2001/12/15  生分解性プラスチックのお話U
 
17.微生物産生系生分解性プラスチック/その1
 
代表銘柄
  バイオポール/日本モンサント
  ビオファン/グンゼ
  バイオ(ビオ)グリーン/三菱ガス化学
  など
 
微生物産生系生分解性プラスチックとは、「ある種の微生物が自らの栄養源等として生体内に蓄積する(脂肪族)ポリエステルを取り出した物」である。平たく言えば、その種の微生物に余剰澱粉等を餌として与え、たんまり太ったところでいただいちゃえ、というもの。
⇒こちら お話T−1 & お話T−5 参照
たとえば、最初の生分解性プラとして有名なバイオポールはこの種の微生物(アルカリゲネスユートロファスなど)が作り出す「3−ヒドロキシ酪酸(HB)」と、「3−ヒドロキシ吉草酸(HV)」を共重合体(PHB/V)として材料化したものであった。各種グレードはこのHBとHVの配合比によって性格付けされたものである。
っがしかし、残念ながらこの種の話は筆者の専門では無い。化学的云々は詳しい方に話を譲りたい。
 
さてこの項では、代表例として「バイオポール」を例に、その性質や加工性(成形性)及び金型について話を進めてみよう。
 
バイオポールは白色またはベージュ色の不透明プラ(透明グレードもあったはずだが)で、あまり心地よいとは言えないちょっと独特な臭いがする(個々の製品ではそれほど臭わないが)。バイオポール製のプラ製品を一見した様子はポリエチレンのような感じで、一般グレードではやや柔らか目の半硬質系プラと言ったところである。
現在諸般の事情によりこのプラの入手は難しい状況だが、やがて復活するであろうことは想像に難くなく、また筆者の希望でもあり大いに期待したいところ。それは後に述べる成形性の難しさを差し引いても、消え去るには惜しい大きな長所を持っているからに他ならない。
そのバイオポール何よりの長所は、あらゆる生分解性プラの中でもトップに位置するであろう生分解性能にある。JISなど小難しい(厳密な?とも言う)試験法はともかく、より現実的なフィールドテストをした際の筆者の経験では数ある生分解性プラの中でも、バイオポールは常にトップの座を譲らなかった。一般の庭先の固い土中でも、市販の園芸用土でも、水中でも、常にもっとも優れた分解性を示したのである。微生物の専門家でもない筆者の想像ではあるが、おそらくこのプラの分解には様々な種類の、あるいはどこにでも普通にいる微生物が分解に関与している可能性が高いと思われる。このことはコンポストなどある程度管理された状況下でも同じで、他の生分解性プラとの比較試験には絶対的と言っていいほどの優位性を誇っていた。
バイオポールは生分解性プラとしてはもっとも歴史が古いだけに、かなり豊富なグレードを誇っていた。上述のようにHB/HVの配合比により物性に変化を付けることが可能となり、HB側が多いと強靱、HV側が多いと柔軟となる。他にフィラー強化グレードなども開発され、善し悪しはともかく当時の力の入れようが分かる。当初、価格があまりにも高かったため特殊な素材の範疇を出なかったが、国内でもいち早く採用(一部製品とは言え)に踏み切ったカミソリメーカーやシャンプーメーカーには敬意を表したい。
その他、意外な一面を一つ。バイオポールは生分解性プラの中では、けっこうクリープに強い部類ではないかと思われる。プラバネとして使用可能かどうかはともかく、あまり永久変形を起こしたくない使用分野や、ヒンジのような使い方には一考の余地があるかもしれない。もちろん、POMやPPなどと比較されてはm(_ _)mごめんなさい、なのだが。
最後に、バイオポールでは将来遺伝子操作など先端技術の応用により、大きなコストダウンとなる可能性が高いことを付け加えておこう。たとえば増殖能力の高い細菌に作らせたり、キノコ、タケノコ、ケナフなど成長の早い植物(菌)細胞を利用するのである。なにぶんバイオと言えば現代ハイテク花形の一つ。何があるか分からない。何が起こるか分からない。筆者の期待する理由はこんな所にもある。
 
さて次回は問題の成形性について。
 
つづく
 
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