写真も動画も・・・・ 010415 No.38
天野 : 「残念ながら今の時代、写真や動画映像ほど信じられないものはない。」
記者 : 「っと言うと?」
天野 : 「一昔前だったら「証拠写真」なんていう言葉があっただろ。そういうもんは真実を伝えるものの代表選手だったよね。でも今じゃ完全に死語。素人でもちょっとパソコンが扱えてちょっと気の利いたソフトがあれば、もう如何様にも加工出来ちゃう。」
記者 : 「まあ確かにそういう時代にはなりました。」
天野 : 「別に自分で楽しむために、まあ一つの表現手段として自己満足する分にゃー全然かまわない。ただ発表するとなると場合によっては第三者に誤解を与えたり、時には悪意を持って・・・・なんてこともあり得る。
昔はたとえそんなものを素人が作っても発表する場がなかった。仮に悪意があっても、その影響はせいぜい特定の個人とか限られた人の範囲だったろうね。
ところが発展期とはいえ今のようなネット社会になると、ホームページや電子メールのアドレスさえ持ってれば写真でも動画でも不特定多数の人に、それも世界規模で簡単に発表出来るようになっちゃった。」
記者 : 「そうですねー。でもー、昔だってトリック写真みたいなものだったら色々ありましたよ。UFOとかネッシーとか。コラージュのような芸術だってあるし。まあ、芸術をトリックと言ったら叱られちゃいますけど。」
天野 : 「もちろんそうだけど、そりゃやっぱ技術レベルの違いってもんがあるだろ。
昔の写真は糸で吊ったり灰皿を張り合わせて放り投げればUFOになった。ネッシーなんか波の干渉で盛り上がったところを写真に撮ったと騒いだり、模型を浮かべただけだったり。もうパッと見で「ええ〜ほんまかいなー?」って奴ばっかじゃん。ちょっと科学や光の性質&写真に詳しけりゃさー、あんなの信じちゃう奴の方がよっぽどバ・・・・いやいや止めた。別に人をとやかく言うつもりは無い。そういう人はようするに純真なんだね。
とにかく、俺の目には説得力ゼロ。よくTVでやるような奴、あれはバラエティ。
もっとも、個人的にはその手の番組結構好きだよ。あんなに笑えるものはないよな。見ながらもうニコニコワクワクしちゃうもん。」
記者 : 「そりゃー、なんか嫌みったらしいですよ。」
天野 : 「いやいやマジな話。あれはバラエティだからそれでいいの。
UFOも宇宙人も超能力も心霊写真も霊魂も、ある程度科学を知ってたりその道に詳しけりゃバカバカしいもの。でもそのバカバカしさをエンタテイメントとして笑えるところがいいんだよ。日本は平和だなーって再確認出来るもんね。もちろん科学で説明出来ないことはいっぱいある。だからってすぐそれを超自然だと言って短絡的に納得しちゃー子供と同じじゃん。それじゃ俺には思考の拒否に見えるし、不可思議なことに夢を持ちたいという逃避行為にも映るね。
実際、作り手側だって本気にしちゃいないさ。おもしろおかしく演出して話題にでもなりゃーしめたもの。視聴率が取れればそれでいいの。視聴率高けりゃいくらでもスポンサーはつく。だからこそその手のバラエティはすたれない。」
記者 : 「はい、それはまあそうですかね。」
天野 : 「動画も同じ。昔、○山○穂が○ビデオに・・・・なんて話がよくあったよねー。あんなの編集でなんとでもなっちゃうでしょ。似たようなそっくりさんなんていっぱいいるんだからさー。ちょっとした表情やカメラアングルと照明、おまけに一般市販の本人映像もちょこっと入れたりしてね、もう編集者の腕の見せ所だよ。どこまでホントでどこまで嘘なんて区別できやしないよ。
まっ、いずれにしろ俺に言わせりゃ稚拙なものだね。信じろって方が無理。実際、大方の人だって信じて見てる訳じゃない。もしかしたらって、そう思わせるところがいいんだよ。」
記者 : 「はあー」
