裏妙義/谷急山/失われた直登ルート
最終更新 2012年11月30日 |
第2岩頭上から登路の尾根と屏風岩を見上げる |
妙義山塊最高峰谷急山へは、裏妙義主稜線の三方境まで登り、更にそこから縦走路を辿るのが一般的である。 しかし、この山には他にも失われた登路が幾つかあり、今回は30年ほど前まで存在していた並木沢から直登する岩稜ルート(1972年版エアリアマップ参照)を訪ねてみた。存在していた当時からすでに上級者向けと言われていたルートで、すっかり廃道となった現在ではヤブを分けての登行となる。 2003/5月上旬現在ルート中に道標やテープは一切無く、特に屏風岩付近ではルートファインディングを要する。 |
グレード(個人評価) | H 1 2 3 4 5 U / 判断基準 |
ルート | 並木沢登山口→旧道分岐→枝沢→稜線→岩稜帯→屏風岩→北稜→谷急山 下山は北稜、または三方境から並木沢の一般ルートへ。 |
総歩行時間(休憩含まず) | 5〜6時間 |
登山適期 | 4月上旬〜5月中旬 及び 10月中旬〜12月上旬 |
地形図 | 南軽井沢 |
駐車場所 | 登山口手前のカーブに駐車スペース有り。 |
注記 | 稜線ルートとなってからは岩頭を巻く時以外、基本的に尾根を大きくはずれることはない。但し道跡は細く頻繁に不明瞭となり、場所により行く手を遮る灌木も多い。一般には北稜に出るまでヤブと表現される状態であり、この種の山に慣れた熟達者のみに許されたルートである。 尚、全ルートにわたり笹は無い。 |
ガ イ ド (2002年5月3日現在) |
登山口から旧道分岐までは三方境への並木沢ルート一般道を進む。↑左写真の分岐で直進する旧道に入り、枝沢を一つ渡ると崩壊地がある。 ↑右写真の崩壊地先を左に下れば並木沢。直進して荒れた作業道に入ると杉植林内となり、やがて小さいわりには水量豊富な並木沢の枝沢に出合う。水場はここが最後なので補給しておこう。 |
ここでこの枝沢にルートをとり、V字谷のような岩盤を跨いだり左右に渡り歩きながら登っていく。途中小さなへつりや滑滝(↑中)や小滝(↑右)などあり、短いが妙義らしい沢でけっこう面白い。やがて4つの支流が合流する広場のような場所に出ると、ここからは一番右側の枯れ気味の支流から稜線鞍部を目指す。 |
赤松のある稜線鞍部付近には獣道とも踏跡とも判断しがたい薄い道跡がある。この道には常に鹿やイノシシと思われる無数の足跡があり、ここから西側の木の間越しには上信越道なども見えることだろう。 |
ヤブを分けながら稜線を登っていくと岩頭が次々と現れる。まず第1岩頭は左から、続く第2岩頭も左から回り込む。第2岩頭は回り込むと上側から簡単に登れ、岩頭上からは360度の展望で一休みには丁度良い。↑写真は北西側の展望で左に稲村山、その奥に浅間山が霞み、右奥は鼻曲山、横切る道路は上信越自動車道である。また見上げる上部には下界からもよく目立つ岩峰が聳え、その形から「屏風岩」とでも命名しておこう。 |
この先岩稜歩きとなり、途中50cmほど切れた岩稜を跨ぐ。ここは高さわずか2mほどだが、幅が無く狭いためバランスを崩しやすい。 岩稜が終わると第3岩頭を右から回り込み、その後小さなコブを越えてから非常に急傾斜な登りとなる。稜線左側の落ち葉や土の斜面に道跡が続くが立木や灌木もまばらで、スリップしないよう注意が必要。登りきると傾斜は緩む反面、ややヤブっぽくなる。鞍部からここまで、稜線上は概ね痩せている。 |
ヤブの奥に屏風岩が見え始めると一旦岩の基部まで登り詰めてから右へ下り気味に回り込む。ここにはビバークも出来そうな岩屋が3カ所(↑)。 次の岩峰まで半時計回りに登り返すが、途中にはいつも冷たい風が吹き出す風穴がある。すぐ小さな乗越で、岩壁の基部に沿って一旦下った後、小石でザレた沢の源頭に出る。このズルズルと歩きにくい源頭を登り切れば再び稜線である。 |
登り着いた稜線からは眼下に並木沢が深く、右手には鋭い岩峰が天を突いている。ここからヤブを分けて稜線を戻れば屏風岩山頂(↑左)。写真のバックは烏帽子岩と赤岩。尚、360度の展望だが南面の谷急山頂は北稜のため見えない。 屏風岩上からは今登ってきた稜線ももちろんバッチリ(↑右) |
再び登り始めるとやがて先の鋭峰を左に見下ろすようになり、烏帽子岩や赤岩がその鋭峰に重なって遠望出来る(↑左)。 次に現れる幅が細く高い岩稜の取り付きで初めて山頂方面が見える(↑右)。この岩稜を右に下り気味に巻き、岩場をトラバースして再び登り上げる。 |
稜線に戻り、ここからは仏沢源頭を右に見てしばしの急登。間もなく谷急山北稜の山頂から数えて2つ目のコブに着く。↑上写真はコブから登路を振り返ったところ。写真でも分かるように、実際にはほとんど道跡は判別出来ない。 あとは北稜を登り詰めれば10分足らずで谷急山山頂である。 |
山頂からは浅間が近い(↑)。好天なら展望は一級品。 尚、下山は北稜を下るか三方境へ縦走し、並木沢の一般道を下る。時間的には北稜の下降が1時間半足らず、三方境経由が2時間半前後。北稜はもっとも早く下山できるが、気の抜けない急峻な岩稜下降となる(↓)。 |