スター・トレック  No.17
新規追加 1998年11月 1日
追記更新 2008年 2月16日
最終更新 2021年 7月10日
 

記者
「CMでもやってたように来世紀早々(98年初回アップ時)には宇宙旅行が実現するでしょ。以前遅れてると言ってた宇宙開発もようやくって感じです。そこで質問ですが、「スター・ウォーズ」や「スター・トレック」みたいな時代がやってくるのはいつ頃になると思いますか?。」

天野
「小規模、短時間の範囲なら月や火星への移住とか、来世紀(21世紀)半ば〜後半に掛けて実現すると思う。
太陽系内である程度条件が整いそうなのは今のところ月と火星しかないけど、ただ一般人が長期居住できるかと言えばそれは不可能。訓練を受け科学調査とか目的を持った宇宙飛行士ならともかく、居住を目的とする一般人はたとえそれらの星にホテルや施設が出来、法的経済的にすべてが可能になっても無理。旅行で出掛けるのと住むのでは別次元の話しだってこと。理由は簡単で重力が地球上とはまったく異なるから。月で地球の1/6、火星でも1/3しかない重力下で一般人は生活なんて出来ない。地球上で20cmジャンプしたつもりが、月では1m以上の大ジャンプになっちゃう。じゃあ体重の5倍の重り持って歩くか? それもまったく現実的じゃ無く、比重が大きくて安い鉛のような重り持ったとしても、地球体重70kgの人が体積換算で30リッター程度の鉛を背負って歩く? そんな物、常に持ち歩けるかって話しだし、1/6重力下とは言え逆に自分の体重の5/6を担げるか?って話でもある。そんなこと地球上でだって大変だろうし、そもそもそんな無駄に重い物ロケットで運べるかよ!ってこと。
火星ならまだ移動時間が長いので慣れという意味では有利だけど、月までじゃそんな時間もない。ほぼ突然重力1/6の地に投げ出されるってこと。そのままじゃまともに歩くことすら出来ない。たとえば宇宙飛行士でも無重力状態から地球へ帰還した際歩けなくなっちゃうだろ。それと逆のことが月や火星で起き、やっと慣れた頃には筋力退化や骨粗しょうが著しく他の場所(星)には行けなくなっちゃうし体型変化も激しい。
いずれにせよ未来の地球外惑星や衛星とか様々な場所での居住や星間飛行なんて、希望的展望や未来予想は枚挙にいとまが無いけどはっきり言ってすべてうそ。あるいは物理法則を無視した超楽観的夢物語。100年200年経っても無理。重力の違いを相殺させるなんてそんな簡単なことじゃ無い。そもそも一般人がそんな思いしてまで暮らしますか?って話し。最大限譲っても一般人にとっては地球重力±20〜30%程度までの範囲が限度だろうな。それだって人の体型はだいぶ変わる。
っで、そこで登場するのがスペース・コロニー(注1)ってことになる。これは大規模になれば回転させることで遠心力を発生させ重力を持たせられるから、可能性としてはこちらの方が遙かに高いし有望。よく映画とかで見る宇宙ステーションが回転してるのはこのため。
いわゆるその手のSF映画やドラマでは、他の惑星上、衛星上、宇宙船内どこに行っても重力は地球と変わらないものとみんな端折って描かれてる。宇宙船自身が加減速するときも同じ。重力(分有引力や慣性力等)を制する何らかの手段でも無けりゃ、現実的には避けようのない大問題。
それに加え広大な宇宙を舞台にするようなスター・トレックなんて、そもそも可能なのかどうか大いに疑わしい。」

