25.天然高分子系生分解性プラスチック/セルロース系その3 |
セルロース系生分解性プラについて、今回は金型製作上の注意点をまとめてみた。 とは言え、セルロース系は生分解性プラ中でももっとも汎用プラに近い感覚で、かなりの部分汎用プラ用として作った金型をそのまま流用出来ると思われる。 |
1.コマ割り構造 セルロース系プラは生分解性プラの中では比較的バリの出にくいグループである。通常は汎用プラなどで使用される一般的なコマ割り構造で特に問題ないだろう。 |
2.エアーベント 通常設けられるヤケを防止する程度のエアーベントで特に問題ない。 |
3.スプルー/ランナー/ゲート PPまたはABSなど、汎用プラに習ったランナー/ゲート等で特に問題はない。但し、他の生分解性プラと同じく、スプルーとランナーとの接続部は多少切れやすいので注意を要する。可能ならば成形機を延長ノズル仕様とし、スプルー長は出来る限り短くしたい。 |
4.温調・冷却 生分解性プラの成形金型すべてに共通することではあるが、金型の温調・冷却方法とその配管方法は成形品品質はもちろん、特に経済性については命運を握ると思って良い。暖めるにしろ冷やすにしろ、水穴配管はキャビティ各部へ合理的に配置することはもちろん、忘れてならないのがスプルーやランナーに対しての処理である。生分解性プラの中では固化の早いセルロース系プラではあるが、それでも汎用プラのような訳にはいかない。前述のようにスプルーとランナー接続部など、肉厚である上に型開き時に引っ張られる部位でもある。盲点ではあるがここへの対応の有無が、成形サイクルにもっとも大きく影響することも珍しくないのである。 |
5.突き出し セルロース系プラは決して強靱なタイプではない。曲げや圧縮に対して適度な弾力を持つ反面、その限界は高くなく癖が付きやすい。時には裂けるような破壊に至ったり、割れが生じることもあるかもしれない。そのため細いEピンは製品に食い込みやすく、突き出しバランスが悪いと金型からの取り出し時に白化または変形してしまうことがある。したがって突き出しを配置する位置や大きさには特別の配慮をしたい。箱物や板物などでは可能ならばエアーブローなど配置して、製品全体を無理なく取り出せるようにしてほしい。 |
6.アンダーカット 汎用プラで通常使用される多少のアンダーカットや無理抜き程度は、セルロース系プラでも可能である。但し、前述のように限界は決して高くないので、可能ならば試作型などで確認を願いたい。 |
7.金型材質 セルロース系プラでは成形後、金型の錆びやすい傾向がある。特に酸による腐食には注意が必要で、使用後の防錆剤などメンテはもちろん、可能なら製品部だけでもステンレス系の材質とするなど考慮したい。 |
−つづく− |
次回からは化学合成系生分解性プラスチックの話を始めてみたい。 |
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