ヴィヴァルディ 「四季」  No.13 990401
〜クラシック界最大のベストヒット曲〜
 
クラシックのレコード史上もっとも日本で売れた、真のベストセラーとして名高いのがこの「四季」である。録音の種類も極めて多く、現在日本で発売されてる盤だけでも40〜50種は下らないだろう。推薦盤として上げた「イ・ムジチ合奏団」の録音など、1974年現在ですでに90万枚のレコードがプレスされたなどと、ライナーノートに書いてある。四半世紀前でこれだから現在までのその他各盤を合わせた販売総数は、軽く数百万枚の大ベストセラーのはずである。この曲の人気にはあの「運命」すら遠く及ばないのだ。
正確には「和声法と創意への試み・ヴァイオリン協奏曲集・作品8」というのがそれで、全体は12曲の協奏曲から出来ている。「四季」はその中の1曲〜4曲目の協奏曲を指してそう呼ばれ、5曲目以降も各々標題がついているので機会があったら聴いてみるのもいいだろう。
作曲者のヴィヴァルディはバッハよりちょっと先輩のイタリア・バロック期の巨匠だが、「もっとも多くの協奏曲を作曲した」ということでも有名である。後年20世紀ロシアの大作曲家ストラヴィンスキーが彼を称して、「同じ協奏曲を500曲も書いたもっとも退屈な作曲家」と評したのは有名な話。実際ヴァイオリン協奏曲だけでも200曲を遙かに越え、確かに似たような協奏曲ばかりよく作ったもんだと思えなくはない。退屈とは言わないが、時には「どこかで聴いたような?」なんていう旋律がよく出てくる。まあもっとも、そこがかえってBGMには最適とも思えるのだが。
とは言え特に「四季」は今世紀半ば以降、「親しみやすくわかりやすい音楽」として、クラシック以外の音楽にも編曲されたりしてまことに有名だった。日本で更に一般的になったのは、NHK朝の連ドラのテーマ音楽に使われてからだと思う。ドラマ名は忘れたがその年の売上がひときわ伸びたであろうことは想像に難くない。
曲は題名通り「春夏秋冬」の四季を模した四つのヴァイオリン協奏曲からなり、一種の組曲となっている。それぞれに情景を解説したソネットも付き、描写音楽の先駆けとも言っていいだろう。
尚、楽器編成は室内楽の範疇に入る小規模なものだが、曲そのものは前回の合奏協奏曲と一般の独奏協奏曲の中間に位置するような性格を持つ。いずれの曲も3楽章構成で、各楽章は概ね「急・緩・急」のリズムをとっている。
クラシック音楽史上ヴィヴァルディが特筆されるべきところは、合奏協奏曲の大家であると同時に、独奏協奏曲のまさに礎となった最初期の功労者である点にあるだろう。
曲の詳細は各々のCDにあるライナーノートに任せるとして、ここではワンポイントというだけにとどめておこう。
第1曲「春」の出だしはCMにもドラマにも引っ張りだこの超有名曲。まして今頃の時期ともなれば、日本中の梅や桜の名所でBGMになっているに違いない。「運命」の「ジャジャジャジャーン」と同じで、「あっ、ここだけは知ってる」となること請け合いである。
第2曲「夏」はいかにもジリジリした暑さの気怠い音楽。蠅の飛び回る様子が面白く表現されている。
第3曲「秋」は第3楽章で狩の様子が描かれる。いかにも狩猟民族のそれが情景描写豊かに奏される。
第4曲「冬」の第2楽章はヴァイオリンによる音楽が極めて美しく有名。バロックの代表音楽として単独でもよく演奏されたりしている。
 
推薦盤

ヴァイオリン独奏 : フェリックス・アーヨ
イ・ムジチ合奏団 1959年録音 フィリップス

「四季」と言えばイ・ムジチ。イ・ムジチと言えば私の場合アーヨとなる。他により録音の新しいミケルッチやカルミレッリの独奏盤もあるが、ここはやはり古典的なアーヨの方がゆったりと音楽に浸ることが出来る。
この盤は四季ブームのさきがけとなったことでも有名。
 
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