裏妙義/女道(谷急沢)より大烏帽子とジャンクション岩峰

ジャンクション岩峰より浅間山
ジャンクション岩峰より浅間山(右岩峰は高岩、左は上信越道軽井沢IC)

旧碓氷峠の間道「女道」より谷急沢を遡行し、妙義山塊最奥の忘れられた山々を縦走する。

おそらくこの山塊でも最も寂しい山々だが、言い換えれば手つかずの自然を満喫出来るルートでもある。

大烏帽子、小烏帽子はヤブ山だが、J岩峰からは360度の大展望に興奮することだろう。

 

グレード : 4  判断基準

ルート : 女道登山口→谷急沢→大黒乗越→大烏帽子→小烏帽子→ジャンクション岩峰→中木川源流→スーパー林道→登山口

総歩行時間(休憩含まず) : 5〜6時間。但し、ルートファインディングを誤ればその限りでない。

登山適期 : 3月下旬〜5月下旬、及び10月中旬〜12月中旬(但し、積雪&氷結なきこと)

地形図 : 南軽井沢

駐車場所 : 女道登山口に5〜6台OK。妙義荒船スーパー林道へ車両乗り入れ不可の場合、国民宿舎付近に数台可。

 

ガ イ ド (2000年5月5日現在)

1.今春出来たばかりの砂防ダムを横目に、石仏のある登山口から女道はいきなり急登で始まる。やがて明るい尾根を越え谷急沢と合流するが、この付近はかなり分かりにくい。「昭文社・エアリアマップ」の解説通り、逆ルートでは発見が難しいかも知れない。谷急沢の道も同じく分かりにくいが、沢から大きく離れることはないので歩きやすい所を行けばOKである。
やがて大きく左に曲がって二俣の分岐。右は谷急山方面の女道を示す道標があり、本ルートは正面の美しい大黒乗越沢に入る。

2.大黒乗越沢に入るとすぐ右岸に石積みの道が見られ、往時の往来を感じさせる。続く明るい沢はさき程の道跡に反し、踏跡はほとんど無いに等しい。ここからは沢内と主に左岸を往復しながらの遡行がいいだろう。やがてゴルジュ状に狭くなると右から8m程の滝となって落ちる支流を見送り、この先すぐ右に大きな岩のある二俣に出合う。

3.岩盤を彫刻刀で彫ったような一直線のトヨの中、水流が勢いよく流れる左俣に入る。地図上で右岸に露岩の記入がある所だが、実際は特に顕著なものは見あたらない。沢は右にカーブし、間もなく左からわずかな水流の支流が小滝となって落ち、堆積物で枯れ沢となった右の本流へ入る。この後沢は再び顕著な二俣となり、前方に滝の見える左俣に入る。

4.左俣は谷急沢(大黒乗越沢)本流初めての顕著な滝である。ここから5〜6m程の滝がいくつか続くが、いずれも濡れていて直登は難しく高巻となる。一気に高度を稼ぐと続いてやや右に曲がり、再び滝が2つ現れる。一つ目は右岸から高巻き二つ目は意外なほど豊富な水流脇をちょっとシャワークライム気分。この滝は階段状でホールドもしっかりしている。登りきるとほんとに最後、源流の二俣着。

5.大黒乗越は左だが、登りやすそうな右に入る。途中から右の支稜に向かって枯れ葉の急斜面を登っていき、支稜上は踏跡らしきに導かれ大黒尾根に着く。尾根は左にわずかでヤセ尾根の大黒乗越である。特別に標識や石仏がある訳でもなく、なぜこんな急峻なヤセ尾根に道を付けたのか何とも不思議である。

6.乗越から短い急登で小ピーク着。ここでこのルート唯一、肩程の高さの枯れかけたような笹原に出合う。もっともあまり密ではないので歩くに支障はない。尾根上にさっきまであった踏跡はここでまったく分からなくなってしまううが、次の鞍部までのわずかな間のみで心配はない。大烏帽子への登りからは再び疎林の登りとなり、やがてヤブ山の大烏帽子山頂に着く。

