西上州の山  991001  No.31
( 季節表現等初回アップのままですのでリアルタイムとは若干矛盾する個所があります。ご了承下さい )
 
最終更新 2015年 3月30日
 
天野 「地元西上州の山はこれから12月半ばくらいまでがベストシーズン。特に晩秋は西上州の山が一番西上州らしい衣をまとう季節。今回はシーズン・インを向かえて、まあ、ちょっと語っちゃおうかなあ。」
記者 「満を持してってやつでしょうか?」
天野 「まあね。考えようによっちゃー一番小さい頃から親しんでるからな。
まず地形的に西上州は西と南がそれぞれ、1200〜2000m級の山々に囲まれたL字のようにあるいはレ(チェック)印のように北東に開いた地形。だから他の項でもちょっと触れたように雨災害が少ない。承知のように多くの場合西や南から天気は変わってくる訳だけど、西上州の更に西には八ヶ岳や中部山岳などもっとずっと高い山々が多い。南だって奥秩父の山々が幾重にも。だからその山々に遮られちゃってこの辺に来る頃にはいつもピーク過ぎ。
理屈の上では関東南岸に低気圧がある時、北東風が吹いて雨が降りやすくなる。でも西上州の北東って海が無いもんね。むしろ三国山脈、日光連山、足尾山塊と2000m級の山々に囲まれちゃって、そもそも群馬県全体の地形からして(谷筋、山風など局地的な例外を除き)北東風なんてまず吹くことがない。たとえ鹿島灘などから湿った空気が入ってきたって、100kmも走って西上州に届くまでには弱まっちゃう。
東京が台風で大荒れの時こちらは晴れてました、なんて全然珍しくない。風は吹かず雨はパラパラで、何かあったの? なんてことが多いんだよね。」
記者 「何かわかったようなわからないような?」
天野 「まあ、現地に行って見りゃわかるさ。
だいたい南牧村なんて初めて行ったら驚くよ。数十mもの垂直の崖を背負って平気で民家が建ち並んでんだから。よく崩れねえなあと思うけど俺が生まれてこの方、裏山が崩れて民家が下敷きになったって話は聞いたことがない。沢沿いの増水から多少水を被ったって話が何年かに1度あるかないかくらい。地盤の丈夫さ(石灰岩質の秩父古生層と新第三紀層)もさることながら、やっぱり豪雨が少ないからだと思う。
妙義山麓を大きく迂回して軽井沢に抜けるR18の「碓氷バイパス」は、1日の降雨量が150mmになると通行止めになる。ところが実際に通行止めとなることは数年に1度あるかないかくらい。展望のいい山頂や峠から付近の山々を見渡しても、崩れたような跡はあまり見つけられないだろう。けっきょく雨は普通に降るけど大雨は滅多にないってことの証明だよね。」
記者 「あれ?、でも2007年の台風の時はずいぶんニュースになったじゃないですか。南牧の沢が氾濫して陸の孤島だなんて。」
天野 「ああ、あの時は凄かったね。西上州各地で観測史上最高の雨量を記録したからね。でもあの時だって崩れたりしたのはみんな人工的に山肌をえぐられちゃった林道とか、普段ほとんど水の流れない小さな沢とかばかり。人の自然操作が原因だったり、涸れ沢にいきなり鉄砲水が流れ出しちゃったって感じ。八倉峠やホーロク峠で地盤が緩んでの大規模な地滑りはあったけど、それでも人家付近の山肌が崩れたってのは今回も聞かなかった。
むしろ西上州の山、特に妙義の沢などで気を付けなくちゃならないのは、雨の量もさることながらそれ以上に増水の早さが問題。妙義は知っての通り岩山だから沢の増水が異常に早い。どこの沢も上部はみんなトヨ状で岩盤剥き出しのルンゼとなってるから、降った雨が全然しみ込まず全部沢に、それも一気に集まっちゃう。屋根に降った雨がいっせいにトヨに集まる様子を思い浮かべればいい。だから雨が予想される場合、たとえ少量でも絶対に沢床でキャンプしちゃダメ。ここは夕立&雷多発地帯でもある訳だけど、そんな短時間でも集中的な豪雨の際はものの10分と経たずに大増水ってこともありうる。」
(注記2、注記3参照)
記者 「はい、そうですね。ああいう山は確かにそんな感じなんでしょうね。僕らが配信する自然災害のニュースってのも県内ではほとんどないですね。天気予報で近隣都県ではそろって警報が出てるのに、群馬だけは注意報だったりノーマークだったり。」
