2002/6/15  生分解性プラスチックのお話U
 
24.天然高分子系生分解性プラスチック/セルロース系その2
 
セルロース系生分解性プラについて、具体的に成形性を中心にその注意点について話を進めてみよう。
セルロース系プラは生分解性プラの中でも最も成形加工性に優れる部類に属する。通常成形機を選ぶことなく汎用成形機で問題なく加工出来、他の生分解性プラに比して材料分解などの憂き目にあう恐れも少ない。もちろんこれも他と同じく、だから簡単に良品が出来るという意味ではないが、成形作業がし易いことは生分解性プラ中でも随一に違いない。
 
1.温度特性
成形温度域は種類によって異なる。一般にはセルグリーンPC−A(以下セルグリーン)で220℃〜250℃、ルナーレZT(以下ルナーレ)で170〜200℃程度とする。他の生分解性プラと比較し多少高めの温度でも分解まで至ることは少なく、特にセルグリーンでは200℃付近から300℃近くまでという広い温度域を持っている。いずれも前述の温度域設定を基本として、充填状況など確認しながら前後させれば問題となることは無いだろう。セルロース系プラは生分解性プラ中、最も熱履歴に強いプラスチックと言って差し支えない。
尚、セルロース系プラのナチュラル色は黄色みを帯びた透明だが、長時間の滞留によっては若干くすみや強度劣化を起こす場合もある。しかしあまり神経質になる程ではなく、汎用プラなどと同等の管理で通常問題となることは無いと思われる。
2.臭い
プラスチックの臭いに好き嫌いは色々あると思うが、セルロース系プラの臭いは他と比較して強く、製品となっても長期間残りやすい。特にルナーレの成形中はお酢の醸造元にでも居るのかと錯覚するほどで、成形品にも強い酢酸臭が残る。この種の臭いが苦手な方にはちょっと辛いものがあるかもしれない。反面、酢の物が好きな方など全然気にならない人もいると思うので、ここでは事実関係のみ述べておくこととする。
3.流動性
セルロース系プラの流動性については温度とナチュラルに比例する関係がある。特に成形温度域の広いセルグリーンにおいて200℃付近ではPCにも劣り、300℃近いとPSのそれに近いという感覚となる。ダイレクトゲートによる実成形からの経験では温度270〜280℃で、厚み0.6mm程の3号ポット(φ90)までは何とか成形可能であった(但し成形機もフルパワー状態だが)。
また、ルナーレはほぼABSなみと思って良い。
4.計量
セルグリーンは特に問題ない。
ルナーレは成分中に酢酸グリセリンを含むためか、まるでスクリューからスリップするように計量不能となる傾向が強い。時にはまったく不能となることも珍しくないだろう。このような場合、根本的にはホッパー下部に別途材料供給装置を設置しなければならず、成形機も圧縮率の低いスクリューが適していると思われる。しかし汎用成形機の利用を考えれば余計な投資は難しく、一般的には背圧を下げる、加熱筒中部〜後部温度を調整する、回転数を調整するなどの対策をしてみよう。経験的には加熱筒後部温度を低めに、回転数を遅めに設定した方が良いように思われたが、万全では無いのでケースバイケースとしておく。
5.固化と取り出し
セルロース系プラは生分解性プラ中では固化の早い方で、PP等汎用プラに近い感覚で成形可能である。但し、決して強靱というタイプのプラでは無く、曲げや圧縮の応力には決して強くない。したがって他の生分解性プラと同じく、冷却時間は十分取らなければならない。また、細いEピンなどでは突出スピードが速すぎると製品に食い込んだり、裂け目の入ることもある。特に部分的な応力など掛けられた製品は後々破壊に至る可能性が高いので注意しよう。
6.金型冷却
セルロース系プラ成形時の金型温度は一般に低めに設定することが多く、概ね20℃から40℃程度が適当と思われる。セルグリーンではもう少し高めでもOKである。
7.そり
セルロース系プラを板状の成形品で使用する場合、澱粉系のように大きくそりの発生することがある。特にゲート付近は顕著に現れることがあり、箱物など大型製品への使用には注意を要する。組み立て物などでは試作型等にて十分確認しておくことが望ましい。
8.その他
  a.パージは通常使用するPS、PE、PP等で支障ない。
  b.成形後は金型が錆びやすいので各部に防錆剤を十分塗布しておく。
  c.同様に成形機回りも錆びに注意しよう。
  d.火をつけると真っ黒いススを出して燃える。
 
次回は金型製作上の注意点について。
 
つづく
 
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