小柏峠 と 天狗山
最終更新 2007年12月20日
天狗山について
 

小幡から見た通称「南山」の中ほど、甘楽町轟(「とどろく」と読む、とどろきではありません)と藤岡市上日野を結ぶ峠。

一般の地図はもちろん、現在の1/25000地形図上にも記載はなく、別項の地図を参照願いたい。

但し、昔の地形図にはハッキリ破線で示されており、往時の交易路であったことは間違いない。

峠道は下部林道のみ車両通行可能だが、上部は趣たっぷりの山道となり途中天狗山こと白倉神社旧社に寄りながら、

ちょっとしたハイキング気分の山歩きとなる。

峠には2体の石仏があり、どのような交流があったのか往時への興味は尽きない。

地図 はこちら
昔の地形図はこちら
 
コース 轟⇒林道駐車スペース(舗装道終点)⇒桜の広場(菊ガ池分岐)⇒大平(ここより山道)⇒白倉神社分岐⇒白倉神社⇒鳥居清水⇒白倉神社⇒ヤセ尾根⇒無名峠⇒小柏峠⇒杉&檜植林⇒白倉神社分岐⇒大平⇒桜の広場⇒林道
地形図 上野吉井(1/2.5万)
歩行時間 約3時間(舗装道終点に駐車した場合) 但し休憩時間含まず
時期 通年
 
宝積寺入口宝積寺入口
写真中央付近、青い看板の所を左折して宝積寺へ坂道を上っていく。
桜の広場前桜の広場前より林道を振り返る
南山の中腹、山畑を左に見て回り込むと桜や桃が植林された公園状の広場へ着く。
ここで直進すると「菊ガ池」まで2km。小柏峠へは左に上る林道へ入る。ここからの林道は特に道悪となり深い雨裂や轍が走るようになる。
大平の峠道入口(林道終点)大平の峠道入口
右手に竹が見え始めるとすぐ、国有林を示す標識前(中央左の白い標識)に着く。林道はなお左に続くが事実上ここが終点で、峠道入口でもある。
ここからの峠道は標識の右、写真中央付近をまっすぐ上る急坂で、いよいよ山道へと入っていく。
白倉神社分岐白倉神社分岐
山道に入ってわずか2〜3分ほどですぐ分岐着。写真ではちょっと分かりづらいが右上に延びて行くのが峠道。
左は白倉神社まで10分足らず。写真の大きく日の当たった所を左へ入って行けばすぐ支稜の乗越となる。
支稜の乗越支稜の乗越
写真は乗越を振り返った様子。
右が分岐から上ってきた道、左に下ると白倉神社まで2〜3分。中央の尾根を上る道が紹介コースの支稜で、やがてヤセ尾根と変わっていく。
特に危険は無いが峠道と出合うまで多少ヤブ気味で道は細く、ヤセ尾根では一応滑落にも注意のこと。
尚、手前は四等三角点があり、現在天狗山山頂と標識のあるコブに続く。
白倉神社旧社白倉神社旧社
先の乗越からわずか。急坂の下りは滑りやすいので注意のこと。
白倉神社は地元でお天狗山、またはお天狗様として大変有名。30年ほど前にご神体ごと里に下ろされ、現在毎年4月第3日曜のお祭りも里で開かれている。
とは言え、当日はここへ訪れる人も未だいるらしく、社殿自身もよく保存されている。現在のような中高年登山ブームとなり群馬百名山に指定されたとなれば、昔みたいにこちらでの祭復活も望みたいところなのだが・・・・?
尚、社殿は下↓のように巨岩上に建つ。
巨岩上の社殿神社境内
鳥居清水鳥居清水
神社から杉古木の尾根を白倉側へ下ると、昔の詰め所?小屋前を通り数分で鳥居清水がある。
清水は年中枯れることなく、夏など豪快な水量を誇ることもあり水場として重宝する存在。直下の旧道沿いには朱塗りの鳥居↓もある。
旧道より鳥居
支稜付近の峠道支稜付近の峠道
神社より乗越に戻り、ヤセ尾根と変わる支稜を登る。やがて分厚い落ち葉を踏む広い尾根道に変わると間もなく、写真の左側から飛び出し峠道と合流する。
この付近いくつかの道が錯綜しているが、尾根を外さなければ問題ない。支稜を越える峠道はU字形の切り通し状で、往時の往来を感じさせる。
小柏峠・無名峠分岐小柏峠・無名峠分岐
支稜を時計回りに回り込み倒木を潜ると分岐に着く。
右に倒木の見える道が無名峠への道。やや分かりにくいが直進して左に回り込むのが小柏峠への道である。
付近は季節によって膝まで埋まる、ふっかふかの落ち葉が積もる。
峠往復だけでは芸がないので、ここでは右の無名峠への道へ進む。
無名峠への道無名峠への道
大変よく手入れされた無名峠への道。
夏でもヤブの心配はなく、昔は里からもこの道がよく見えた。さすがに今は樹林が育ち里からはそれと判別出来ないが、趣ある快適な山歩きが楽しめるだろう。
昔は植林のための作業道として開いた林道だったのかも知れない。
無名峠無名峠
南山の尾根が近くなると、最後にS字状に曲がって無名峠に着く。
ここまで道が立派なら峠も分かりやすい。いわゆる石仏などの類はなく、営林署の標識があるくらいだが雰囲気はなかなか良いものがある。
無名峠より小柏峠への道無名峠より小柏峠への尾根道
南山稜線の日野側は檜植林が続き、甘楽側は広葉樹林。
峠より日野側に檜植林中を進めば、木の間越しに御荷鉾山が大きく目にはいる。もう数年で植林が育ち、今しか見えない展望となるだろう。尚、峠から日野側に下る目だった道はない。
手前は熊倉山へ続く尾根道(熊倉山までヤブ道を往復1時間程度)。写真の尾根道を東に進めば途中コブを一つ越えてすぐ小柏峠である。
小柏峠小柏峠
無名峠から10分足らずの尾根道ですぐ小柏峠着。写真では日の当たっている斜面から降りてくることになる。
峠には石仏が一体、写真左の日野側10mほどの所にもう一体ある。
御荷鉾山展望御荷鉾山の展望と石仏
峠より日野側にわずかに下ると、7〜8年生くらいの檜植林の間から御荷鉾山が見える。こちらも無名峠の檜と同じ時期に植林されたものと思われ、やはりもう何年かで展望は無くなるだろう。
尚、下↓は左が峠の石仏、右が日野側にある石仏。
日野側の石仏には「明治九年三月十八日」の日付が掘られている。峠の石仏は傷み具合から更に古い江戸時代のものと思われる。
石仏1  石仏2
甘楽側直下の峠道甘楽側直下の峠道
峠から無名峠分岐までの間はこれまでの道に比べややヤブ気味である。道自身も日野側の道ほどはっきりせず、先の分岐まで夏は多少灌木がかぶり気味になるかも知れない。
道には鹿などの足跡がいっぱい。そりゃー動物だってヤブよりは道の方が歩きやすいってもんだ。
堀状の峠道堀状の峠道
往路の支稜を横断し本来の峠道を下っていく。
道ははっきりしておりヤブの心配もない。小さな尾根を乗越ような所では、写真のようにS字状に掘られた道が往時を忍ばせる。
尚、ところどころ枝道もあるが、より明瞭な方へ道なりに進めばやがて下↓写真のように緩やかになる。薄暗い檜と杉の混交林の道となれば、白倉神社分岐までもうわずかである。
峠道1  峠道2
 