天野 「何もない訳じゃないけど、人が命を落とすような自然災害ってのは極めて希なことは確かだよね。ほんとに群馬県全体を見渡しても、その手の災害の少なさでは全国トップなんじゃないかなあ。
地震だって群馬・栃木、茨城、埼玉、千葉の集まる県境部付近を震源として年に数回必ずあるけど、そうやって常にエネルギーが開放されてるから大きな揺れが起きない。実際「茨城県南西部付近を震源とする・・・・」、って言うのが関東では地震の常套句となってるよね。俺がここで経験した範囲では震度3までが天だった。中越地震の時に高崎で震度5なんて言われたけど、甘楽ではやはり3程度まで。東日本大震災の時はたまたま東京出張中でまともに揺れを経験しさすがに西上州も心配になったけど、幸い被害は軽微でそれよりその後の停電の方が困った。
まあ、夕立とかたまの豪雨はあっても局地的で短時間。台風に直撃されても最盛期過ぎ、平野部では雪も少ない。初夏から夏にかけゴルファーが雷に打たれた何てのは時々あるけど・・・・^^;」
記者 「ああ、はい。群馬県人はみんな怖さ知ってるから雷が聞こえだしたら逃げるのも早いけど、大概東京とかからやってきたゴルファーが被害に遭っちゃったりします。」
天野 「とにかくそんな山々だから山並みがきれいなことではけっこうなもんだと思うよ。西上州の表玄関「稲含山」から見る山々なんて、地元にいながらほれぼれするよねー。それに西上州は岩峰の多さでも知られるから、特に岩や松と新緑や紅葉の対比は見事だよね。妙義山なんか紅葉の名所として日本三景(小豆島の寒霞渓・大分の耶馬渓と共に正確には三奇勝)に選ばれてるわけだし。」
記者 「そうですねえ。地元にいると「へえー、妙義がねえ」って思っちゃいますけど、確かに時期と天候さえよければなかなかですからね。
それで交通機関って言うか、アシはどうでしょう?」
天野 「まあ、これははっきり言って妙義以外は事実上車(マイカー、レンタカー等)しかない。」
記者 「ですよね。やっぱり。」
天野 「最寄りは高速なら関越道/本庄から上信越道/軽井沢までの各インター。西上州の中心となる南牧村なら下仁田ICからR254に出て、市街地から左へ県道に入る。街を通らないショートカットもいい道が出来てるけど、ちょっと説明しづらいからナビとか見てもらえれば分かるだろう。上野村なら関越道本庄ICからR462か藤岡ICからだけど、秩父からR299でもいいのかな?
もっとも、上野村奥地に向かうなら南牧と上野を結ぶ立派なトンネルが出来たから、時間的にも距離的にも下仁田から回ったほうが早いし便利。あのトンネルって規模からして広域道路クラスになるんだと思うけど、御巣鷹の尾根へのアクセス短縮やこれも最近できた上野ダムへの資材搬入のためとかもあるのかな? こんな所に何で?ってくらいの山中にいきなり3kmものトンネルだからねー・・・・前後の接続道路は必ずしも広いところばかりじゃないからちょっとびっくり!
ついでに、碓氷峠から南の上信県境で、車の通れる9峠(注記4参照)はすべて完全舗装済み。わずかな間に9つも峠があること自体びっくりしちゃうけど、2輪や徒歩でしか通れない峠を入れると名のある峠だけでも15以上有る。マジでびっくり。
問題は車の場合だけど、現地でのコース設定をよくよく考えた方がいい。ホントは縦断したいような峠コースや縦走コースがいっぱいあるんだけど、どうしても車まで戻ってこなくちゃならない。だから大概往復や周回コースになりがち。車に積めるようなちっちゃい原付やチャリでもあれば、たとえば標高が高い方の登山口にデポしておくとか工夫次第かも? この辺はその気になったら地形図でよく確かめてトライしてみてもいいだろう。一応盗難とか悪戯の話しなどあまり聞かなかったけど、さすがに最近はどうなのかなーと必ずしも安心できない。可能なら付近の住居の人に話して庭に置いてもらうとか考えてほしいね。」
記者 「駐車は大丈夫なんですか?」
天野 「うん、それも大概問題ないな。多くは10台20台って訳にゃいかないけど、数台程度ならほとんどの登山口で問題ないだろう。ただ場所によっては路上駐車となるところもあるので、付近の民家や他の車(工事用の大型車両にも注意)の通行には絶対に邪魔とならないよう注意すること。間違っても畑の入口や物置の近く、ブラインドカーブの途中などに止めちゃいけない。」
記者 「まさか駐車違反で捕まっちゃったりとか?」