7.大烏帽子山頂はまったく何もないヤブ山。山頂と言っても緩やかなドーム状の盛り上がりでやっとここかなと判断できるくらい。もちろん山名標識も標柱もない。良く言えばあまりに素朴なというとこだが、ちょっと拍子抜けかもしれない。

8.次の小烏帽子へはいったん西に尾根を下ってすぐ登り上げる。右は垂直の断崖で山頂から見えなかった谷急山がここでは右手正面に大きく見え写真を撮るには絶好。小烏帽子へはわずかに登り上げた本峰隣のピークから南へ急下降しヤセ尾根を歩いていく。小さな岩を越えて鞍部に着き、40m程登り上げれば南面に若い檜植林の広がる小烏帽子山頂である。

9.小烏帽子山頂は南面の檜植林がまだ小さくそちらの展望は良好だが、北面は相変わらずの樹林越しとなる。大烏帽子と同じくここでも標識・標柱など何もない。まったく平々凡々の山頂である。

10.小烏帽子からジャンクション岩峰(以下岩峰)への尾根は下り方向がつかみにくい。南に植林との境となる尾根を少し下り、途中から右に張り出す尾根に入るのが正しい。鞍部からやや登り、小ピーク左を巻く。後はJ岩峰に登り上げるだけであり、やがて岩峰北東の基部に着く。

11.岩峰基部から左に大きなオーバーハング下のバンドを渡ると標柱のある支稜に出る。振り返って見上げる岩峰には古そうな捨て縄が垂直の岩壁に延びている。ここからもう一度垂直の岩峰下を左に回り込み次の支稜から右手の岩場に取り付く。ホールドは豊富だが一応ロッククライミングの範疇で注意は必要。灌木を手がかりに草付きを突破すれば難なく岩峰の稜線に出る。右へ細い踏跡から灌木をこぎ、コブを一つ越えれば苦もなく岩峰山頂着である。

12.岩峰上は期待に違わぬ大展望に疲れも吹き飛ぶだろう。但し、妙義富士ほどではないが、こちらも山頂は狭いので行動には注意が必要。南西面こそやや灌木に邪魔されるが、それでもちょっと南北に移動すれば360度の大展望である。
北東に浅間と高岩が重なり、眼下には上信越道や恩賀部落の家々が箱庭のように点在している。北に浅間隠し周辺の山々と目の前には谷急山。裏妙義の岩峰群は大烏帽子に隠れて見えない。東は見慣れない角度からの表妙義。遠く牛伏山からは時計回りに西上州のほとんどの山々が展望OKである。更に榛名、赤城、奥秩父の山々、八ヶ岳などもバッチリ。
尚、山頂からは枯れた松から先の固定ザイルが延びていたが、すでに色落ちしてかなり古いものと思われる。

13.下降は登った道を標柱のある支稜まで戻る。岩場の下降もザイルを必要とする程ではないだろう。
標柱の支稜からは左側の沢源流に降りていく。スリップに注意しながら急斜面を下り源流に降り立つ。源流はよくある浮石だらけの歩きにくい急沢で、左右の斜面も岩盤上に薄く土が乗った急斜面であり慎重な行動が必要。特にスリップや浮石に足をとられ捻挫などしないよう気を付けよう。この沢は中木川源流に相当し、大きな滝こそないものの小さな段差はけっこうある。右岸、左岸、沢中と安全そうな場所を選びながら下り続けると、やがていい加減飽きた頃沢筋を左右に跨げるほどゴルジュ状に狭まる。小さな滝状の所を通過すればすぐ二俣で、左から滝となって合流する沢は豊富な水を落としている。
この後、沢は急に傾斜が緩やかにまた広くなり、左岸をわずかでスーパー林道の枝林道着である。

14.荒れた林道を1qちょっとでスーパー林道中木川最奥の橋のたもとに出る。後は3q程の林道歩きで女道出合いである。

 

注記)

1.大黒乗越沢に入って以降の沢は踏跡など無いに等しい。
又、稜線の踏跡も必ずしも明瞭では無いので注意が必要。基本的には小ピークを巻くことはあっても、尾根から離れることはない。

