バッハ 「ブランデンブルク協奏曲 第五番」  No.12 990101
〜典雅なバロック音楽の代表曲〜
最終更新 2008年 6月21日
 
クラシック音楽の協奏曲は大きく二つの種類に分けることが出来る。
一つは独奏協奏曲と呼ばれるもので、ピアノなりヴァイオリンなりの一人(稀に数人)の奏者がオーケストラを向こうに回し、華麗な名人芸を繰り広げるタイプの曲。これまで紹介したベートーベンのヴァイオリン協奏曲や、チャイコフスキーのピアノ協奏曲はもちろんこのタイプ。特に説明なく協奏曲と言えば普通はこっちの独奏協奏曲を指す。
もう一つは合奏協奏曲と呼ばれるもの。多くはハイドンやモーツァルト登場以前の、主にバロック時代の協奏曲を指している。これは弦楽合奏を中心にある時はヴァイオリン、ある時は管楽器、またある時はチェンバロというふうに、曲中での独奏楽器が必ずしも一つとは限らない。時にはそれらが曲中でコロコロ変わったり、弦楽だけで奏される場合もある。当然「ピアノ協奏曲」、「ヴァイオリン協奏曲」と言うように、特定の楽器が冠楽器として曲名に入らないのが普通。
さて、「ブランデンブルク協奏曲」である。バロック後期の大家ヨハン・セバスチャン・バッハ(J・C・バッハ、または大バッハなどと表記される)の作。これがまたどうしてわざわざフルネームかというと、実はバッハ一族、大変な音楽家量産家系なのである。本項主人公であるヨハン・セバスチャン以降後世に残る何人もの作曲家を輩出していて、その一族バッハさんの中のだれを指しているのかという意味でこのように表記するのが慣例となっている。とは言え、何もことわりなくバッハと呼べば、それはヨハン・セバスチャンのことを指していると思っていい。
話しを戻してこの協奏曲だが、彼としては数少ない管弦楽曲中の一つとなる。当時の音楽家は教会専属というのが普通で、宗教音楽や器楽曲(主にオルガン曲など)は彼もたくさん書いた。しかし管弦楽曲はこの協奏曲の他、数える程度しかないのである。もちろんこの協奏曲が極めつけクラスの名曲には違いなく、上述の分け方をするなら合奏協奏曲の代表曲ということになる。
全6曲からなるブランデンブルク協奏曲は、正確には協奏曲集ということになり、中でも有名なのが三番と五番。前者は弦楽合奏による古今の最高傑作、後者はチェンバロが大いに活躍する曲としてもっとも人気が高い。
これもご多分に漏れず、ドラマでもCMでもたびたび使用されてるとはいつものこと。
「ブランデンブルク」とは正確には、クリスティアン・ルードヴィヒ辺境伯のことを指すらしい。何でもバッハの演奏を聴いた伯爵が非常に気に入り作曲を依頼したとのことで、その返答がこの曲集となった訳である。当然曲は伯爵に捧げられることとなり、その冠名で呼ばれるようになった。だから私に捧げられたものなら(んなこたーねーが)、「Hobby Site 協奏曲」と呼ばれるようになったはずである。
前述のように6曲中もっともポピュラーなのが第五番。特に第1楽章は別名チェンバロ協奏曲と呼ばれるほど、独奏協奏曲のように著しく活躍する。
曲はまずまことに華やかな冒頭から始まり、概ねヴァイオリンとフルートの掛け合いにチェンバロが参加するという形で進行する。この華やかな音楽は楽章中何度も現れ、そのたびに爽快な気分にさせてくれるだろう。最初伴奏していたチェンバロが終了近くに置かれるカデンツァでは主役となり、長大華麗な演奏を繰り広げる様はまさに後の独奏協奏曲のそれを思わせる。ここにはその原型があると言っても言い過ぎではないだろう。最後は華やかな音楽がもう一度再現して終了する。
ヴァイオリンにフルート、そしてチェンバロの活躍と言い、確かに人気が高いのも十分うなづける。
続く第2楽章も、ヴァイオリンとフルートの掛け合いにチェンバロが伴奏するという形で進行する。但し、こちらは全体がもの悲しい雰囲気で、先の華やかさはない。
一転して第3楽章は舞曲風の特徴的なリズムが全体を支配し、華やかさも戻ってくる。
 
推薦盤

カール・リヒター指揮ミュンヘン・バッハ管弦楽団  1963〜80年録音  F38A20054/5  アルヒーフ

バッハ演奏と言えば常に取り上げられる何人かの大家がいる。中でもリヒターはその研究者のトップに君臨する巨匠で、特に声楽曲(宗教音楽)による演奏は非常に名高い。ここでの演奏は中庸なテンポによるリファレンスとなるもの。
 
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