ベートーヴェン  ヴァイオリン協奏曲
〜格調高い音楽を聴きたい人に〜
最終更新 2005年2月11日
 
世の中には三大何とか五大何とかなどというものが多い。特に日本人はお好きなようで、日本三景、三名園、四天王、四大祭りときりがないほど。クラシックの世界もご多分に漏れず、ヴァイオリン協奏曲では四大協奏曲というのがある。その4曲、偶然とはいえいずれもそれぞれの作曲者にとって、唯一のヴァイオリン協奏曲であるというところがまた面白い。
ちなみに四大ヴァイオリン協奏曲とは今回のベートーヴェンの他、メンデルスゾーン、チャイコフスキー、ブラームスの曲を指して言う。メンデルスゾーン以外の3曲は初演当時、評論家からかなりの不評だった。どうもそれだけ時代に先駆けた作品だったと言っても良いようである。
ベートーヴェンの協奏曲は一般に、「古典的な様式美とロマン的な旋律が・・・・」などと説明されることが多い。要するに時代の過渡的な作品とも言えるだろう。とは言えこの時期、ベートーヴェンは後に「傑作の森」と評される絶頂期に入る頃で、クラシック音楽のあらゆる分野でいずれも1〜2位を争うような作品を生み出している。もちろんヴァイオリン協奏曲とてこの分野でベストに上げる人も多く、私自身好きな曲としてその評価にまったくためらいはない。
第1楽章はティンパニの「トントントントン」という静かな4連音で始まる。決してお経ではない。その後もたびたびこのリズムの音は出てくる。「運命」の「ジャジャジャジャーン」と同じで、ベートーヴェンは気に入ったリズムがあるとくどいのだ。偏執狂の気があると言っていい。友達には絶対なりたくないタイプである。
曲は少し哀愁を帯びたような旋律が木管楽器に始まり、先のリズムと共に新たな旋律も加わりいったん少し盛り上がる。ロマン的なと形容される、確かに美しい旋律である。ヴァイオリンの独奏が加わってから同じような繰り返しがあり、オーケストラと独奏ヴァイオリンが互いに表になったりバックにまわったり交代しながら進んでいく。
その後、強弱を繰り返し、あの手この手で作曲技法を凝らした部分が長く続いていく。時に激しく時に美しく、作曲者も演奏者も腕の発揮どころって訳だ。ベートーヴェンの偏執狂的性格はここにもよく現れている。
そのうちまた例のリズムが大きくオーケストラに響き(2回目)、2度目の繰り返しがやってくるだろう。何となくクライマックスも近いかなと感じないだろうか?。
正解である。例のリズムが3回目に大きく響いた後、その静まった所が「カデンツァ」と呼ばれる部分。つまりは独奏者最大の見せ場である。カデンツァと言うのは独奏者が文字通り一人で好きに演奏していい部分で、昔は10分も20分も演奏した奴もいたらしい。普通は作曲者自身が書いたものや、有名なその道の大家が書いた譜面を奏することが多い。19世紀半ばから20世紀初頭に活躍したヴァイオリンの大演奏家、「ヨアヒム」や「クライスラー」のものが一般的なようだ。
カデンツァが終わると第1楽章もすぐ終了する。
協奏曲の第2楽章はだいたいどの曲も同じで、静かなものと相場が決まっている。この曲も歴史的にはまだまだ初期のものなので、さすがのベートーヴェンも冒険はしていない。終始静かに推移していく。眠るための条件は満たしているとでも言おうか?。
第3楽章は第2楽章から間を置かず続けて演奏が始まる。独奏ヴァイオリンが跳ねるようなリズムの旋律を弾き出すからすぐそれとわかるだろう。第2楽章と同じく第3楽章も協奏曲の場合同じような曲調となることが多い。「ロンド」と呼ばれる形式で、有名無名を問わずこちらもだいたい似たような感じになる。異なった印象を与える部分が規則に則って何度か繰り返されるというものだ。最後もまたほぼ共通で、元気よく曲を締めくくるというのが一般的。この曲も例外ではなく、古典的と評される場合はこんなところも理由になっているのだろう。
 
推薦盤

ヴァイオリン : アイザック・スターン
バレンボイム指揮ニューヨーク・フィルハーモニック
22DC5532(CBSソニー盤)現在はソニー盤に変わってるはずである。
 
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