ピンク・フロイド
最終更新 2005/3/10
 
ピンク・フロイドの曲を知ったのは80年代に入ってからだったと思う。存在は知っていても聴くことのない音楽は多い。それまでピンク・フロイドもその一組にすぎなかった。きっかけはあるオーディオ評論家がオーディオ機器のテスト用に彼らのアルバム、「狂気」を使っているのを知ってからだ。その評論家が言うには特に超低音のテストレコードとして、これに尽きるというような口ぶりであった。それでも何年もの間「ふーん」と思ってただけでそれ以上の興味はなかった。ところがある時、他のレコードを探している時に偶然目にとまり、そのジャケットデザインに惹かれてしまったのだ。
最初は期待するというよりそのうち聴いてみようという程度。そもそも中身を知ってて買った訳じゃなく、実際に聴いたのは2週間くらい経ってからだと記憶している。だいたい初めて聴く曲というのはその期待感が高いほどがっかりするものが多い。頭で描いた期待通りの曲というのは、全体から見れば極めて少ないのが普通だろう。
しかしこのアルバムは違っていた。衝撃であったと言っていい。私の場合他の項でも話しているが、一にメロディ、二にリズム、三にハーモニー、この順序で曲の善し悪し(あくまで自分にとっての)が決まる。「狂気」はそのどれもが高次元でバランスされ、まさに三位一体の感だったのである。
堅い話はこんなとこで、とにかくびっくりした。楽しかった。そりゃそうだろう。だって、音楽的にもオーディオ的にもそれまでこんなの知らなかった。当時クラシック以外に録音の優れたレコードなんて知らなかったし、ロックやポップスはFMから録音すれば十分くらいにしか思っていなかった。最初はだから、オーディオ的に惹かれたと言ってもいい。今でこそ録音は気にしなくなったが、やはり若い頃は音に惹かれちゃうもの。わかるでしょ?
「狂気」の中の曲はどれをとっても素晴らしいのだが、個人的には特に「タイム」と「アス・アンド・ゼム」が気にいっている。メロディとリズムとハーモニー、三位一体とはこのことだと誰もが納得することだろう。聴いたことある人には分かるはず。知らない人は分かってくれ。とにかく聴いて損はない傑作アルバムなのだ。
他に「狂気」の前作「おせっかい」というアルバム中に「エコーズ」という曲がある。25分近い長い曲だがこれも一聴に値する。ポンペイの遺跡で撮られた映画(ビデオ)もあるから、興味が湧いたら是非見てほしい。
最近では「対」の中の最後の曲「運命の鐘」が特筆物。極めて単純な構成の曲だけど、繰り返される旋律にある意味ラヴェルの「ボレロ」に共通する力を感じる。それに何てったって後奏がいい。ギルモアのギターが泣かせてくれます。
ちなみに特定の曲を取り上げたが、この手のアルバムは全体を聴かにゃー意味がない。いわゆるコンセプトアルバムを得意としたピンク・フロイドはその傾向が特に強い。
具体的にどこがいいんだ?と聞かれても困る。だってこの項だけではとても語り尽くせそうにない。
 
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