記者
「楽観的な天野さんでもほぼほぼ全否定ですか?」

天野
「だってスタートレックに絞ったってとにかく宇宙はでかすぎる。途方もなくでかい。
一応観測可能な範囲を半径140億光年として、距離的には1光年が約10兆kmだからその140億倍ってことになる。もっと遠くの観測不能な範囲まで入れたらいったいどれくらいのスケールになるのか、まったく人知の及ぶところじゃない。ホーキング(注2)らの提唱するインフレーション理論では、宇宙創世のビッグバンからわずか10のマイナス30数乗後にはすでにその大きさを遙かに越える大きさになっていた、って言うんだから我々一般人に理解しろってえのが無理。更に現在地球上での時間とビッグバン当時の時間スケールは違うからとか言われても、はぁ??って。
まあしかしとりあえずはすぐ隣の恒星までってことで、この太陽系から一番近いと言われるケンタウルス座のα星まで、片道およそ4光年(40兆km)の距離を往復するとしよう。現在作り得る最高水準の技術で、金に糸目を付けず、目一杯燃料を積んで、最大限の加速をして秒速1000kmで航行する。さてどのくらい時間がかかるかと言うと、これで約2500年かかっちゃう。つまり現行科学技術の延長線ではどうあがいても、スター・トレックなんてまったく不可能ってことだな。」

記者
「なんか夢がなくなっちゃいますねえ。」

天野
「現在のロケットエンジンじゃいくら推力を増してスピードを上げようとしても、比例して使う燃料も図体も膨大になっちゃう。結果的にロケット自身の重量も重くなっちゃうから慣性が大きくなって、スピードも上がりずらいし止まりずらい。惑星などの引力を利用するスイングバイって言う方法もあるけど、それとて条件しだいだしそう簡単に位置関係が整わない。つまりまったく新しい発想のエンジンでも考えつかなきゃ、スター・トレックなんていつまで経っても夢のまた夢ってこと。
で、考えられたものの一つに光子ロケットってやつがある。パラボラアンテナのような半径数十キロという馬鹿でかい反射鏡に強力な光を当てて、その反動で宇宙空間を航行しようって言うものらしい。理屈の上では何でも光速に限りなく近いところまで加速が可能とかで、なかなかいんじゃないのと思わせる。ただそうは言っても光源はどうすんの?、燃料は?って話になっちゃうとこちらも現在の技術ではまったく不可能。はたしてそんな理屈が正しいのかどうかさえかなり怪しいんだけどね。」

記者
「机上の空論ということでしょうか?。」

天野
「まあ、現段階ではそう言っていいだろうな。映画や理屈の上では他に反粒子(注3)を利用したエンジンなんかも出てくるけど、やっぱり想像の域を出てないしこれから数十年で何とかなるってもんじゃない。ただテレビやコンピュータだって200〜300年前ならまったく理解不能だろうから、遠い未来のことまで断定することは出来ないけどね。
もっとも仮にそんなロケットが出来たとしてもそれだけじゃあダメ。他にも乗り越えなきゃならねえ問題がいっぱいある。」

記者
「たとえば?」

天野
「たとえばアインシュタインの相対性理論(注4)って聞いたことあるだろ。実はロケットや重力がどうのこうの言うより、ほんとはこっちの問題の方がずっと大きい。
相対論によると地球上のようにほとんど加速を受けない所と、ロケット内のように大きく加速(減速や進行方向が変わることも同じ)を受ける所では時間の進み方が違うって言うんだよな。これは実際に厳密に合わせた二つの原子時計を用意して、その一方をロケットに載せて打ち上げた後回収した実験で確かめられている(うらしま効果という)。
スター・トレックも同じで光速に迫るほどの超強力な加速を受け超スピードで航行すると、そのロケット内では地球上に比べ時間の進み方がずっと遅くなっちゃう。以前映画であった「猿の惑星」はこの理論を基に作られたもので、ロケット内の数年が地球上の数千年(映画では1500年だったかな)に相当しちゃったっていう話。まさに「うらしま太郎」と同じ世界だよね。あの話しの竜宮城って実は宇宙船だったんじゃないか?なんて言われるのもこのため。未来に行くための一種のタイムマシンと言ってもいい。
スピードが遅くっちゃすぐ隣の星に行くのにも数千年以上もかかる。かと言ってスピードを上げるために加速を繰り返せば地球上との時間差がどんどん大きくなっちゃう。どっちみち飛び出したら最後で、スター・トレックをする限り帰る所はないっていう覚悟が必要ちゅーことだな。」