天野 「たとえば今言った畑の入口や通行の邪魔とかで通報されれば、そんなこともあるかもしれない。普通は駐車スペースがあるから周りに迷惑とならないよう注意して止めておけば、もちろん保証は出来ないけど問題となることは少ないだろう。
注意って言えばむしろ、行き止まりの駐車スペースでは必ず1台分の旋回スペースを確保しておくこと。そのスペースが空かないようなら無理せずに別の場所を探す。時々他の車を通せんぼするように止める奴がいて「こいつなに考えてんだ?」って思うことはある。同行者でもない車の出入りはちゃんと出来るようにしておく。そんなの常識だと思うんだけど、時にはその常識の通じない奴が居る。そんなジコチューの多くが他所から来たいい歳した大人と来てるからたちが悪い。地元の人からは必ずしも歓迎ばかりでなく、そう思われてるところもありますよと言いたい。」
記者 「手厳しい、まあ当然ですか。」
天野 「これも常識だけど、行き止まりと思われる林道を入っていく場合、轍が怪しくなったり路面の岩や石が剥き出しに雨裂状に洗われたり、更にはぬかるんできたりとかしたら、無理をせず旋回可能な所まで戻ること。理由は言うまでもねえな。そんな所に付いてる轍はほとんどが作業用の軽トラ四駆や林業車両のものだから、普通の乗用車やRV車は幅だって合わないし入るべきじゃない。奥がどうなっているのか知っていればまだいいけど、山仕事の対向車だって来ないとは限らない。そもそも本来すれ違い不能な道が続くようになったらそれ以上入るべきじゃないし、それでも入るなら細いくねくねダートを数百mくらいは問題なくバック出来る運転技術が必要。
某自動車大手のCMで山中の深い轍のぬかるんだ急坂を、四駆で駆け上がっていくなんてのがあった。砂浜の波打ち際を走ったり、ゴロゴロの岩を乗り越えて走ったり、似たようCMは他の大手でもある。そんなアホCMを真に受けるバカだっている訳で、RV四駆と言えばそんなことをウリにしたがる短絡的思考には呆れかえる。ただでさえ四駆による山や川への無理な乗り入れが後を絶たず、時にはゴミ捨てや違法行為による環境破壊が方々で問題視されてる時に、いったい売る側が何考えてんだか。走破性を示したいならもっと他の方法考えろってんだ。同じ会社が誇らしげに環境に優しいなんて低公害車を売ってんだからまったく笑わせる。RV四駆と言えばそれしかウリを思いつかない広告代理店も間抜けなら、そんなCMに平気でOKを出す自動車会社も呆れ返っちゃうよ。いったい誰がOK出してんだってな。誇らしげに環境対策を発表する社長は何考えてんだ?ってさー。だいたいこんな場合、実際の社長はそんなCMの存在すら知らなかったりしてな。
けっきょく「環境に配慮しました」なんて言いながらあんなCM垂れ流してさー。いくら偉そうなこと言ったってみんなウケ狙いのジェスチャーだって見え見えじゃん。それが話題になってマスコミ賑わすからやってんだろ。(話題を提供すること自体否定はしないが)そう言われたくなかったら、テメーんとこのCMくらいチェックしろってんだ。
よく食品とかでもやたらと開けづらいパッケージとかプルトップとかあるじゃん。ジュースやドレッシングなんか勢い余ってこぼしちゃったりしてさー。アレも社長や重役はさー、絶対自分で開けたことないよな。いつも開けられた状態や盛りつけられた自社品出されて、「どうですか?」なんて取り巻きに聞かれるんだよ。実際の市場でどういうパッキングされてるかなんて知らないんだ。自分で開けたことないからそれがいかに開けづらいかなんて全然知らない。それで我が社の商品は大きなシェアを確保し・・・・なんて奢ったアホ社長の典型だよね。知っててそれでいい(当然コスト絡みだろうが)と思ってるなら、そんな企業は我々消費者からねがい下げだ。」
記者 「う、うん! 話が逸れました。」
天野 「すみません。」
記者 「ところで山小屋やトイレはありますか?」
天野 「ごく限られた山(諏訪山(上野村)・毛無岩など)に避難小屋や作業小屋はある。但し、あくまで緊急避難的使用が限度。整備状況なんて想像に難くないし最初からあてにすべき小屋ではない。事実上無いに等しいだろう。妙義山や荒船山周辺みたいにそれなりの有名山なら、夜露しのぎくらいの東屋(あづまや)や神社はけっこうあるけどね。
