ベルリオーズ 「幻想交響曲」 No.10 981001 |
〜交響曲史上のエポックメーキング曲を聴く〜 |
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名の知れた大作曲家の中にも一発屋がいる。「カルメン」のビゼー、「動物の謝肉祭」のサン=サーンス、そして「幻想交響曲」のベルリオーズである。なぜかフランスと縁が深い。そう言えば「交響曲ニ短調」のフランクもフランス人だ。
もちろんビゼーは私が初めて買ったレコード「アルルの女」も作曲してるし、サン=サーンスはチェロ協奏曲や交響曲でも名を馳せた。ベルリオーズは・・・・・あっあれーーっ??。
「イタリアのハロルド」「キリストの幼時」「レクイエム」、う〜ん、いずれ劣らぬマイナー曲。しかも長い。超マイナー過ぎて却って有名?。 |
中学生の頃の音楽の時間、「交響曲の父」などと教わったハイドンがその枕詞の通り、100曲以上もの作品を残しクラシック音楽に新たなジャンルを開いた。その後およそ200年に亘り星の数ほどの作品を生んだこの分野に、歴史上エポックメーキングとなった曲が幾つかある。この「幻想交響曲」もその一つであり、一般に広く知られたという意味ではベルリオーズ唯一の曲と言っていい。
ちなみにこの曲がエポックなのは、未練がましいナルシストのようなベルリオーズ自身を・・・・・?。いや違う、交響曲に豪華絢爛な色彩感覚を持ち込んだところにある。昔ベートーベンがちょっと試した標題交響曲を見事に仕上げて見せたのである。後世に「交響詩」なる新たな分野が生まれたのも、この曲なしには語れない。 |
第1楽章「夢−情熱」は静かにしかし憂いを含んだ旋律から始まる。やがて静まると舞曲調の導入に続いてヴァイオリンに印象的な旋律が現れる。この旋律は雰囲気を変えながらも全楽章に顔を出し、この曲も「運命」の項で説明した一種の循環形式(正確には固定楽想と言う)をとっているのがわかる。標題が示すよう情熱的に、あるいは激情にまかせて曲が進み、最後は静かに瞑想的に閉じる。
第2楽章「舞踏会」はその名の通りワルツが優雅に繰り広げられる。初演時にはかなり人気を集めた楽章ということで、後のウィンナワルツより情熱的に感じるかもしれない。もっともこの曲で踊るにはちょっと無理がありそうだが。
第3楽章「野の風景」もやはり静かに始まる。しかしどうもベルリオーズという人はナイーブというのか陰に籠もるというのか、いかにも性格丸出しという感じの音楽が続いていくのである。彼も又ベートーベンと同じく友達にはなりたくないタイプなのだ。最後はティンパニによって遠雷の様子が描かれ、次の楽章を暗示させる。
クライマックスとなる第4楽章「断頭台への行進」はまず、「タン・タタタ・タン・タタタ」という静かな、しかしいかにも意味ありげなリズムの下に突然大きく盛り上がりびっくりさせる。不気味な迫力ある葬送行進曲風の音楽が続くとやがて、金管による音が割れんばかりの咆哮が2度繰り返され再び大きく盛り上がる。終了間際に一瞬の回想があった後、断頭台の刃が落ちる瞬間を描写したと言われるクライマックスで楽章を閉じる。
続く第5楽章「ワルプルギス(サバ)の夜の夢」は欧米的なあの世の様子が描かれる。さながら地獄の狂乱といったところで、ムソルグスキーの「禿げ山の一夜」みたいなものである(作曲年代からすると「禿げ山の一夜」の方がずっと後だが)。魑魅魍魎の真っ直中に案内されたかと思うと、突然冥土の鐘が大きく鳴り響く。チューバが「怒りの日」を吹き始めるともうシッチャカメッチャカ。やがてベルリオーズ自身が考案したという弦楽器の弓で弦を叩く奏法(シャカシャカという音)が始まると終わりも近い。全楽器が鳴り響き大きく印象的に曲を閉じる。 |
以上、この曲もやはりある程度音量を上げて楽しまないと面白くないことを付け加えておこう。 |
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推薦盤
ミュンシュ指揮パリ管弦楽団 EMI TOCE−7008 1967年録音
録音以来長くこの曲の決定盤と言われ続ける名盤である。その後数々の指揮者が挑んだが私が聴いた限り個人的には未だこの録音を凌駕するものはない。
ミュンシュの遺作となった一連の録音の一つであり、ホールで聴くようなかなりライブな録音である。自身もっとも得意としていたこの曲でキャリアを終えられたのは不幸中の幸いだったと思いたい。中でも第4・第5楽章の鬼気迫る音楽は、感激屋のベルリオーズが聴いたら感涙にむせたことだろう。
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