挙しろ、ってどこに行っても言われ続け・・・・
だからさー!、「生分解性だ!!」って言ってるじゃん。
それじゃダメなの?
今までのプラスチックにこんな能力あった?
愚痴になってしまった・・m(_ _)m
 
「化学合成系」
上の言葉だけで想像すると「石油を原料に合成した汎用プラの親戚」って感じだが、現実のニュアンスはちょっと異なる。
まあ「化学的な合成法を利用し工業的に作った」程度の意味合いとしておこう。
その意味で前述の2種も含め、工業的に作られるプラスチックは広い意味で、実はすべて化学合成系と言えなくはない。
3種の分け方ははっきりした固定的なものではなく、繰り返しになるが材料・製造方法などから分けたあくまで便宜的なものなのである。
この種の代表は乳酸系、セルロース系、PBS(ポリブチレンサクシネート)、PCL(ポリカプロラクトン)などなど。
「脂肪族ポリエステル」などと呼ばれる種類のものが多い。
原材料は乳酸系のように澱粉や生ゴミを乳酸発酵させて合成するもの、PBSやPCLのように石油から合成するものなど、こちらも様々。
もちろん性質や能力も個々に異なる。
それも単に異なるというより、生分解性という共通項以外まったく異質のものだ言っていい。
実にバラエティに富む。
これら個々の紹介は後に本編で順次行うこととしよう。
ともかく、もっとも有望な素材はここから出るんじゃないかな?って言うのは私の勝手な想像・・・なんだけどね・・・^^;
 
−−つづく−−
 
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