あとは、妙義山塊や一部の岩山に岩小屋ならいっぱいある。俺が実際に使ったり知ってるだけでも数十カ所は楽々ある。快適な所、湿った所、傾斜地、色々あるけどこれもやっぱり緊急避難的。初めからアテにするには無理がある。まあ、知ってればいざって時のビバーク程度にはって感じかな?
トイレもそう言うある程度名の知れた山岳とか、ダムや自然公園など公共施設のある近くなら観光客用として用意されてる所もある。最近は登山者も多くなり主だった登山口付近に仮設トイレが設けられてることもあるけど、季節により冬季閉鎖とかあるので万全ではない。もちろん、山中ではまず無いと言っていいから、特に女性はコーヒーとかお茶とか利尿作用のある飲料は避けた方が賢明だろう。」
記者 「装備なんかはどうなんですか?。何か西上州に欠かせない物なんてあるんですか?。」
天野 「ああ、そうね。
低山だから特殊なものはないなあ。靴は防水性に問題なければ四季を通じて軽登山靴でOK。沢コースでも普通は靴のまま。○○川と名の付く本流でもなけりゃ、わらじや沢靴履いて遡行したり靴を脱いだりして徒渉することは希だろう。軍手は使わない分でも必ず携行する。俺は夏の間登山はしないので断定的には言えないけど、当然そう言う時期にはダニの類、ハチやアブだっているだろうね。時々スズメバチなどは巣を見かけることも確か。まあ万能薬の軟膏なんかはあった方がいいかな。特に妙義周辺ならヤマヒルに注意。一部の沢筋など名所的なところもある。もし、たかられたら退治するのにライターか塩が効果的。」
記者 「害虫かあ。じゃ、熊とかマムシとかは?」
天野 「それは間違いなく、って言うか意外に近くにいると思っていい。熊に関して言えば過去数回見ているし、ちょっと一般の登山道から外れると足跡や大量の糞はよく見かける。10数年前、妙義や稲含の山中で立木に付けられたクッキリした爪痕を見たときはびっくりした。思わず付近を見渡しちゃったよ。実際最近は様々な山で普通にそれらを見つけるし、直径30〜40cmくらいの木なら熊って普通に登っちゃうんだってあらためて認識した。山中に限らず人家近くでも「熊出没注意」の看板はやたら多くなった。
最近、登山者ではないけど山菜採りの人が襲われたという話も聞いた。一般登山者は普通、迷ったのでなければ道から外れることなどそう多くは無いと思うけど、山菜採りだと道に関係なく入り込んじゃうから当然遭遇の危険性ははるかに高いよな。
加えて登山者数が急激に増えてる最近は、食べかけの生ものや菓子類を平気で捨ててくるおバカな登山者も増えた。だから登山者だって今後の保証はまったくない。そういう餌付け行為が熊と人間の距離を縮ませることに気づいてくれりゃいいけど、そもそもそういう奴って想像力に乏しいジコチューだから何も考えちゃいないんだろうな。たとえ気づいていても自分にとっては1度しか登らない山で、キャリアの中の1山岳でしかないんだろう。残念ながら近い将来登山者を巻き込む事故の起こる可能性は極めて高い。人家付近や一般道(登山道)まで熊が出没するようになるのも時間の問題。」
100907追記参照注記1参照
他に猿はもちろん、イノシシや鹿も目撃するけど、まあ、子持ちでなければ危険は少ないだろう。
記者 「なんか怖いなあ。そんな緊急の場合ならケイタイは通じますか?」
天野 「尾根筋や山頂付近なら通じるところも多い。たとえばNTTドコモであれば、妙義山や烏帽子岳(南牧村)、稲含山(甘楽町&下仁田町)などで確認済み。他の携帯メーカーも最近は以前のドコモ並にエリアが広がってきたように感じてはいる。単独行のように万が一を考えるなら尾根筋限定とはいえ多少は心強いだろう。
ホントは小出力でもいいから一般の無線機があるといいんだけどね。ケイタイは電波状況が悪く音声通信が厳しいとなると強制的に切られちゃってどうにもならない。でも無線機なら微弱電波でもアマチュア無線に拾われたり、途切れ途切れの状況でもなんとか通信できたりする可能性が高い。基地局とか関係なくとにかく電波は出ているからね。
他に、ヤブが予想されるなら大きめのフォールディングナイフくらい持って行った方がいい。最近はナイフの所持もうるさいけど、一応登山目的でそれなりの範囲の大きさなら携帯して問題となることはないだろう。実際に使うことは少ないだろうし、やたら使われても困るけど、それで安心出来るなら持っていっていい。まあヤブと言っても大概は腕力だけで大丈夫なんだけどね。
