エムズイ商会/5インチスリゲル座敷時計
最終更新 2011年11月18日
 
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概略寸法 全高54cm×幅27cm×厚み15cm
文字板 5インチ/オリジナル紙文字板
仕 様 8日巻/渦ボン打ち
時 代 昭和初期頃
 
エムズイ商会の5インチスリゲル座敷時計です。クドすぎず上品で控え目な範囲の装飾が好ましく筆者好みの時計です。

けっこう良く見る○にZのロゴでお馴染み?エムズイ商会時計ですが、筆者手持ちの中でも草間時計のように現物を見かける割りに会社情報が少ない時計会社の一つです。エムズイは確か MZ の日本語読みを表記したもので、創業者のイニシャルだったと思います。しかし手持ち資料にはなく、アップ前にググッてもなんとヒットは一桁台。この名での会社情報はまったくありません。今となっては筆者自身どこでそれを知ったのかも分からなくなっちゃいました・・・・^^;
背板のラベルに「横浜」とあるように会社自身(本社?)は横浜だったようですが、時計製造は名古屋で行い彼の地に共通する部品を使用しています。おそらく一貫生産工場ではなく、各社から部品調達して製造するいわゆる組立会社の一つであったと思われます。

八角尾長や丸尾長など汎用形で良く見るエムズイ商会の掛け時計ですが、この時計はそれらの中で珍しく高級側に振った同社の中ではやや異質な感じを受けます。木組みに補強を施したしっかりした板厚の重い筐体と、ケバくならないほどよく上品な装飾が高級感を演出しています。
 
 
入手時外観
入手時外観

経年による多少のくすみ汚れはありますが全体にまだまだ美しい筐体です。文字板12時上と6時下に収縮による縦一のヒビ割れがあるものの、他に目立つ当たりや欠損はなく概ね良好です。
裏面にはこのメーカーお馴染みの大きなラベルが貼られています。ロゴに続いて「横浜 エムズイ掛時計」とありますが、時計製造自身は中京産です。そのことは写真では見えませんが天面に「PASSED」シールがあり、それは名古屋地区で大正末から昭和初期に貼られたものです。
 
装飾彫り
装飾彫り

各部の装飾彫りです。
中でも特徴的なのは菊のような花火のような装飾ガラスと、更にその外側に竪琴と思われる透かし彫りが付くサイドビューです。通常側面ガラスとしては透明ガラスや布張りが普通ですが、このような二重の装飾は珍しいのではないでしょうか? 中を見るためでも(ボンの)音を響かせるためでもなく、あくまで装飾としての窓のようです。
筐体上下の飾り彫りは決して手の込んだものではありません。しかし、シンプルであるが故の飽きの来ない上品さを感じさせ筆者好みでした。
 
文字板
文字板

文字板はブリキベース板に厚紙の光沢印刷を施したものです。
12時下にお馴染み○にZのロゴがあり、24時間シールの剥がし跡から戦前の時計であることが分かります。文字板裏にも筐体にも修理歴はどこにもありません。
 
入手時機械
入手時機械

筐体内寸は約35×20cmとけっこうこぢんまりして、機械2台分ほどの高さしかありません。機械は無印のアンソニアタイプできれいな状態ながら、毎度ご多分に漏れずまったく油っ気無い状態です。それでも振り竿振ってとりあえずの動作はするようで致命傷はなさそう。もちろん機械と筐体のネジ穴6個所共1:1の嵌合でオリジナルに違いないでしょう。
 
メンテ後機械
メンテ後機械

いつもの洗浄&注油メンテ後の機械です。
前述のようにアンソニアタイプ地板に無名の機械で目立つ問題はありません。ナットを緩めた跡もないオリジナル状態のままと思われ、軸受けもきれいであまり使用された様子がありません。既出明治時計らと同様天面から振り竿をぶら下げ、小さい筐体内寸の中で目一杯振り長を伸ばした機械です。
 
メンテ後機械2
機械裏面と雁木車

地板右に潰れたような跡がありますが機械裏面にも目立つ問題はありません。
天面付近の内蔵形雁木車とアンクルもこの種の機械ではお馴染みレイアウト。
 
振り子メンテ
振り子

一部腐食していた重錘を磨き込み振り子のメンテを行いました。

あまり薦められた方法ではありませんが・・・・っと前置きした上で、こちらご参照下さい。
 
ゆらゆらガラス
ゆらゆらガラス

写真のように扉に付く前面ガラスは共にオリジナルの厚板面取りゆらゆらガラスです。振り子室ガラスによくあるカットは入らずシンプルそのもの。大きさからしてもその方が好ましいでしょう。
 
試運転
試運転

元通り組み直して試運転を行いました。
まずは問題なく1週間以上動き、その間の誤差も数分内には収まり問題ありません。ボンは太い三重渦巻きで低くめの良く響く音です。やはり明治時計に酷似し、同じ製造所からの仕入れかも知れません。
 
新規追加 2011年 9月25日
 
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