ショパン ピアノ・ソナタ 第2番「葬送」 |
〜超有名曲の全曲だって聴いてみたい人に〜 |
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あの、誰でも知ってる「葬送行進曲」を第3楽章に持つ曲である。
しかし第3楽章は葬送行進曲だけではない。そしてこの第二番も葬送行進曲だけの作品ではない。 |
ショパンと言うとどことなく軟弱な印象が強い。日本では一般に「ピアノの詩人」などと呼ぶことが多く、「雨だれ」や「別れの曲」に代表される、いわゆる叙情曲を得意とした作曲家としてのイメージが強いのだろう。病弱なイメージと実際に結核を患っていたという事実がいかにも日本人好みの憂愁を感じさせるようで、特に女性ファンにはモーツァルトと共にクラシック分野のスターの地位を築いた感がある。 |
この第2ソナタは先の「葬送行進曲」があまりにも有名で、TVはもちろん映画やゲームに至るまで、とにかく一度は耳にしたことがあると思う。例の暗く陰鬱な雰囲気の他に、やたらと明るく編曲されたゲームでのファンファーレは、一昔前の懐かしささえ感じさせるものだ。
ただソナタ全体を聴いたことのある人となると、これはもうほとんどクラシックファンに限られているのではないか?。実は先の一般的イメージに反して全曲は大変劇的な性格を持っているのである。数あるショパンの名曲中でもその意味では屈指のものと言っていいだろう。 |
重厚な和音の序奏で始まる第1楽章は、いきなり落ち着きのない急速な旋律(第1主題)から入ってくる。ひとしきりして今度はロマンチックな優しい旋律(第2主題)。どこかで耳にしたことがあるような、そんな懐かしくも美しい音楽である。
やがて展開部と呼ばれる部分が第1主題を中心に進行し、終わりの方で第2主題も復活しながら楽章を閉じる。 |
第2楽章は第1楽章以上に落ち着きがなく始まる。「タタタタタ」という5連音がやたらと耳につき響きわたる様子は、せわしなく背中を叩かれているようで落ち着かないことこの上ないのだ。
中間部はまったく別の音楽のように非常に情緒的で美しい。先の激しい部分との対比はさすがに見事である。
「タタタタタ」が復活して再び落ち着きがなくなった後、最後にちょこっと中間部の旋律も顔を出して静かに終了する。 |
第3楽章こそ件の「葬送行進曲」である。例の「タン・タン・タタン」と静かに始まる。やがて葬送には不釣り合いなほど、にわかに力強さを増した曲は、強力な打鍵で激しく悲劇性を演出していくのである。
その後静まったかと思うと、今度はいかにも天国的なという表現がぴったりの美しい旋律が始まる。この葬送の主人公は天国に行ったんだなと感じさせる部分でもある。葬送行進曲とは別にここだけ抽出して映画やTVのバックで流れることもある。ここでもやはり聞き覚えがあるなと感じるかも知れない。
再び葬送行進曲が戻ってきて、最後は弱まりながら楽章を閉じる。 |
続く第4楽章は特定の旋律がない不思議な楽章で、よく評論家が「葬送後の一陣の風が吹き抜けるがごとく」などと表現する音楽である。実際やたらと早く奏されるわずか1分半程の楽章は、波のようにうねった音の羅列でしかないように思える。先の評論家風の言い方をすれば、終楽章に持ってきたこの「虚無感」がショパンの天才たる所以とのことであろう。確かに言われてみればなるほどと納得させるものがある。あのベートーベンでさえ考え及ばなかったオチということか。 |
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推薦盤
ピアノ : ウラジミール・ホロヴィッツ 1962年録音盤
20世紀最高とも言われるピアノ音楽の巨匠によるスタジオ録音である。老齢による衰えをみせる以前のステレオ録音で、誰が何と言おうとこれがこの曲のベスト盤。青年期のモノラル録音も捨てがたい。
私はレコードしか持ってないが、他の楽曲との組み合わせによる廉価盤CDがソニーより出ているはずである。 |
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