それとさっきも話しに出たダニの類だけど、被害が出やすいと思われる夏の時期に登山しヤブとか予想されるなら当然それなりの覚悟と準備はしていった方がいい。以前と比べ秋から春にかけても最近はマダニの類をよく見かけるようになった。その時期に被害にあったことはないけど、単に繁殖期でないからというだけかも知れない。
地図は当たり前だけど2.5万図が必須。岩稜が複雑に交錯するような地形も多いので、磁石共々しっかり使えること。地図にはない岩峰やコブが無数にあることも知っていてほしい。俺も使ってるけど高度計の付いた時計なんか持ってると便利。最近はGPSとか、いざって時には地図と照らし合わせればそれなりに参考にはなるだろう。ただ正直言って、いずれも経験とノウハウを持ってないと実際の山中では難しいんだけどね〜。
ついでに冬の雪は山中で多くて膝くらいまで。上信県境の山は多少他より多めだけど、それでも吹き溜まりで腰(1m)くらいまでが天だろう。ちなみに雪崩が起きたって話は聞いたことない。上信県境や上野村の奥地以外、普通のロングスパッツくらい用意して行けば間に合っちゃうと思う。妙義山など一部岩を含むコースを除けばアイゼンも出番は少ない。心配なら軽アイゼンくらい用意していってもいい。藪山なのでピッケルもストックもスノーシューの類も無用の長物。まあ、長い林道歩きがあったり、神津牧場周辺とか荒船の頂稜とかならスノーシューもアリだけどね。他に一部の沢では名所的な氷瀑コースもあるので、クライマーならちょっと興味かも。
そんな冬の西上州で言えばちょっとマイナーな山の尾根道が楽しい。足跡一つない雪道を歩くのはなかなか愉快だし、ラッセルってほど深くはないから体力的にも問題は少ない。冬型気圧配置が特に強まった日でもなければ大概天気は安定しているし、その頃の西上州はシーズンとは違った魅力があるよね。」
記者 「なるほどねえ。」
天野 「いずれにしろ特別な装備ってえのはないな〜。装備そのものより害虫や動植物への対応も含め、何より「慣れ」の方が問題だね。最近でこそそれなりの有名山岳にはずいぶん標識類も多くなったけど、それでも丹沢やアルプスのように常に整備されてる訳じゃない。ほとんどは付けっぱなしの放置状態。山仕事の作業道が入り乱れている所も多い。よくある赤テープなどの目印も盲目的に信用するのは危険。俺の経験からしても先行者が必ずしも正しいコースをとってるとは限らない。むしろその種のマーキングが敗退を考えて(戻る時のため)付けることが多く、そんな時でも戻りながらマーキングを回収してくるような奇特な登山者はまずいないだろうと認識すべき。
当然のように廃道となった道や先行者が間違いに気づいて戻ってきたりして、それがあまりに多いもんだからはっきりした踏跡となって残っちゃってる。特に妙義周辺ではそんなところがやたらと多い。アレッ?って思ったら引き返す勇気が必要だし、それを感じる能力も大事。かく言う俺も表妙義の縦走で何度行っても同じところで間違ってたことがあった。それも決まって数歩通り過ぎてアレッ?て感じ。実際は下ってからすぐ右手に登り返す所なんだけど、足元を見てると実に上手い具合にそのまま下って行く踏跡があるんだよね。普通に周囲を見てれば道標もあったりしてなんてことないのに、多少岩のある所でもあり足下ばかり見てるとついつい誘導されちゃう。あそこ、しばらく行ってないけど、今はどうなってるのかな〜。昔と違って今はだいぶ親切というか、余計なお世話と思うところも多いから、トラロープとかで塞がれてるかもしれないな。
たとえガイドなどで「良く踏まれた道」なんていう記述があっても、それには「西上州では」という枕詞が付く。それらは一般の山なら廃道や踏跡と表現されるレベルと思っていい。晩秋には落ち葉で道が消える場所もある。木々の重なりやかすかな痕跡からルートを探すなんてこともあるかもしれない。技術的な困難度はそれほど高くなくてもヤブ山で見通しが利かない分とにかく迷う、あるいは迷いやすいという意味では中部山岳などまったく問題としない。こちらの方が遙かに難しい山域だと思ってほしい。」
記者 「何かホント難しそうですねえ。」
天野 「その難しそうなところに楽しさを感じるようになったら、それを称して「慣れ」って言うわけよ。」
記者 「上手いなあ。」
 


