19.微生物産生系生分解性プラスチック/その3 |
バイオポールについて3回目、今回は金型製作上の注意点をまとめてみた。 みなさんもご想像通り、話は前回の成形性における問題点を金型側からも対策してやろう、ということである。汎用プラでもエンプラでも同じように、生分解性プラでもその材料が変われば、当然、金型もそのプラの性質に合わせた構造としなければならない。 |
1.コマ構造 |
バイオポールの成形ではしっかり充填し、且つバリを完全に防ぐということは非常に困難である。通常成形金型ではいくつかのコマを組み合わせてキャビティを構成するが、バイオポールの金型ではコマの境界を出来る限り少なくしたい。特に成形圧力のかかる部位や外観面などでは、極力コマで割らない工夫も必要となる。 とは言え、分解し易いプラでもあるのでヤケには十分注意が必要であり、材料メーカーの言う「低温でゆっくり押し出して」というアナウンスは、おそらくこの辺の対策を含めてのことだろう。 |
2.エアーベント |
バイオポールは溶融時のガスが多いプラでもある。但し、前回または上述のバリの問題から、通常のエアーベントを取ることは良品を得るのに難しい場合が多い。このような時、むしろゲートカット等後処理をするのであれば、ダイキャスト型のように意図的に「タマリ」を設けた方が得策である。その場合製品形状にもよるが、流動方向が一定方向を向くようゲートを配置することが望ましい。尚、深穴などどうしてもエアーベントが必要な箇所は、深さ0.01mm以下でなるべく広く取り、温度や射出スピードを極力抑えるような成形条件に設定したい。 更に成形終了ごとに、可能ならば金型の分解掃除等メンテナンスを怠ってはならない。 |
3.ゲート |
ピンゲートはランナー取り出し時に(ランナー自身が)切れやすいなどトラブルを起こしやすく注意を要する。また型温が低いと切り口が針状に残りやすい傾向がある。更にピンゲートやサブマリンゲートではゲート通過時の発熱でプラが部分的に分解する可能性もあり、黒っぽい異物や筋のようになって外観に現れることがある。一般にはやはりサイドゲートやその変形であるオーバーラップゲート、ファンゲート、タブゲートなどが無難であろう。 |
4.スプルー&ランナー |
流動性が良く固化の遅いバイオポールでは、ランナー断面積を汎用プラより小さくすることが可能である。また、後述の温調・冷却次第ではスプルーとランナーとの接続部が切れやすく、こちらも要注意。あらかじめエッジ部にRを取るなど配慮したい。 更に可能ならば、成形機を延長ノズル仕様とし、スプルー長は出来る限り短くする。尚、完全固化後は特に脆いプラではないので、スプルーのテーパーは小さくても良い。 |
5.温調・冷却 |
生分解性プラの成形金型すべてに共通することではあるが、金型の温調・冷却方法とその配管方法は成形品品質はもちろん、特に経済性については命運を握ると思って良い。バイオポールは60℃付近で最も結晶化が高いと言われるが、筆者の経験ではそれもケース・バイ・ケースであるように思われた。暖めるにしろ冷やすにしろ、水穴配管はキャビティ各部へ合理的に配置することはもちろん、忘れてならないのがスプルーやランナーに対しての処理である。一般にホットランナーや特殊なプラでない限り、スプルーやランナー部への温調はあまり意識しないと思われる。しかし、それらは製品自身よりも肉厚であることが普通で、固化の遅い生分解性プラにとって、その対応の有無が成形サイクルに大きく影響するのである。 |
6.突き出し |
バイオポールは多少金型に密着したがる傾向があり、細いEピンなどでは製品に食い込みやすい。また、特に結晶化の浅い状態ではある程度伸びが生ずることもあり、突き出し部が白化、または凸凹になりやすい。薄肉部ではその傾向も顕著で外観上NGとなりやすく、そのような製品の取り出しではあらかじめエアーブローとの併用を考えておく必要がある。 |
7.アンダーカット |
バイオポールは特に割れやすいプラでは無い。PPやABSなどと同等のアンダーカットは可能と思われる。いわゆる「無理抜き」も可能(もちろん程度問題)だが、伸びることもあるのでしっかりニゲを設けること。 |
8.その他 |
a.金型材質は特に選ばない。 b.インサート成形への対応も一般的な範囲で可能と思われる。 c.成形収縮率は一応2〜3%を基本とするが、組立物等の場合は必ず試作型で確認すること。 |
−つづく− |
次回からは「天然高分子系生分解性プラスチック」です。 |
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