000515  3.プラスチックのお話(その2)
 
前回に続き2回目。
プラスチックのジャンル分けは単純に性能や機能だけでは決められないところもある。それはプラスチックと一括りに言っても、その種類の多様さは他の材料と比べても突出しているからである。今回は予備知識として他の括り方で話してみよう。
まず手始めとして硬さで分けてみる。
広い意味で、いわゆるゴムも天然&合成を問わず高分子であり、プラスチックの仲間と見て差し支えないだろう。反面、たとえば曲げ強度ではアルミや鉄以上の強度を持つスーパーエンプラも登場している。まさに硬軟自在なのがプラスチックという材料の大きな特徴でもあり、その多様性はあらゆる工業材料を凌駕するものである。そしてそれほどの多様性(=多用途)と共に同時に軽く、工具やナイフで簡単に削れてしまう加工性をも合わせ持つのである。
もちろん多くの加工法の中でもその中心となるのは、熱をかけ溶かして加工する成形加工となる訳であるが、その熱も金属のように時に1000℃以上という程ではない。当然加工時のエネルギー効率はプラスチックの方が圧倒的に優れているはずであり、安全性も高いと言えるだろう。
 
そんなプラスチックの柔らかい方の代表は、
先のゴムの仲間となる。天然ゴムの他、ブチルゴム、シリコーンゴム、ネオプレンなどが有名。最近は熱可塑性エラストマーと言われる従来プラスチックとまったく同じ成形法で加工可能な、軟質系のプラスチックも存在している。
もっとも、一般に言う柔軟性プラスチックの代表としては、軟質塩ビとポリエチレンが上げられよう。身の回りにあり、手でクニャクニャ曲げられるプラスチックのほとんどはこのいずれかである。それは前回のビニール袋とポリ袋の例でもお分かりいただけよう。
中程度の硬さでは、
汎用プラのポリプロピレンやABS、エンプラのPBTやPPEがこの部類。おそらく一般に目にする家電製品や箱形のキャビネット類(業界ではよく筐体(きょうたい)と言う)の多くはこれらのプラスチックである。
硬いプラスチックの代表は、
汎用プラならスチロールやアクリル、エンプラならポリアセタールやナイロン、ポリカーボネートなどがこれに当たるだろう。
スチロールはたとえばCDケースなどの透明ケース類で多用されている。ちょっと割れやすいのが玉にキズ。溶剤にも弱い。汚れを拭き取る時は原則水拭き、ちょっと頑固ならエチルアルコールをしみ込ませたティッシュなどでサッと素早く。メチルでは???。ましてシンナーなど、付けたとたんに割れちゃったり曇っちゃったりしちゃいますよ。
アクリルは汎用プラの範疇であるにもかかわらず、プラスチック界最高位にランクする非常に優れた透明性と強度を合わせ持っている。その優れた化粧性や着色性から、テレビのスタジオセットや舞台の大道具としてアクリル装飾などという職種が存在する程である。また、水族館などで最近は水中を潜るトンネル歩道が多いが、あれはガラスではなくアクリルが主役と聞いている。ガラスでは大型の魚や小石などが衝突した時にキズやヒビの入る危険性があるが、アクリルなら問題ないということなのだろう。ついでに、厚みが増しても光の透過率が変わらないという得意技も持っている。
ポリアセタールやナイロンは私が専門とするスイッチやコネクタ類の機構部品、耐熱強度・耐久性等を必要とする電子部品等に広く使われている。ポリカーボネートは例の環境ホルモンで騒がれた食器や、プラスチック界最高位にランクする靱性と透明性を武器にプラスチックレンズとして有名。CDもポリカー(←業界では略してこう呼ぶことが多い)だが、こちらはエンプラとは言えあまり耐溶剤性は良くない。汚れを拭き取る時はスチロールと同じく溶剤類は厳禁。エチルアルコール等で手早く拭き取る(支障ない箇所で変色や白化などしないことを確認のこと)のが好ましい。
尚、アクリル(実際には↑のアクリルとは種類は違うが)やナイロンが繊維としてもお馴染みであることは説明するまでもないだろう。
非常に硬い部類、
この辺はスーパーエンプラの独壇場とも言えるジャンルである。
業界ではそれなりに多く出回り有名な材料としてPPSが代表格だろう。もっともこの種の樹脂は溶かした時の粘り気が大変少ないものが多い。普通のプラスチックの溶けた状態を水飴に例えれば、PPSなどはサラサラの水のようになってしまうのである。したがってそのままでは極めて成形不良を起こしやすく、実際の材料はガラス繊維を30〜60%程度混合して使用されるのが普通である。もちろん良品を得るには焼入れ処理をした精密金型を必要とし、一昔前なら成形屋泣かせの材料でもあった(今はそんなこと言ってられないが)。当然製品は極めて硬く、叩くとガラスそのままの音がする。
他に極めて耐溶剤性がよく、あらゆる薬品に抵抗力を持つものとしてフッ素樹脂などがある。但し、価格も高く特殊なものなのでこれらについては別の機会に紹介することにしよう。
 
−−つづく−−
 
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