 
下記工事状況、整備状況等は当ページで告知後も天候状況、管理者の予算等で刻々と変わります。
あくまでご参考としていただき、詳しくは地元自治体等へお問い合せ願います。
 
2014年2月豪雪について 
2014年2月8日及び2月14〜15日、西上州ではこれまでの観測記録を遙かに上回る歴史的な大雪となりました。特に後者については多くのニュースでも伝えられますよう「豪雪」と呼称していい大雪となり、2007年の台風9号以上となる爪痕を残すことになってしまったようです。
これまで当地において大雪として筆者の記憶に残るのは2回、いずれも40cm前後の積雪でした。それが今回は当家の庭で8日に約40cm、15日朝は80cm超の積雪を実測しています。日陰では8日の雪がまだ30cmほど残った上に80cm超ですから、あわせて軽く1m超!筆者の胸近くまでありました。それも平地での話しですので、これが山岳部なら1.5m前後の大雪になっていたと思われます。いわゆる雪国と違いまったく想定外の大雪でしたので、特に西上州の山に多い杉や檜の植林は大変なダメージを受けた模様です。おびただしい量の杉が折れあるいは倒木となり、現在でも至る所でほとんど手つかずのまま林道や登山道をふさいでいます。幸い葉の落ちた広葉樹に大きな被害はなさそうですが、針葉樹にとってはさすがに限度を超えていたのでしょう。
平地から見る山々はそろそろ桜のほころぶこの時期でさえ例年になく白く、現在でも多くの残雪の残っていることが伺えます。新緑やツツジの頃となるGWまでまだ1ヶ月ほど時間はあるものの、それら山林や林道の整備・復旧がどこまで進められるのかまったく分かりません。予算と人手と優先順位からすれば当然それらが後回しとなるのもやむを得ないでしょう。
とりあえず人家のある場所までは問題ないとして、その先登山口まで距離がある場合のアクセス状況や、ルート中に植林地が含まれる場合、それら個々の状況はまったく分かりません。この春、あるいは数年単位で西上州の山々へ計画の皆さん、あらかじめ地元自治体等へのお問い合わせや情報収集を強くお勧め致します。
 