2.熊の生活圏なので「熊よけの鳴り物」はこのルート必須である。↓下の写真に示すよう今回も大量の糞を発見している。

3.女道と大遠見峠の由来は下記による。
−−大遠見峠は昔、碓氷の関所のあったころ、間道として発達したものである。当時、入鉄砲と出女を取り締まったため、婦人用の間道として利用されたらしく、女道といわれている。−−
以上、昭文社・1975年発行第8刷エアリアマップ「妙義・荒船・神津牧場」より抜粋。

 

  
左) 女道入口の石仏  スーパー林道には女道入口を示す大きな標識もある。
中) 大黒乗越沢分岐(二俣)  女道はここで沢右俣沿いに右折。大黒乗越沢は直進する。
右) 大黒乗越沢方面の指導標  二俣には驚いたことに大黒乗越沢を示す道標が。

 
左) 石積みの道  大黒乗越沢に入ってすぐ右岸に石垣が続く。もっとも道自身は???
右) 大岩の二俣  上流の二俣には右に大岩があり分かりやすい。ここでは水量も多い左俣に入る。

  
左) 本流の滝  何てことなさそうだが濡れていて直登は出来ない。源流付近は小さな滝が続くようになる。
中) 最上流の二段の滝  一段目は右岸から、二段目は水流横を直登。
右) 源流  写真で左手が大黒尾根方面。ここはいったん右の支稜に登り半時計回りに大黒尾根に出る。

  
左) 大黒尾根より谷急山  最低鞍部より一つ大烏帽子よりの鞍部に出る。木の間越しに谷急山や裏妙義の岩峰群が近い。
中) 大黒乗越  大黒乗越は写真のヤセ尾根を左上から右下へ斜めに横切る。入山側にはかすかな道跡がある。
右) 大烏帽子山頂  典型的ヤブ山の山頂。山名標識はもちろん石柱も何もない。

  
左) 大烏帽子より谷急山  山頂の谷急山側は断崖である。木の間越しに谷急山が大きく見える。
中) 小烏帽子山頂  ヤセ尾根を下り次に登り上げれば小烏帽子山頂。この付近のみ中木川側は人工的な檜植林。
右) 小烏帽子より西上州の山遠望  まだ若い植林越しに赤久縄山方面の西上州を展望出来る。

  
左) 小烏帽子の鞍部付近よりJ岩峰  木の間越しにチラッチラッと双コブの岩峰が近くなる。
中) J岩峰北東壁  J岩峰基部から大きなハング下のバンドを左へトラバース。バンドは十分広く危険はない。
右) J岩峰への登路  バンドから二つ目の支稜右が登路となる。この先は急峻なザレ地のトラバースで、下降時もこの登路を下った方が安全。

 
左) 登路のコブよりJ岩峰  登路途中のやや低いコブから山頂を望む。北東面は垂直の壁であることがよく分かる。
右) J岩峰山頂と西上州の山々  狭い山頂と西上州の山々。左は北東壁で足下から垂直に落ちる。

 
左) 山頂より北西面の展望  中央に浅間山、手前右に高岩、左に石尊山、眼下に恩賀集落と上信越道軽井沢ICが箱庭のよう。
右) 山頂より北面の展望  左に谷急山、右に大烏帽子と小烏帽子が重なる。遠くそのバックには上信越の山々が控える。

 
左) 山頂より妙義山  見慣れない方向からの妙義山。左に白雲山、右に金洞山。遠く高崎や富岡の市街地も。
右) 山頂より下降路の中木川源流  左よりの一直線に下る沢が下降路となる。

  
左) 下降路源流への急斜面  下降路の沢へは源流の急斜面をスリップに注意して下る。
中) 下降路の沢  ほとんど水流の見られない沢筋。浮石が多いのでくれぐれも捻挫などしないように。
右) 二俣  写真で左の支流から下ってくる。右俣は水が豊富。

 
左) 林道出口  二俣からわずかで枝林道に出る。後は1kmほど下れば写真奥の林道からスーパー林道へ合流する。
右) スーパー林道の橋上より中木川上流  左写真のガードレール(橋)上から中木川上流方面を見る。

 

HOME       BACK