 
こぼれ話

大昔、初めて無名峠で南山の尾根上に立った時、甘楽側も日野側も足下まで見下ろせる抜群の展望に感動した記憶がある。当時は植林直後で、無名峠や小柏峠はもちろん、上の峠道写真に見られる檜や杉はその頃のものと思われる。小柏峠の存在を知ったのはやや遅れてからであったが、当時の写真を下に示しておこう。
初め何の標識もなかったこの峠に、十数年ほど前から誰が書いたか手書きの標識が立てられその名前を知るところとなった。下の写真当時(1975年)はまだ名前すら知らなかった頃である。写真中央の石仏は今とほぼ変わらない位置にある。

尚、かく言う私も日野側には下ったこともないのだが、峠付近を見る限り道は甘楽側以上にしっかりしているように思われる。とは言え里から里まで歩いて往復となると丸1日行程となりそう。昔の人の足腰の強さには感嘆である。

1975年の小柏峠1975年4月末頃の小柏峠
写真では道の存在がよく分からないが、当時から見た目以上にしっかりしていた。写真のアングルは現在の様子を撮った既出の峠写真とほぼ同じ。石仏もちゃんと同じ位置にある。
古いネガからのスキャニングで色合いがちょっとおかしい。
 
 
天狗山について 
最近、「群馬百名山」として甘楽町からは唯一「天狗山」が選定された。
甘楽町では一般に稲含山(こちらも選定済み)がその後方に聳える盟主として有名なのだが、残念ながら山頂は下仁田町に属している。
その意味で山頂まで含めた甘楽町の山としては天狗山が唯一となるのである。

ところがその天狗山、実はその固有名詞をもつ山頂が付近にある訳ではない。
地元で言う天狗山とは前述のように白倉神社旧社の俗称で、その境内を含む付近一帯を指して「お天狗山」または「お天狗様」などと呼ばれている。

数年前、四等三角点のある旧社西方稜線上の小高いコブに、誰が付けたか(公か個人か不明)天狗山の山名標識が設置された。
それが最近では、町が設置したと思われるしっかりした山名標識と替わっている。
休憩にはちょうど良い明るい山頂は好ましく、今後天狗山山頂として一般化するのだろう。
しかし、本来天狗山とは天狗を祭る白倉神社旧社の名であり、この名を持つ山頂など無いのは上述の通り。とは言え、百名山としてそれでは困るから、便宜的に選定された山頂であることを今のうちに指摘しておこう。
コブの山頂  四等三角点
明るいコブの山頂(左)と近くの四等三角点(右)
 

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