仏 JAZ /めっき筐体目覚まし時計
最終更新 2010年11月 1日
 
トップ画像
概略寸法 高13cm×幅12.5cm×厚み6.5cm (突起部除く)
文字板 紙文字板/約φ10cm
仕 様 毎日巻き/間欠(INTERMITTENT)動作付きアラーム
時 代 1920〜30年代
 
フランス JAZ(ジャズ)のめっき筐体目覚まし時計です。既出目覚ましのようなお馴染み鳥のロゴが付く以前の、同社でも初期に属するオーソドックスで大きな目覚まし時計です。

JAZ の名は創業当時流行っていたJAZZ音楽に由来しています。フランス語表記のため「Z」は一つで、ちょうど100年前1910年創業の時計会社です。本国でも日本でもジャズと言えば目覚まし時計で名が知られ、キレンジャクという小鳥のロゴが大変有名です。
第二次大戦中、ドイツ軍占領下のフランスでは敵国アメリカ発祥のジャズは御法度。なんだかどこぞの国でもあったような敵性言語禁止などというのと同じような事情によるそうです。キレンジャクのフランス読みが「ジャズー」とかで、文字が使えないならロゴを作ってと、これも一種のレジスタンスだったのでしょう。

この時計は1940年代初期から使われはじめるキレンジャクロゴ登場以前の、ブランド名がそのまま記された初期の目覚まし時計です。当時の目覚まし時計には ANSONIA/Simplex、Kienzle/TAM TAM、WESTCLOX/BIG BEN など、大きく存在感ある丸形金属筐体目覚ましの一群があります。ひときわけたたましいリンの音も共通の特徴で、これで起きない奴はいないだろうと思うくらい。そんなところがある種ノスタルジックでもあり、へそ形同様目覚まし初期の人気時計群となっています。後の世に共通する、いかにも目覚ましです!、という形の原型の一つがここにあります。
 
 
入手時外観
入手時外観

入手時外観は・・・・毎度ながら・・・・^^;

錆び錆び、汚れ&小傷、凹みも少々・・・・、まさに歴史の生き証人!?
まっ茶の文字板は仕方ない・・・・オイオイ!機械が上下逆さまジャン! 当然裏蓋も逆さまで左下写真では天面に後ろ足が出ていて笑った(^^) 目立つところではその天面に付くはずの目覚ましストップボタンと、裏面の目安針ツマミが紛失。まっ茶の文字板は一部剥がれと、目安針(上下逆なので実は秒針)も外れて風防の中に転がっています。長短の針だけなぜか夜光付きになっていて、おそらくオリジナルとは違うでしょう。ロゴは秒針用の小文字板の中に「JAZ」とあります。
それでもゼンマイは生きていて、振れば単発的に動作音が聞こえます。まあ、何とかレストア可能な範囲だろうと睨みました。
 
略分解
部品外し

ツマミ類、ネジ&ナット類など緩めリンを兼ねる裏蓋、続いて内蓋を外し機械を取り出します。文字板だけでなくガラス風防もまっ茶にヤニ汚れ。少なくても20〜30年はおねんねしてたのかなって? 固着など無く普通にばらせただけ良かった?!
 
入手時機械&文字板
入手時機械&文字板

埃まみれ&潤滑不足が一目瞭然の機械ながら、パッと見致命傷は無さそうです。ジャズの機械では「Mod.D」をよく見かけますがこちらは「Mod.B」で、型名からも古手の機械であろうことが分かります。厚みのあるがっしりした地板による作りは、どことなくドイツ製を思わせる機械です。

文字板はブリキベースに厚紙貼りで、別の取付板に接着されて機械に付ける良く見る作りです。一見夜光付きに見えますが印刷のみで夜光は付きません。シミ汚れは油と日焼けが半々という感じですが、幸い脆くなってる様子はなく救われました。
 
入手時機械
入手時機械

綿埃・土埃と鉄部材の錆、まったくの油ぎれも良く分かります。そりゃーこれじゃ動かないよねー・・・・^^;
幸いメインゼンマイに加えヒゲゼンマイも細ピン類も大丈夫。これなら注油だけで動きそう(^^)(^^)
 