記者
「やはりどう考えても映画のようなスター・トレックは不可能?。」

天野
「うん、現時点で確認されてる物理学の原理では、いくら逞しい想像力を持ってしてもまったく不可能。たとえあと100年経っても200年経っても、せいぜい太陽系内の宇宙旅行が精一杯ってとこだね。
映画の「スター・トレック」は確か23〜24世紀が舞台だったと思うけど、その頃になっても太陽系外へのスター・トレックはまったく無理だろう。そもそも星間飛行というのが宇宙のスケールからすると、それ自身人間の想像の産物っていう言い方も出来そうだからね。
ついでに同じ理由で、地球以外にいわゆる宇宙人(もちろん太陽系外の)がいたとしても(宇宙の広大さを知れば知るほど存在を否定出来なくなる)、テレビ特番でやってるような地球訪問なんてことは考えにくい。って言うか、そもそも考えに無理がある。もし先の相対論を超越し星間飛行を行うほどの科学力があるなら、そもそも地球人に見つかるようなヘマはしない。わざわざ地上に降りて来なくったってすべての情報は宇宙から観測出来るだろうし、間違ってもUFO墜落なんてことはあり得ない。地球なんてその気になればボタン一つで吹き飛ばせるだろうし、地球上から人間だけを選択的に抹殺することだって苦もないだろう。とてもとてもインディペンデンス・デイなんて暢気じゃいられないよ。それくらいの天地がひっくり返っても叶わない、圧倒的な科学的・技術的差があるって。
でもそれじゃ映画にならないからさー・・・・」

記者
「でも天野さん、スピードの問題に限ればワープがあるじゃないですか?。あれは実現出来ないんですか?。」

天野
「あれはだって想像って言うか創作の産物だもん。このままじゃ「相対論がある限り宇宙を題材に小説書けない」ってわかったSF作家が、自分の小説に都合のいいよう理論を組み立てただけ。いかにもそれらしく理論武装してるようだけど、科学的には現時点でまったくあり得ないこじつけだからね。やっぱり映画やアニメのような分けにはいかないよ。
たださっき言ったように現代の生活習慣自身が数百年前ならまったく夢だったろうから、相対論に取って代わるような新しい理論が発見されれば、また事情は違ってくるかもしれない。最近になってアインシュタインの考えていたことにいくつかの疑問が出てきたとも聞いてる。もっともそういうのは相対論自身を否定するもんじゃなくて、その後のアインシュタインが執念を燃やし、現代物理学の最大テーマでもある大統一理論(注5)とか量子力学分野での話。実存世界で相対論自身はむしろ様々な事実から裏付けられて益々強固になってるし、そこから発展された理論が次々と実証されてもはや疑いようのないものとなってる。最近話題になったブラックホールの可視化成功もその一つ」

