COLUMBIA/No.212ポータブル蓄音機
新規追加 2008年12月25日
 
レストア完了外観
 
COLUMBIAポータブル機中の中・上級機に位置するNo.212です。卓上機譲りの2丁ゼンマイ機械にお馴染みNo.15サウンドボックスが付きます。蓄音機全盛期と言える昭和初期頃の発売で、既出のG−208より一回り大きく重い筐体はポータブル機として持つにはそろそろ限界でしょうか?
ポータブル機らしからぬ大きく朗々と鳴る様は人を驚かすに十分でしょう。常用機として使える資質を十分に備えた優秀機で、そのポテンシャルの高さが何よりベストセラーとなった証です。
主な仕様(自己調べ)
筐 体 実測/縦(奥行き)41cm×幅30cm×高さ18cm  開口時高さ約53cm  重量約9kg
ターンテーブル 10インチ(約25cm)
機 械 2丁ゼンマイ
サウンドボックス COLUMBIA No.15
ホーン  J型板金ホーン
時 代 昭和初期
その他 オートスタート&ストップ付き/手動ストップ付き
 
 
入手時外観1 入手時外観2
入手時外観

パッと見の外観はまずまず・・・・と思ったものの、写真のように何か載せてあったらしく足跡4個所が天面にあり、底面は化粧布もかなり剥げ剥げ。四隅の角はそれぞれヒビ割れや剥がれがあり、底面の足はすべてゴムが磨り減って平になっていた。よく破損したり紛失していることの多い取っ手は、このセットでも握りの真ん中で革が切れている。幸い内側の補強金属板に破損はないので、合成ゴム系接着剤で補修は可能だろう。
 
入手時内部1 入手時内部2
入手時内部

内部はそこそこきれい。
付属のNo.15サウンドボックスはご多分に漏れずゴムが溶けて破損。これは交換以外どうしようもない。クランクは差し込みタイプで既出のG−208と同じ。金属めっき部分にいずれも剥がれや錆があるものの、磨けば光る程度で全体としてはまずまずだろう。
ターンテーブルを外して左手前に手動ブレーキ、右手前にスピード調整ツマミ、右奥にオートストッパーのセレクタレバーとサスマタ状の駆動ステーが付く。いずれも動きが渋いなどメンテは必要だが、致命的な問題はなさそう。
 
蓋中ロゴ 銘板
ロゴと銘板

蓋内側に印刷されたお馴染みコロンビアのロゴと正面奥に取り付けられた銘板。
印刷はだいぶ擦れてるが下側の四角内にNo.212の型番があり、銘板の型番とも一致。オリジナルに間違いないだろう。
 
筐体内部 機械とホーン1
筐体内部と機械&J型板金ホーン

油汚れ等は致し方ないとして、筐体内に目立つ傷みはない。パネルの固定は左右2本の木ネジとアングル4個所のネジ、計6個所で固定されていた。
機械はガッチリした鋳物製フレームの2丁ゼンマイ。J型板金ホーンも厚板を使用したしっかりした作りで、指で叩くとコンコンと固い音がして高級感がある。
 
機械とホーン2
機械と板金ホーン

10cm近い大きな開口径のホーンは存在感バッチリ。機械の高さいっぱいに作られている。
 
機械1 機械2
2丁ゼンマイ機械

前述のように鋳物製の頑丈な機械がうれしい。現物を見る限り同時期のコロンビア卓上型と同一の機械のようで、ポータブルとしては最大クラスだろう。右写真に見えるガバナーも重錘3個所の高級機仕様。目立った問題は無く、静かに力強く回る。
 
合板&機械取付面補修
合板&機械取付面補修

古い合板に剥がれはつきもの。木工用接着剤を塗ってクリップで固定し補修。
機械の防振ゴムももはや傷みは常識?このセットでも一部は溶けて一部は硬化して、機械、パネル面それぞれにこびり付いていた。もちろん交換のためノコ刃を削った手製リムーバーで削ぎ落としきれいにする。
 
機械取り付け表面 機械取り付け面
機械再取付

表面からのワッシャー下には1mm厚のゴムを、内側の機械と板の間には3mm厚のそれぞれ市販板ゴムを加工して入れておく。
もう少し軟らかめのゴムの方がいいのだが、なかなか固さやサイズのあったものが無い。形を変えた1mm厚ゴムを数枚ラミネートするとか、工夫すれば防振対策も上がるだろう。
 
取っ手補修
取っ手補修

破損や紛失の多いポータブル機の取っ手だが、このセットでは写真のように握りの中央から革が切れたり縫い目が剥がれたりしていた。そこで筐体から外し、合成ゴム系の軟質接着剤で貼り付けクリップで固定しておく。十分乾いてから筐体に再取り付けして完了。ちなみに接着剤は乾いても容積の減らない無溶剤型を使用している。
 
筐体補修
筐体補修

同時代に発売されたポータブル機はほとんど、大なり小なり化粧布収縮や当たりによる角の痛みが常識的にある。このセットも同じで、角の継ぎ目に剥がれと一部欠損が目立っていた。そこで木工用接着剤を塗り込んでこれ以上の傷みを防止しておく。写真は塗り込み直後で白く見えるが、乾くと透明に目立たなくなる。底面の傷みは・・・・保留!ヒビ割れも酷いので、後でクリア塗装かな?
足は写真のようにすっかり磨り減って、このままではテーブル等にキズを付けるので市販のゴム足を貼り付けておいた。
 
レストア完了
レストア完了

パネルの化粧面側を、いつもの水拭き&ワックス掛けコースを施しすっかりきれい!動きの重かった可動部も清掃&注油で問題なし。筐体に元通り取り付けて、最後にストロボスコープを使ってターンテーブル回転数を調節しレストア完了。
 
試聴
試聴

手持ちNo.15サウンドボックスを付けて試聴。朗々と明るく大きな鳴りっぷりの良さはポータブルとして最大レベル。大形の板金ホーンも加わりまるで卓上型のような音量だ。けっこう重いサウンドボックスなのだが、機械の力も十分で10インチ盤2面程度はOK!
 
 
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