天野 : 「ってことで、仮にトリックがあっても簡単に説明はつくし見破れる。こりゃおかしいでしょーって、みんないかにもって奴ばっかり。
ところがだ、今の画像ソフトを駆使したとなるとそう簡単にはいかなくなっちゃった。
デジタル写真なんかドット単位で修正された日にゃーちょっと見分けは付かない。従来写真だってそれをデジタル化して加工を加えれば同じ。現代は嘘をホントに出来る時代なんだよね。」
記者 : 「なんか悲しいですねー。」
天野 : 「芸術やテクニック、あるいはCGとして画像加工して見せる分にはまったく問題ない。
問題は自分の利益や誰かを陥れる目的で写真や動画が使われた時。さっきの話でそれがデジタル加工されたものかどうかでさえ、おそらく俺を含むほとんどの人には見分けがつかないだろう。つまりそれがネット上であれば、すべての写真や映像はどう加工されてるか信用おけないものとなっちゃう。まして今や印刷物もほとんどすべて、そういう加工がされてると思っていい。
つまり現代の写真や動画映像はそれを写した本人や周りの編集者らが知る以外、すべて但し書き付きのものだということ。
特に写真は一瞬を切り取るだけに、その画像からどんな説明でも出来ちゃう。逆に説明が無ければ見た人の考えですべてが判断されちゃう。ちょっと加工を加えちょっと一筆添えれば世間なんかどういう方向にも誘導できちゃう。
動画だって同じ。TVなんかどんな編集がされどんなナレーションが加わるかで、○を×と言い切ることも出来る。」
記者 : 「だから写真や映像ほど信じられないものはない?」
天野 : 「そういうこと。写真やビデオ映像(もちろんフィルム映像も)だけを信じて判断しちゃーいけない。マスコミと同じで、「常に疑いを持って見るべし」、っと言いたいね。「編集されてんだぞ」って肝に銘じること。
ちなみにこのサイトの写真はすべて自分で撮ったオリジナルだけど、「原板を修正する」という意味の加工や補正はいっさいしてない。画像はすべてスキャナからの読み込みデータのまんま。もちろん圧縮やトリミング、それに光量(写真で言えば絞り)だけはディスプレイ上の再生に合わせ調整しているものもある。ディスプレイ上ではどうしても実写真よりコントラストが浅く(明るいところはぼやけ、暗い部分はつぶれる)なりがち。ダイナミックレンジの狭い液晶画面なんかまだまだ課題は多いね。」
記者 : 「輪郭強調もボカシも色相も、いっさい加工してない?」
天野 : 「してない。スキャナの能力や個性に依存する部分はしかたないけど、それに加えていじるとか補正するという加工はいっさい無い。
たぶんここ以外の他のサイトだって同じようなもんじゃないの。だいたいさー、よっぽど凝り性でもなけりゃ「そんな暇あるか?」ってのがほとんどじゃねーか。まあ、目的が他にあれば別だけどね。」
記者 : 「どうしてそんなに無修正にこだわるんですか?」
天野 : 「前にも似たようなこと言ったと思うけど、俺は自分を横に置いといて人をとやかく言うほど恥知らずじゃない。このサイトで好きなことが言えるのは、たとえばどこかのページで何かについて批判的なことを言ってるとしたら、その裏には「自分はそうじゃない」と言い切れる自信があるから。もし俺が空き缶やたばこのポイ捨てをやってたら、そのことについて人を批判することはない。でもやってないから堂々と批判できる。
写真でも、別に他人の写真がどう手を加えていようがいまいが、こちらからとやかく言うつもりはまったくない。でも、もし他人からあなたの写真はおかしいと指摘されても、自分はしてないという自信があれば(ディスプレイ等の原因によるものはしかたないが)、たとえ何を言われてもそれは一種の余裕や安全弁として機能することになるよね。」
記者 : 「なるほど、ごもっとも。安全弁ね。」
天野 : 「精神的な安全弁ね。」