レッド・ツェッペリン   No.04  980801
 
世に言うハードロックが名実共に形として現れた時、そのもっとも代表的代弁者として登場したのがレッド・ツェッペリンであった。
残念ながら彼らもまた私がリアルタイムで知るには若すぎた。実際は後年、後追いで聴くようになったわけである。しかし当時はもちろん今でも同年代以上の世代にレッド・ツェッペリンを聴くと言うと、多くの反応は「あのうるさい音楽かい?」となる。いや、音楽と言ってくれればいい方で、クラシック愛好者などからすれば単なる雑音以外の何者でもないということになってしまうだろう。物理的な音量だけなら他にもいろんなバンドがあったのだろうが、当時を経験してきた人たちからは「うるさい」とか「やかましい」という形容詞が、彼らの専売特許として現在でも脈々と生きているようなのだ。
まさに衝撃的登場を果たし、瞬く間に世界制覇を成し遂げたスーパーバンドの証左である。
ロック音楽の世界ではすでに古典の部類に入る彼らが、後のロックそして特にバンド音楽に与えた影響は、ビートルズを凌ぐものがあったと言ってもいいだろう。
そんな彼らの音楽もしかし、現在の耳で聴くと決してハードなだけのロックではない。後にヘビ・メタが派生しデス・メタルを経た現在の耳からすれば、むしろ時に心地よい子守歌のように聞こえることさえある。こういう言い方にはお叱りを受けるかもしれないが、まことにメロディアス且つアコースティックなものなのだ。
タイトなリズム、ハードなボーカル。確かにハードロックの教則として理想的ですらあることを認めよう。しかしたとえハードさを基調とした曲であっても、リズム楽器やボーカルだけが洪水となって溢れることはない。
ディープ・パープルがそうであったようにたぶんツェッペリンもまた、クラシックやフォーク音楽の影響を受けていたことはよく指摘される通りなのだろう。
実際、初期アルバムのそこかしこにはアコースティック・ギターの演奏が散りばめられている。これらは有名な「天国への階段」を引き合いに出すまでもなく、生ギターによる弾き語りが実によく似合い、また似合いそうなのだ。当時多くの人々がこれらを聴いて、結果としてなぜ「ハード」なイメージしか残さなかったのか理解しがたいほどである。
尚、バンドの音楽的リーダーはギタリストとしてもお馴染みのジミー・ペイジであり、彼がまだ無名のメンバーを率いて思い通りに作り上げたのがツェッペリンであった。
彼自身優秀なギタリストであったことは言うまでもないが、同時に作曲者として、あるいはバンドのイデオロギー担当者として統率していたことはよく知られている。他に例を探すまでもなく優秀なギタリストはマイバンドを作りたがるもの。ジミー・ペイジにとってのツェッペリンはまさにそれが最良の形で結実したものであり、同時に他メンバーにとっても最高のグラウンドであったに違いない。
 
推薦盤

「レッド・ツェッペリンT」 1968年発表
「レッド・ツェッペリンW」 1971年発表
デビュー作から4作目までのアルバムはバンド名や番号だけで表題がない。
いずれも甲乙付けがたいのだが、「T」は何と言ってもデビュー作独特の覇気があり、以降のアルバムを知る意味でもはずせない。「W」には先の「天国への階段」が含まれる。
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