マスコミ (その3.選挙報道) 990412 No.25
天野 : 「今年の春は騒がしいねえ。」
記者 : 「統一地方選挙のことですか?。」
天野 : 「うん、ここ甘楽でも県議会や町議会議員選挙が続けてあるしさあ。いつもは無風選挙が多いんだけど、今回に限っては県議会議員なんか1人区に4人も立候補しちゃったりして。25日の町議会議員選挙もいつになく候補者数が多いって噂だしな。国政選挙より身近なだけに、1票の奪い合いも末端までより激烈を極めるってことかな。まあ、選択肢が多いということは悪い事じゃない。どっかの選挙区のように半世紀も選択肢がないなんてとこより遙かにいい。」
記者 : 「そりゃそうですよね。天野さんの言う選択肢がなくていつでも無風状態じゃ、それこそ利権の温床になりかねないですよ。よほどしっかりした人でも長く続くと、どうしても下心を持ってすり寄って来る連中が出てきそうだし。」
天野 : 「だいたい恥ずかしいことに、地方議会じゃ決まって公共事業絡みの立候補が多いんだよね。もちろん立派な人もいるんだろうけど、見え見えの利権争いってのも少なくないからさあ。議員数全体に占めるその手の出身者が明らかに異常に多い。」
記者 : 「僕も調べてはいないけどやっぱりそうなんですかねえ。いかにもありそうだもんなあ。勝ち組に乗らないとっていう。
以前、僕たち記者の間でも話題になったのは○○○島の選挙ですよね。何十年もあからさまな二派による対抗選挙が続いてるんです。そこなんか負け組に入っちゃうと4年間仕事がほとんど回ってこなかったとか。」
天野 : 「ああ、そういうのもあったなあ。」
記者 : 「ところで今回の統一地方選挙って言えばやっぱりあれでしょ。」
天野 : 「東京都知事選な。19人も立候補者が出ちゃったりしてさあ、こちらもずいぶん騒がしかったよね。関東ローカルはもちろん、全国ニュースでもけっこうその動向が報道されちゃったりして。まあ一自治体とは言っても、1000万以上の人口とちょっとした国に匹敵する予算を持つんだから、確かにそれなりの話題になるのは当たり前なんだけどね。
で、疑問に思ったのはその選挙戦によるマスコミの報道なんだよなあ。いわゆる有力6候補ってのは誰が何の根拠で選んだの?。NHKや民放はもちろん、新聞各紙もほとんど選挙戦の報道と言えば6候補の動向に限られていたよな。これってどういうこと?。」
記者 : 「あら(まずいフリしちゃったなあ)、それは・・・・ほら・・・・」
天野 : 「何だよ?。暗黙の了解かい?。
有力候補か泡沫候補かってマスコミが始めっから勝手に判断しちゃったわけ?。有力候補に選ばれれば特番・特集まで組まれちゃって報道されるのに、泡沫候補と判断されたら何もなしかい?。どう考えたって不公平だろう。一応被選挙権の規則に則って同じ供託金を払い込んでの立候補なんだからさあ。」
記者 : 「理屈はそうだけどわかってるじゃないですかあ。」
天野 : 「もちろん、なぜそうなっちゃうのかってのはわからねえわけじゃねえよ。見る方だってさっきの暗黙の了解ってやつさ。だけど泡沫ってくくられちゃった側はたまんねんじゃねえか。俺だったら損害賠償や名誉毀損くらいの裁判起こしたっていいと思うけどね。これって大袈裟に言えば自由と平等を標榜する民主主義の根幹に関わるんじゃねえか?。たとえ公職選挙法などに違反してなかったとしても、何かと言えば報道の自由や人権を盾にする、マスコミのあるまじき態度って思えねえかなあ。
確かに個人や所属組織の売名行為だけが目的の候補もいたかもしれない。でも勝手に泡沫って判を押したのはマスコミだろ。それとも我々は民意の現れだって胸張っちゃうわけ。中にはそんな扱いを受けながらも真面目に主張を展開した候補だっていたはず。そりゃー19人もいちゃー多少平等性には目をつむっても、ある程度絞らにゃー放送時間も紙面も足りないのはよくわかるけどさあ。」
記者 : 「確かに矛盾には違いないけど、いわゆる線引きってのは時と場合により必要な時だってあるでしょう。」
天野 : 「うん。だから理由は何となくみんな了解してんだよ。問題はそうやって報道するからにははっきりその根拠を示せって言ってるわけ。もしそれが示せないなら理由付けそのものにまずいところがあるんじゅないのって。たとえば訴えられる危険性があるとかね。だったらその線引きには公に出来ない問題があったってことじゃねえのか?。」
記者 : 「失礼だけどそれは屁理屈ですよー。だって19人もいちゃったらどうしようもないもん。」
天野 : 「そんなことないさー。仮に3人程度の選挙戦だったって、よく事実上の一騎打ちなんて言われることがあるじゃん。そんなときにも問題外って外されちゃった候補をマスコミは平等に扱ってるかい?。たかだか3人だぜ。
つまりマスコミがこっちの人は元々当選するほどの候補ではなく、投票するならこの人かこの人ですよって言ってるんと同じだろうがあ。たとえ死に票を減らすためだなんて言ったってさあ、そんなの余計なお世話だっちゅーの。マスコミにそんな権限があるんかよ。候補者を選ぶのは有権者だろ。マスコミはたとえ候補者が2人だろうが20人だろうが、出来る限り公平な情報を伝えるべきで、それが出来ないなら黙ってろ。あるいは出来る範囲の報道に控えろと言ってるの。後の判断は有権者にゆだねるべきだと言ってるわけ。」
記者 : 「平等とか公平って意味じゃ確かにそうかもしれないけど、天野さんの論法だとマスコミは選挙に口を出すなってことになっちゃいますよ。」
天野 : 「いんじゃないの、それで。少なくても俺はそんな形でマスコミに誘導されたくはねえなあ。候補者を見極めるなら自分で見極めるよ。
今回に限らず今までの状況は、けっきょくどんなに立派な理念や政策を持ってても、所詮政党候補とか有名人とかじゃないとマスコミは取り上げねえわけだろ。それでいて人材不足だってか?。てめえらが勝手に足切りしといてさあ。こんな不公正はねえよな。よくそれで良心を代表するような偉そうなこと言えるよ。現実の場面じゃ公平なんて無理なんだって尻まくった方がいんじゃねえか?。
「有権者のみなさんは我々(マスコミ)の報道で左右されるほどバカじゃありません」だって。よく言うよってな。「有権者がバカだから今の日本(東京)の停滞があるんだ」ってはっきり言ったらどうなの。「バカな有権者には我々が予備選抜してやらないと」って、そう思ってんじゃないの?。マスコミは自分らの影響力を過小評価するな。東京都の場合ならたとえ1%が動かされても何万票にもなるんだからさあ。
ただ別に選挙戦の情勢分析とかまで否定してるわけじゃない。分析は分析でそれが各マスコミの調査結果だと言うなら、順位を付けたってかまわねえだろう。もちろんその分析結果を鵜呑みにしてはいけないって事は、すでに何度も言った通りだけどね。
言いたいのは始めっから、少なくても告示後は候補者報道に差別をするなってことさ。」
記者 : 「つまり影響力が大きいんだから、勝手に絞り込むような報道をしてはいけないと。」
天野 : 「始めっからフルイにかけんじゃねえ。」
記者 : 「候補者をフルイにかけるのは有権者の仕事だと。」
天野 : 「わかったじゃあねえ。」