ホルスト 「惑星」 No.14 990501 |
〜オーディオ・マニアのために−その2〜 |
最終更新 2006年9月30日 |
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「宇宙戦艦ヤマト」で宿敵ガミラス登場の場面。同時に特徴的な「タタタタ・タ・タタタ」というリズムに乗った管楽器の咆哮。
アニメに限らず映画やドラマに効果音と共に音楽は欠かせない。いかにもそれらしい雰囲気作りを演出していたあの音楽、あれこそホルストが作曲したほとんど唯一と言っていい有名曲「惑星」なのである。彼もまた一発屋であった。 |
曲は地球を除く水・金・火・木・土・天・海の各惑星にちなんだ7曲からなる組曲で、作曲当時占星術に凝っていたという、自身の趣味からインスピレーションを受けての作品のようである。各曲には各々その惑星からイメージする副題も付けられていて、いわゆる標題音楽に近い。もっとも作者が後に曲について語ったところでは、惑星名となったローマ神話の神々の名前とは特に関係ないらしい。
ちなみに前述のガミラス登場音楽は「戦争をもたらすもの」という、いかにもそれらしい副題がつけられた「火星」がその正体であった。他の曲もイメージした副題そのままの、実にピッタリした音楽が凝らされているのは言うまでもない。 |
尚、現在の太陽系の惑星としては他に冥王星が知られているが、作曲当時はまだ発見されておらず、もちろん組曲中にも含まれていないところが時代を感じさせる。
っと、これまで書いてきたが、御存知の通り最近冥王星が惑星から外され、文字通り太陽系の惑星達を代表させた曲となった。作曲者も喜んでることだろう?。そうかなー???
又、曲順が各惑星の並びと一致しないが理由はわからない。個人的には音楽的なメリハリのリズムで決まったような気はするが?。 |
ホルストは今世紀初頭に活躍したイギリスの作曲家である。大作曲家とは言い難いが、中?作曲家くらいの称号は受けてもいいだろう。大学の音楽教師をしながらのウィークエンド作曲家だったらしく、元々はトロンボーン奏者として出発していた。当然金管楽器の扱いに長け、惑星の各曲中でも実に効果的に使われているのが実感できる。音楽的な影響を誰から受けたかは知らないが、この曲を聴く限りではラヴェルがムソルグスキーのピアノ曲を編曲した、「展覧会の絵」に印象が近い。
となるとこれまた当然の事ながら、オーディオ的興味も尽きないのがこの組曲最大の売りともなった。 |
第1曲「火星(戦争をもたらすもの)」は前述のようにまことに勇ましいことこの上ない。火星、つまり「Mars」はローマ神話の戦争の神。本人が神話とは関係ないと言ったって、やはり戦争をイメージさせる音楽となった。大音響によるオーディオ的至福に浸れるのが最大の魅力で、例の「タタタタ・タ・タタタ」というリズムでは思わず足踏みするよう。身体が自然に動き出しそうな感覚に捕らわれるだろう。
第2曲「金星(平和をもたらすもの)」は同じく「Venus」、こちらは愛と美の女神である。曲は当然の如く火星と対照的な、甘美だがどこか物悲しさも秘めた叙情曲となった。私にはあまり平和のイメージは湧かないのだが。
第3曲「水星(翼のある使者)」は軽快で流麗な音楽。オーケストラには珍しい楽器チェレスタ(鉄琴とピアノを合わせたような楽器)の金属音が美しい。
第4曲「木星(快楽をもたらすもの)」はこの組曲の中核をなす有名曲。「Jupiter」つまり太陽神とも言われる神の中の神である。曲はまさにその名の通り、雄大に実に祝祭的な音楽が豪勢に繰り広げられる。中間部の弦楽による壮麗な音楽は以前、テレビ東京系の「木曜洋画劇場」のエンディングテーマに使用されていた。当然木曜と木星をかけたことは想像に難くない。ちなみに2003年末現在では、女性新人歌手の歌うその名も「Jupiter」という曲もヒットしている。そのメロディは前述の壮麗な音楽そのものである。
第5曲「土星(老年をもたらすもの)」はゆったりした沈痛なとも感じられる音楽。後半運命の終焉が近づくかのような不気味な盛り上がりをみせた後、宗教的な最後を向かえて閉じる。
第6曲「天王星(魔術師)」は火星・木星と並び、ホルストのオーケストレーションが冴えをみせる。軽快な、しかし堂々とした音楽がなかなか盛り上がった後突然静かになり、以後はもぞもぞとうごめくように終了する。
第7曲「海王星(神秘をもたらすもの)」はアンプのボリュームをそれまでより上げないと聞こえないような、幻想的な音楽。後半スキャット風の女声合唱まで加わり、文字通り神秘的に曲を閉じる。ところでその女声合唱、神秘と言うよりなんか、ちょっと怖いと思うのは私だけ?。 |
以上、各曲ともあまりにもそれらしくてちょっと安直にさえ思えるから可笑しい。今一つ工夫が?、「これじゃ当たり前過ぎて」とは素人の生意気か?。 |
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推薦盤
レヴァイン指揮シカゴ交響楽団 1989年録音 POCG1063 独グラモフォン(ポリドール)
アメリカ・オペラ界の若き?巨匠レヴァインが、この手をもっとも得意とするであろうシカゴ交響楽団を指揮。大編成オーケストラの力を余すところなく誇示して聴かせる。初演者ボールトの最後の録音も捨てがたいが、やはりこの手はより新しい録音の方が魅力的。 |
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