記者 : 「やっぱり無理かあ?。」

天野 : 「いくら楽観的な俺でもこれは無理だな。少なくても向こう数百年は無理。ついでに言えばタイムマシンもこの部類。「猿の惑星」みたいにロケットで未来に行くことは出来ても、過去に戻ることは出来ない。ホワイトホールだワームホールだタキオン(注6)だといろんなものを利用して理屈で考えることは出来るけど、いずれも形ある物がそれらを利用して過去や未来に移動することは出来ない。
相対論で予言されたブラックホールはおよそ100年後の現在上述通りすでに実証され、今時の研究者で否定する人はよほどの変わり者で無けりゃいない。しかし、ホワイトホール、ワームホール、タキオンなんてのは少なくても現段階ですべて創作のたまもの。すべてを呑み込むブラックホールがあると言うならその呑み込んだ物はどこに行くんだ? だったらすべてを吐き出すホワイトホールもあっていいじゃん。じゃーブラックホールで呑み込んだ物をホワイトホールで吐き出すことにして、その間をワームホールとして繋ごうって・・・・いやいや想像たくましい。ちなみに超新星爆発をある意味ホワイトホールと言えば意味合い的には似てるけど、そのメカニズムはまったく異なるからね。
話を戻すとまあ実現性で言えば、同じ映画の「スタートレック」でやってる「転送(物体を他の場所に電波のようにして送る装置)」ってやつ、あれはちょっと面白いかもしれない。生物など複雑なものはとても無理だけど、ひょっとしてあと100年もすれば単純な原子くらいなら転送出来そうな感じもしなくはない。」

記者
「どっちみち僕が生きてるうちは無理ですね。」

天野
「無理ですな。」 

 

注1 スペース・コロニー
宇宙空間に大規模な居住施設を作る計画。いわゆる宇宙ステーションを人間の居住に適するよう大規模に作り替えた物と思えばいい。一施設で少なくても数万人〜数十万人規模になる。

注2 ホーキング
現代理論物理学の旗手。現在の宇宙論は彼なしには語れない。その意味では20世紀後半のアインシュタインと言ってもいいだろう。
インフレーション理論は宇宙誕生のビックバン後10のマイナス30数乗という極・極・極短時間の間に、宇宙が少なくても1京倍の更に100兆倍まで、これまた途方もなく膨張したという理論。その範囲は現在地球から観測可能な140億光年の宇宙の彼方より遙かに大きい。こりゃーもう、我々凡人に理解しろってのが無理。ほとんど数遊びって感じ。実は理論より先に数合わせがあったりして?。

注3 反粒子(反物質)
電子、陽子などとまったく同じ性質を持ち、電気的符号のみ反対の素粒子。すべての素粒子には反粒子が存在するが、現在の宇宙にはほとんど反粒子はない。
ちなみにこの世界とまったく逆の世界(宇宙)が存在するんじゃないか?、などとよくSFで取り上げられるのはこの反粒子の世界を想像してのことだろう。実際は想像の域を出てない空想の話。現在の宇宙に反粒子がほとんど存在しないのは、ビックバン時に同時に発生する無数のブラックホールに飲み込まれ・・・・・などとは前述のホーキングの説。
尚、素粒子と反粒子が出会うと双方は消えてなくなり、その質量が100%エネルギーに替わる。これも物語で良くある同じ物通しが接触したら消滅しちゃうなんてのもここからの発想だろう。そのエネルギーは核反応の数百倍という膨大なもので、現在考え得る最大のエネルギーである。仮に70cm四方(およそ2トン)程度の石がすべてエネルギーに替わったとすると、それだけで全人類が1年間に使うエネルギーの総量に匹敵する。
21世紀が核融合の利用なら22世紀は反粒子の利用になることだろう。

注4 相対性理論
1905年発表の特殊相対性理論と15〜16年発表の一般相対性理論がある。1905年当時アインシュタインはまだ20代の青年であったことに驚く。尚、加速を受ける系と受けない系で時間の進み方が異なるのは一般相対性理論の方。

注5 大統一理論
晩年のアインシュタインが執念を燃やした理論。元々は自然界の4つの力(強い力・弱い力・電磁力・万有引力)を統一して説明しようという理論。
その後多くの学者が研究に挑み、現在はアインシュタインの考えとは形を変えたものの、ほぼ解明の目星がついたとも聞いてるが?。

注6 タキオン
光より早く走るという想像の粒子。相対性理論は秒速30万kmの光のスピードを基準としているため、もしタキオンがあれば理論自身に修正が必要となる。実際はもちろんこれも空想の域を出てない。もし光より早く走る素粒子があれば・・・・・っていう、たられば話。
 
 
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