機械メンテ
機械メンテ

っで、かまわず556吹いたら案の定それだけで元気に動き出し、それではとしばらく様子を見て問題ないことを確認。
あらためてエアーで556を吹き飛ばし、洗浄と注油をし直したのが下写真です。きれいに蘇りました。
刻印類はモデル名の他、針側地板メインゼンマイ付近に「X」、ハンマーに「4・26」、裏側地板メインゼンマイ付近に「V」とあります。
 
文字板メンテ
文字板メンテ

文字板ベースと取付板はパリパリ音を発てて簡単に剥がれました。金属用接着剤ではなかったのか、丁寧とは言えない接着状態だったのが逆に幸い。一部切れたり剥がれたりしていた文字板表面を糊付けし修復します。保護用に透明のラッカーニスを吹き、仕上げにツヤ消し透明スプレーを吹いて出来上がり。
 
筐体メンテ
筐体メンテ

酷い汚れの筐体を金属磨きで磨きはじめると、幸いなことにめっきまでは侵されてないみたい。俄然モチベーションも上がりきれいに蘇りました。気持ちいい〜〜!
裏蓋も同様に汚れ落としを行います。こちらも時代からすれば十分満足いく範疇に仕上がりめでたしめでたし(^^)(^^)
 
試運転
試運転

それではと、機械と文字板を合わせ再度の動作確認。
・・・・っで、時計動作は問題ないけど・・・・リン間欠動作のトーションスプリングが紛失してる?・・・・みたい!
 
リン間欠動作
リン間欠動作

この時計のリン動作は連続打ちと間欠打ち(精工舎等の目覚ましでもお馴染みの INTERMITTENT =数回打または数打等とも表現されています)が設定できます。そのうち間欠動作は次のような動作をします。
  1.右上写真の長針軸の歯車で隣の小さな鋸歯状のカムが常時回っています。
  2.カムには軽く押し付けられるアームがあり、間欠動作ONの時、上下動を繰り返すようになります。
  3.この上下動が支点を介して左右運動へ変わり、右写真「くの字」のアングル部分が矢印のように左右に動きます。
  4.この時ハンマーから後ろに延びるアームが右中写真のようなフリーで動作、乗り上げて停止となります。
以上の動作を天面の停止ボタンが押されるかゼンマイの駆動力が無くなるまで、鳴り15秒、停止30秒のおよそ45秒間隔で繰り返すこととなります。単純だけど良くできた機構ですね。

紛失していたトーションスプリングは上述のカムに軽くアームを押し付けるための物で、左写真のように細ピアノ線を加工して作りました。外れないよう取り付けてOK!
 
組み立てと天ボタン
組み立てと天ボタン

針を付け、洗浄した風防や筐体枠と合わせ天ボタンを・・・・なかったんだっけ・・・・^^; ^^;

紛失していたリンストップ用の天ボタンセットは機械と筐体枠を固定する天ネジともなっています。手持ちで探してみるとちょうど精工舎コロナのボタンセットがネジ径も合ってピッタリ。早速挿してみましたが時計が大きい分、ボタンの長さが10mmほど足りません。後で取り外しも出来ないと困るしってことで、小釘の頭を切り自転車チューブの虫ゴムで繋ぎます。試してみて曲がることも抜けることもなくバッチリ! トップ画像を見ても外観上の不自然さは感じられないと思います。
 
リン設定
リン設定

ってことで、あらためて組み上げて完成。

天面裏側からはリン鳴り設定のレバーが出ています。上写真の設定ではレバーが間欠動作のアームを矢印部で押すこととなり、カムとの嵌合が外れ時間が来るとリンが鳴りっぱなしになります。

紛失していた後ろ足の留めネジも手持ちのネジを追加してOK! 機械の付く内蓋は筐体枠へ圧入され、留めネジは先の天ボタンとこのネジの上下2本留めです。
 
大きさ比較
大きさ比較

恒例?大きさ比べ!?

中央が本機、左が同種時計の一般的大きさと言える中型機で、秒針とリンの間欠動作は付きません。右はやや小さめの既出機です。文字板径だけなら左から8.5/10/7.5cmですが、手に取ると見た目以上に大きさも異なって感じます。時代を経て本機と既出機の字体が同じなのも興味深いところ。
 
新規追加 2010年10月20日
 
HOME       BACK