メーカー不明/12インチ木製箱形筐体掛け時計
最終更新 2009年 9月15日
 
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概略寸法 全高61cm×幅39cm×厚み13cm
文字板 12インチ/ペイント文字板
仕 様 8日巻/渦ボン打ち
時 代 不明ですが昭和初期頃(戦前)と思われます
 
メーカー不明、時代不明の大きな弁当箱のような木製箱形筐体掛け時計です。

およそ60×40cmという大きな四角い木製筐体にアンソニアタイプの地板を持つ機械が入ります。上角に唐草模様のような飾りと下角にカエデの葉のような飾りが付きます。けっこう立派な機械も付いているのですがなにぶん筐体が大きくて、扉を開けた中身ががらんとした感じに見えてどこか笑えます。オリジナルペイント文字板に「H」と「T」がデザインされたトレードマーク(ロゴ)があり、一見よく見かけるようですが筆者はこの時計以外では1度しか見たことがありません。

どなたかメーカーにお詳しい方がいらっしゃいましたら教えていただけますとうれしく思います。
 
 
入手時外観
入手時外観

大きな12インチ文字板に弁当箱のような筐体は間近に見ると・・・・デカッ!

多少の当たり傷や経年のスレには目をつむるとして、外観は概ね良好です。上部角に唐草模様のような上飾りが付き、下部には小さなカエデの葉なのかカエルの足なのか、そんな飾りが付きます。その下飾りは左右共剥がれていて、部品として残っていたのは1つだけでした。突板角の剥がれなど多少の傷みもありますが、補色すれば遠目には目立たなくなるでしょう。尚、画像にはありませんが裏面に書き込みはありません。

大きな文字板ガラスは中央が平らなドーム状曲面ガラスで、割れちゃったら簡単には替わりが見つかりそうもありません。下側振り子窓の両側にはエンゼルフィッシュのような透かし彫りが向き合い、縦に5本の切り子溝の入ったガラスが入っています。

振り子はオリジナルでしょうが巻き鍵は他社製のようです。っと言うのも、この巻き鍵では差し込み部分が短すぎて、ゼンマイを巻こうとすると羽部分が文字板に当たってしまいます。
 
文字板と筐体内部
文字板と筐体内部

大きな筐体内部はガランとした空間でまさに弁当箱です。

後出の写真など見ても分かると思いますが機械は決して小さくありません。でも筐体に収まると大きな空間にポツンと見えて何だか笑わせます。ボンはやや太めの渦ボンですがそれほど長さがないためか、音はやや高音寄りという感じです。

大きな12インチオリジナル文字板はブリキにペイントで、薄いベニヤのベース板に小木ネジ8本で留められています。ロゴは右下のようにHTの組み合わせデザインですが、前述のように一見よく見かけるようで筆者はこの時計以外では1度見たことがあるだけです。
 
修理歴
修理歴

薄い飾り板に取り付けられた文字板裏には2件の修理歴がありました。

ご覧の鉛筆書き修理歴2件と、筐体内に時計店ラベルが貼ってあります。時計店ラベルの日付と丸で囲まれた修理歴が一致するようですね。どちらにも「B」と添えて書いてありますが意味は分かりません。

文字板は3〜4mm厚程度の薄いベニヤ合板に留められ、後年の宮形で良く見る仕様ですがこの時計では大きいだけにペラペラで何とも安っぽくて・・・・^^;
 
機械
機械

アンソニアタイプの地板に雁木車が天面の内側に付いた機械です。既出のハートHのように縦長の大型時計に多いレイアウトの機械ですね。

入手時、ゼンマイが左右共巻けないというジャンク機械でした。しかし、調べてみるとそれは目一杯巻いた状態で動かないということが分かります。入手時写真(上)のように比較的きれいではありますが潤滑不足は歴然ですよね。

そこで下写真のように取り外してからエアー吹き、556吹き、エアー吹きコースの後一昼夜寝かせて馴染ませます。その後あらためて各軸受けなど点検&注油してメンテ終了。機械自身の状態は良好で特に手を入れるところはありませんでした。動かなかったのも単純に潤滑だけの問題だったようです。

ちなみに地板に刻印などなく、やはりメーカーを示すものはありません。
 
筐体補強
筐体補強

補強の横板を1本追加しました。

大きな文字板のベース板が薄くてペラペラなのは前述の通りです。加えてパッと見分かりませんが筐体にもわずかながら内反りがありました。そのため文字板ベース板を嵌め込むと幅がわずかに足りずポコンと中央が飛び出たり、逆に凹んだりポコポコ揺れてしまいなんとも安っぽい感じが否めません。

そこでオリジナルとは違ってしまいますがそのベース板を支えるように横木を追加補強しました。これで筐体の反りを補正しベース板も揺れることなく板上に載ってしっかり安定します。時にはオリジナルより機能優先の小変更もいいでしょう。

・・・・って言うか、なぜ初めから付けなかったのでしょう? こんな大きな筐体なら当然あるべき横板だと思うのですが? 正直あまり高級機という訳じゃないんでしょうね。有名メーカーでもなかった証かな?
 
試運転
試運転

組み直して上がった筐体を壁に掛け試運転を行います。

上写真のように箱形の筐体に比べ全面開きの扉はけっこう板厚でソリッドに近く、重さはその扉側の方が重いくらい。そのため大きく開くとその重さで筐体全体がくるんと右に傾いちゃいます。丸時計や一部の掛け時計のように下部に固定の金具があればいいのですが、残念ながら元々付いていませんでした。

上写真ではガラスに文字板を映り込ませましたが、文字板上の明るい反射や左右二重に映る文字から天面が平らな曲面ガラスであることが良く分かりますよね。

尚、メンテした機械動作に問題はありませんでした。
 
下飾り製作
下飾り製作

紛失していた左下の下飾りを自作します。

同じ厚みの板に下書きをし、彫刻刀の丸刃で上面の彫りを入れます。それを万力に挟んでノコギリで荒取りのため切り出し、ヤスリで仕上げて完了。問題は色合いですが、こればかりはなかなか上手く似せられません・・・・^^; まあ、後で塗り重ねることも出来るでしょうからほどほどのところで妥協して・・・・^^;
 
下飾り貼り
下飾り貼り

新しい下飾りを扉の左下に貼り付けます。

貼り付け部分に残っている接着剤をカッターなどで削り取り下地調整。タイトボンドを垂らして貼り付け、重石にダンベルを載せて2〜3時間おけばOKです。右下は元々残っていたものを貼り付けています。

最後に剥がれた突板部分や当たり傷を傷消しペンで補色補修し、レストア完了したのがトップ画像です。
 
 
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