スポーツ・カー   980315  No.6

記者 : 「天野さんはスポーツ・カーが好きですよねえ。以前はRX−7だったし、今もロードスターでスポーツ・カーに乗ってらっしゃる。どんなところを見て選んでるのかお聞きしたいですね。」

天野 : 「スポーツ・カーねえ」

記者 : 「バイクだってカワサキの1100だし、北海道にはしょっちゅう出掛けてるようだし、はたから見れば相当な遊び人ですよ。」

天野 : 「ずいぶん言うじゃーね。」

記者 : 「そりゃ影響受けたんですよ。」

天野 : 「まあ、いずれポルシェかフェラーリか、とはいつも思ってるけど・・・・?スポーツ・カーねえ。やっぱり車体バランスということになるかなあ。」

記者 : 「バランスですかあ?エンジンパワーとかサスペンションじゃなくて?」

天野 : 「そう、「走る・曲がる・止まる」といったもっとも基本的な性能を考えるとバランスがすべてだと断言していい。」

記者 : 「断言しちゃいますか?」

天野 : 「断言する。」

記者 : 「どうして?」

天野 : 「結局さっき言った「走る・曲がる・止まる」っていうのが車に必要な最低限の能力であり、同時に最大の要素でもあるわけだろ。この三点のいずれが欠けても車として成り立たない。それを数ある車種の中でもっとも高度にバランスさせた、一種のおもちゃみたいなものがスポーツ・カーじゃねえか?。」

記者 : 「なるほど。まわりくどいけどわかるような気もします。」

天野 : 「まわりくどいは余分。
とにかくそのスポーツ・カーの究極の姿がF1であり、ラリー・カーであると思うわけ。もちろん市販車と1台億単位の車を一緒にするには無理があるけど、譲れない基本線というのはたぶん同じだよな。
以前F1のセナが当時もっともパワーのあったウイリアムス・ルノーのシートを手にして、誰もがその年のチャンピオンは決まりだなと思った時、パワー的にははるかに非力なベネトン・フォードのシューマッハに追いかけ回されるということがあっただろう。」

記者 : 「ありましたねえ。その年結局セナは事故死しちゃったんですよねえ。」

天野 : 「その後の、そして今のシューマッハを見れば当時から彼が超一流のドライバーであったことはあきらかだよな。セナと争っていたのも大いに納得いくところだけど、こと車に関して言えばだいぶ差があったらしい。ベネトンの非力とはいえ、「シューマッハ・スペシャル」なんて言われた彼専用のすぐれた総合バランスに対して、ウィリアムスの、特にシャシーバランスはいただけなかったらしい。どうもレギュレーションの変更で前年のチャンピオン・カーがそうなっちゃったんだと思うけど、セナにとってはそこで無理したのがあの事故に繋がったとも思えるわけで、俺自身ファンだっただけにほんとに残念だった。」

記者 : 「ええ、ぼくも同じです。」

天野 : 「どんなにパワーのあるエンジンを積んでいてもそのパワーに負けないしっかり止まれるブレーキと、受け止められるシャシーがなければドライブなんて出来やしないよな。ましてやF1の世界の話だぜ。ほんの数oウィングを調整しただけでタイムが全然違っちゃう世界なんだから恐ろしいよ。
逆説的だけどよく出来たスポーツカーはもっとも安全性が高い、というのはこんなところからだよね。
それとスポーツ・カーじゃないし今に始まったことでもないけど、ちょっといい車になるとセダンで240とか280馬力なんてのがあるよなあ。外車なんか300馬力以上のものまである。なんなのあれ?」

記者 : 「なんなんでしょうねえ」

天野 : 「そういうウリを付けないと買ってもらえないとでも思ってんじゃないの。
本来もっとも実用的な車であるはずのセダンに、なんであんなハイパワーを装備する必要性があるわけ?
コーナー攻める訳じゃないのに、どうしてセダンに50や55なんていうハイアスペクトのタイヤをはかせるわけ?
その分サスに高価な負担をかけなきゃならないし。どうひいき目に見たって売れ筋車全体の平均価格を吊り上げて、全体として大きな利益をあげようとしてるとしか思えねえじゃねえかよ。
民間企業なんだから利潤の追求は当たり前だけど、必要性のない車種に装備を奢ったって宝の持ち腐れか事故を誘発するだけだろうが。技術革新の成果を発表したとか、市場ニーズがあってなんて説明するんだろうけど、それなら他にためす車種があるだろ。お金持ちのステータス意識をくすぐって、その所有対象となる高級セダンに的を絞ったのはあきらかじゃねえか。メーカーは売れるたびにまたひっかかったって裏で笑ってんじゃねえのか?」

記者 : 「その辺にしましょうよ。HPに載せられなくなっちゃう。」

天野 : 「ほんとに日本人てのはお人好しなんだから。」

記者 : 「よく馬鹿だって言いませんでしたねえ。」

天野 : 「おいおい」

 

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