2011年 7月25日追記 東日本大震災について

遅ればせながらですが ^^;^^; 東日本大震災後の西上州の山は?
筆者が確認した範囲、または聞いた範囲において致命傷と呼べるほどの登山道や山体の崩壊・崩落はなかったようです。子供の頃から大地震が起きたらヤバいな!っと、見上げた人なら誰でも思うであろう裏妙義の丁須の頭も無事残っています。交通網もほぼ無傷で問題ありません。
但し、パッと見は変わりありませんが、たとえば妙義のような不安定な岩山では新たに入ったクラックなども少なからずあるでしょう。それらに染み込む雨水や冬季の凍結などの影響までは分かりません。春先の林道などやたらと多い落石に驚くことがありますが、それらは凍結後の緩みによって崩れ落ちることが多いと言われています。そのような岩山では当然震災前より崩れやすくなってる個所もあることでしょう。それでなくても風化により脆くなっている場所も普通にありますから、梅雨や台風の雨と冬の凍結を数回経験するまで何とも言えません。少なくても向こう数年間、ある程度落ち着くまでは十分お気を付けください。
 
2010年 9月 7日追記

妙義山で登山者が熊に襲われ怪我をするという事件が発生しました。
NHK等いくつかのメディアで伝えられていますが、9月5日朝、丁須の頭へ登る鍵沢コースの登山口付近で子連れの母熊に登山者が襲われたとのことです。筆者自身他の項でも再三伝えていますように熊の痕跡や目撃例は数々ありますが、知る限り登山者が襲われたのは稀なケースと思われます。妙義の一般ルート内ではおそらく初めての事例ではないでしょうか?
入山早々子熊に出くわした登山者が、近くにいた母熊に襲われたという不運だったようです。今回のような事例では効果もやや疑問かもしれませんが、鳴り物などの用意を怠りなく山に入って下さい。登山口から5分程度の場所と伝えられ、すぐ助けを求められただけでもご当人にとっては不幸中の幸いでした。
 
2010年7月20日追記

御荷鉾スーパー林道塩沢峠以東鬼石まで車両通行可能ですが、多くの個所で大雨後の落石、砂利、山砂、枯れ木の流出があり注意が必要です。特にバイクでは滑りやすく、水流跡に沿ってコケの浮いているところもあります。スリップによる転倒に気をつけてください。
 
2010年5月17日追記
注記4

北から、碓氷峠、入山峠(R18碓氷バイパス)、上信越道軽井沢IC連絡道、和美峠、内山峠、田口峠、大上峠、十石峠、ぶどう峠の9個所。他に車道としては神津牧場周辺に無名の峠が2〜3個所と、車で越えるのは無理だけど余地峠などもある。徒歩では矢ヶ崎峠、矢川峠、星尾峠、矢沢峠、栂峠、三国峠の他、無名の峠多数。これら徒歩の峠道は大部分が廃道の山道であり、誰でも簡単に歩けるという訳じゃないので念のため。
上信県境は太平洋側と日本海側を分ける脊梁山脈であり、概ね高原状の信州側に対し上州側は深い谷が複雑に入り込む急傾斜となっている。碓氷峠、和美峠、内山峠など抜けるとその違いが良く分かるだろう。
 
2008年 5月18日追記

御荷鉾スーパー林道塩沢峠より東側の鬼石までは所々斜面の崩落や落石、最大10cm程度の路面段差や凸凹、砂浮きなどあるものの車・バイクとも通行には支障ない。
 

2008年 4月28日追記

上記以外の状況として、

下仁田町青倉から御荷鉾スーパー林道へ上る林道は上部で完全崩落。車、バイクとも数年は上り下りできないだろう。
県道「富岡神流線」は全線通行可能。要所要所に全面通行止めの標識があり実際に地滑りや崩落の工事個所はあるものの、交互通行の信号も設置されており通行可能。但し、工事の進み具合によってはストップされる可能性もある。
南牧村砥沢、大仁田、神流町八倉からの林道はそれぞれ御荷鉾スーパー林道まで上り下り可能。他は未確認。
−−− いずれも規制解除済 −−−

御荷鉾スーパー林道利用の赤久縄山、白髪岩登山口へは県道からの分岐部に全面通行止め標識とバリケードがあり、車両乗り入れは出来ない。無理に入ろうとしても2kmほど先のみかぼ森林公園管理棟の常駐員により止められるので、その指示に従うこと。ちなみに県道分岐から白髪岩登山口まではおよそ7〜8kmの距離となる。

 
2008年4月27日追記

昨年9月の台風9号による被害状況のその後だが、御荷鉾スーパー林道はやはりズタズタ状態。
特に八倉峠の大崩落は酷く、最大幅100m以上、下流に少なくても500m以上にわたって大きく崩れてしまった。修復に数年はかかると思われ現状迂回路もなく、林道は八倉峠を境に当面東西に分断されることとなる。これだけ大規模に崩落してしまうと一時杖植峠がそうであったように、路肩を固めた上で山側に迂回路を削り込む処置がとられるかもしれない。
尚、それ以外でも崩落、土砂流出、倒木、落石個所多数。車はもちろんバイクでもまともに走ることはできない。林道絡みで各登山口へ乗り入れ可能な場所でも、ほとんどピストンとなる。
確認した範囲では大仁田ダム周りの三ッ岩岳、大津、烏帽子岳などは駐車スペースまで車両乗り入れに問題ない。
塩ノ沢峠は南牧側上部でこちらも道幅いっぱいにわたって大きく崩落し、バイクを含め全面通行不能。峠道は6月30日まで全面通行止めとの表示あり、天狗岩などへは湯ノ沢トンネル経由で上野側から登り返せば問題ない。
また、大上峠、田口峠は片側通行だが車両通行可能との案内がある。
−−− 八倉峠、杖植峠周辺を除き規制解除済 −−−
 
