三工舎/6インチ玉杢小型掛け時計
新規追加 2011年 5月11日
 
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概略寸法 全高33cm×幅24cm×厚み10cm
文字板 6インチ/オリジナル・ペイント文字板
仕 様 8日巻/渦ボン打ち
時 代 昭和初期頃
 
マニアには三面時計(三方時計)があまりに有名な三工舎の玉杢仕上げが美しい小型掛け時計です。

大正5年、大橋美刀之助を代表として名古屋に産声を上げる三工舎は、いわゆるボンボン時計の他三面時計に代表される変わり時計でも有名です。やがて昭和7年大橋が独立し、後を出資者であった三浦虎子太郎が引き継ぎます。戦後昭和27年に売却されるまで40年足らずの操業期間ですが、これでも栄枯盛衰の激しかった名古屋時計産業界では長い方でしょう。

三工舎は広くOEM生産をしていたようで、筆者手持ちの中でも三工舎のSKロゴ付き機械を内蔵した別ブランド時計が3〜4種類あります。この時計もその一つと思われ、欅の玉杢仕上げの扉が美しく、その左右と下には虎斑杢もあしらっています。小型ながら大変美しく、存在感ある時計ではないでしょうか?
既出明治時計のようなシンプルなデザインはアールデコの影響を伺わせ、小さな直方体筐体を目一杯使った少し変わった機械が入ります。ズシッと重い手応えと仕上げの美しさは高級感もたっぷり。文字板の見慣れないロゴからどこかのOEMだったのかと思われます。
 
 
入手時外観
入手時外観

写真では案外きれいに見えますが、外観全体はくすみと汚れ、仕上げ塗装の細かなヒビ割れがけっこう目立ちます。
文字板側は凸面ガラス、振り子室側は面取りガラスで高級感を演出。裏面にはチョーク書きで店名やらシールやら。このうち時代の証となるものでは下段真ん中の「PASSED」シール。このシールは先の明治時計とも同時代である証拠であり、名古屋地区で大正末から昭和初期に使用されたものです。筐体内部はそれなりの埃と錆びた太めのボンなど。
現状動きませんが、とりあえず筐体周りに致命傷と言える異常は無さそうです。
 
蝶番と書き込み
蝶番と書き込み

この時計、蝶番が2つとも思いっきり錆び付いてるようで、心配になるくらい扉の開閉が重い・・・・^^; おかげで木ネジも浮き隙間も出来、扉がちゃんと締まりません。
また内外に書き込みの多い時計で、修理・調整を重ねながら大事に使用されてきた様子が伺えます。目立つものでは写真下段の2つがあり、年代確認できるものでは「昭和拾年・・・」と言うのが一番古いようです。
 
入手時機械
入手時機械

毎度まったく油っ気無い機械です。
両ゼンマイは巻き締めてあり、手で振れば動作はしますが振り子を掛けた状態では10秒程度で止まっちゃいました。
幅広筐体のため左右の余裕はあるものの上下はほぼ目一杯。渦ボンなんてほとんど底面と接触しそう。ボン台もボンも明治時計とそっくりで、ひょっとして同じ製造元かも? 振り子を掛けた先端の隙間も底面と1mmあるかどうか。まさにギリギリの作りです。
地板左下にはお馴染みSKが絡み合って艶っぽい?三工舎のロゴがあります。同社オリジナル掛け時計の多くには名を記した白シールがピン留めされてるのが普通で、それが無い所もOEM生産の時計であることを伺わせています。
 
ダンパー
ダンパー

この機械最大の特徴は写真のダンパーです。
ボン打ち動作の時、普通は羽根を回すエアーダンパーが付いていますが、この機械ではフェルトを付けた遠心(ブレーキ)ダンパーを使用しています。三工舎の面目躍如と言ったところでしょうか?
羽根の方がずっと安くできるのになんで?って思いますが・・・・金を懸けてもかまわない、それはつまり高級機だから・・・・ってこと?
 
メンテ後機械
メンテ後機械

それではといつもの洗浄&注油メンテを行い、機械に目立つ問題はありません。
ナットの緩め跡から何度も分解補修されていることが分かります。この機械も明治時計同様、小さい筐体の中で目一杯振り長を伸ばした機械です。
 
機械裏面
機械裏面

機械裏面にも目立つ問題なく、不調原因もやはり単純な潤滑不足だったと思っていいでしょう。
 
筐体メンテ
筐体メンテ

とにかく動きの重かった蝶番。外してミシンオイルを注油し、ヤットコで挟んで何度も何度もたぶん数百回は曲げ伸ばしして・・・・^^; それでもまだまだ固さは残りましたが付け直してみるとちょうど頃合いの抵抗で、重い扉が不用意に動くこともなく返って幸い?!
 
筐体メンテ2
筐体メンテ2

くすんで汚れた外観面は汚れ落とのためレンジ用の強力洗剤で拭き上げた後、水拭きして洗剤成分をしっかり落とします。更に家具用ワックスを掛け、乾拭きする毎に輝きも増しきれいに上がりました。
内面もきれいに埃取り&乾拭きして文句なし。
 
文字板と針
文字板と針

真鍮母材にめっき+ペイントのオリジナル文字板です。多少の荒れはありますが状態はまずまずでしょう。枠との取り付けもオリジナル半田のままであることが良く分かります。
12時下に「8DAYS」、6時上に拡大写真のロゴがあります。くさかんむりらしい漢字であることは間違いないと思うけど、その種に弱い筆者には読めません。手書き入力で検索して、それらしいのは「花」か「在」くらい。どなたかお分かりになりましたら教えて下さい。「SPECIAL」ってくらいだから、やっぱり高級機なんでしょう!?
針は掛け時計の他、大型置き時計でも良く見るタイプです。こちらもSPECIAL仕様にしてほしかったなー・・・・^^;
 
振り子
振り子

表面は過去の磨き跡らしき黒線が同心円状にくっきり浮かんで汚れてるみたい。経年の雰囲気と言うよりちょっと、なんか汚らしい・・・・^^;
そこで金属磨きで拭き上げピッカピカ! やっぱりこうでなくちゃね〜
 
組み立て&試運転
組み立て&試運転

元通り組み直して試運転を行いました。
まずは問題なく9日くらい動き、1週間の誤差も2〜3分内には収まるようです。ボンは低くめの良く響く音で、これも明治時計に酷似。上述のようにやはり同じ製造元くさい。元々素性は悪くなかったし、いい時計に仕上がった・・・・っと自己満足!
 
玉杢(たまもく)

杢とは材料木の木目や節など美しい部分を特に外観材として磨き込んで使用したものです。大変高価な花梨の瘤杢や欅の泡杢など筆頭に多くの種類があり、それぞれの特徴も重複する部分が多く分類としてその境界は必ずしも明確ではありません。玉杢はその名の通り円形の木目を含むもので、画像ではちょっと分かりづらいのですが本機にはその特徴があっちこっちにあります。この辺は言ったもん勝ちみたいなところがあり、専門家でも同じ杢に意見が分かれることがたびたびあるようです。
 
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