2007年11月26日追記

大上峠は復旧工事により当面通行止めとなってる模様。
−−− 規制解除済 −−−
 
2007年9月18日追記

不思議の村・南牧
って言うのも16日、幹線となる県道を走って最奥の田口峠を抜けてきたのだが、歴史的な豪雨に見舞われながらも遠目にはまったく山崩れ・崖崩れの現場は発見できなかった。もちろん近寄れば田口峠道など横切る小沢のほとんどから土砂が流出し、路肩が崩落して片側通行となった場所も多い。それでも川・沢の増水による被害はあっても、土砂崩れによる被害は豪雨の程度からすれば最小限に留まったようだ。いったいどういう地質をしてるのか素人ながらに興味が湧いてきた。想像するに裏山に崖や急斜面を背負った民家は多いが、長年の風雨に堪えそれでも崩れなかったからこそその場所に家を建ててるのかも知れない。

尚、前述のように田口峠の他南牧から佐久側へ抜けるもう一つの峠、大上峠も片側通行ながら車両通行は可能なようだ。御荷鉾スーパー林道本線の様子は分からないが、山岳地形の違いからして塩ノ沢峠〜勧能間はほとんど走れる状態ではないだろう。またスーパー林道に上る各支線も途中の沢から流出した大量の土砂に埋まったところが多い。まだ標識も間に合わない状況だが、ほとんどは通行止めと思って良さそうだ。
更に沢コースとなる登山道では多くの橋が流され、道自身原形を留めない個所が多いようだ。この地域の秋山はなかなか素晴らしいのだが、今シーズンの沢コースはよほど慣れてる人以外遠慮すべきかと思われる。
 
2007年9月11日追記
注記3

先日の台風9号による甘楽町稲含山の降雨は2日間で約600mm、そのうち9/6〜7日朝までの24時間降雨量は約450mmと、観測史上最高値を記録した。古老に聞いてもこれほど降った記憶はないと言い、過去100年くらい遡っても最高記録となりそう。九州や四国と違いこの地でこれほどの降雨はそれほどに珍しいことなのだが、そうなると「南牧村はどうなってんの?」などと筆者も真っ先に頭を過ぎった。
その後の様子はニュースでも再三伝えられ、孤立した集落や被害を受けた道路の様子をテレビでご覧になった方も多いだろう。嬉しくないニュースで南牧村も全国区になってしまったが、幸いにも裏山が崩れて人もろとも家が埋まったなどと言うニュースは今回も避けられたようだ。それでも物的、経済的被害については甚大なものとなったが、65才以上の人口が半分以上を占める村で人的被害がけが人数人だけというのも奇跡的かと思える。

と言うことで、現在南牧村でまともに登れる山は大仁田ダムのある(今回はまさしくダムに救われた)烏帽子岳、三ッ岩岳周辺のみでありご注意願いたい。特に沢コースとなる大岩・碧岩などは相当に荒れてると思われ、御荷鉾スーパー林道の様子を含め山々の詳細が分かり次第こちらの項と西上州の山項で順次追記していこう。
 
2001年11月20日追記
注記2

西上州では従来10年に一度程度の大雨が、ここ数年毎年のように降っている。今年(2001年)も9月の台風に伴う大雨は林道の崩壊など、けっこうな被害を各地にもたらしたようだ。本文中の話と矛盾するが、その後一部沢コースや林道など、かなり荒れてる場合も考えられるので注意のこと。
 
注記1

99年12/4、南牧村最奥の余地峠付近にて、およそ30mの至近距離で熊とお見合いした。幸いこちらが高いという位置関係から危険を感じるほどではなかったが、その後も白髪岩、妙義山塊、上野村山中などで目撃。筆者の目撃談はいずれも一般登山道ではないが、四季や一般向け上級者向けのコースを問わず最近の西上州では熊よけの鳴り物等必須としたい。
 
 
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