西上州最高峰/高天原山より旧三国峠道(上野道)周回登山

県境稜線展望台より高天原山
県境稜線展望台より高天原山

西上州山域の最高峰として一般には御座山(2112m)が上げられます。しかし、御座山は県境から西に離れた南佐久の山でもあり、群馬県に掛かるという意味での最高峰はこちら高天原山(1978.8m/ショナミの頭・蟻が峰等別名多数)となります。

今回はその高天原山を含む上信県境稜線に御巣鷹の尾根から登り、三国山経由で旧三国峠道を下る周回ルートを歩いてみました。西上州最奥の山々となり、GW期間中というのに御巣鷹の尾根昇魂之碑以降1人の登山者とも会わないというマイナーな山々です。

下山路となる旧三国峠道の状態が今ひとつ分からず、冬期を過ぎたシーズン初めということもあり筆者は一泊の幕営登山でのんびりまわりました。しかし、結果的に思ったほどの荒廃ではなく、健脚者ならば夏期と積雪期を除き早朝発により日帰りでも可能でしょう。

 

グレード(個人評価)  H  1  2  3    5  U  /  判断基準
ルート 御巣鷹の尾根→県境稜線→高天原山→三国山→旧三国峠道→棒切沢→車道
総歩行時間(休憩含まず) 約8〜10時間(帰路の車道歩行含む)
登山適期 10月上旬〜5月下旬  但し冬期は積雪量による
地理院地図へのリンク http://maps.gsi.go.jp/#15/35.996063/138.702993
駐車場所 御巣鷹の尾根登山口駐車場/最大10〜12台程度(あまり広くありません)
この駐車場まで残り4km弱付近で冬季閉鎖有り。解除は例年4月28日。
注  記 この山に登ろうなどと思うマニアック?な方なら登山口より高天原山までは問題ないでしょう。
高天原山から三国山間は 1764m峰 まで概ね笹藪の道となり、二重三重に平行した獣道や切り開きの分岐多数。基本的に大きく尾根を外すことはありませんが、地図片手のルートファインディング必須! 特に舟窪からの下りは二重山稜もあり、ルートを見失わないこと。この間、県境杭もほとんどありません(まともには見つかりません)。
その他、旧三国峠道は本文参照。

 

2015年 5月上旬現在
 
登山口と昇魂之碑前広場
左) 御巣鷹の尾根(昇魂之碑)登山口  駐車場前道路脇に清冽な地下水の水場があります。
右) 昇魂之碑前広場
 
県境稜線への急登
昇魂之碑左から急尾根に取り付き県境まで登り上げる。初めは馬酔木を分けながら、やがてシャクナゲに変わってくるともうちょっと!
 
昇魂之碑分岐
左) 県境稜線昇魂之碑分岐
右) 右は大蛇倉山方面
 
県境稜線展望台より高天原山等
分岐からわずかに下ると岩上の展望台。正面に高天原山、わりと近くに三国山も!
 
高天原山への登山道
簡単な岩場を下り、登りに掛かると県境稜線西を巻いて行く。
 
高天原山山頂
間もなく、あまり広くない高天原山山頂着!
 
山頂三角点
左) 振り返った登路側
右) 白髪岩と同じ旧字体の二等三角点標柱は古そうで、彫り込み文字は写真の一面のみ。
 
山頂からの展望
展望は樹林に遮られてイマイチ! 南西に金峰山と小川山、南アルプス等、西に八ヶ岳連峰。それも木々の生長に伴い間もなく見えなくなっちゃいそう。
 
山頂より三国山方面
三国山方面へはいきなり枯れた笹藪?
ここ数年西上州の山の笹は多くが枯れてきています。何らかの環境変化か?次世代へ更新の時期なのか?
 
舟窪付近
舟窪付近。
道は割合しっかりしておりほぼ直角に南へ曲がる。それでも獣道を含め枯れた笹の切り開きは幾筋もあり、分岐したり交差したり一応のルートファインディングは必須!
 
ムササビ
ムササビ発見! 同定できる形で初めて生で飛ぶ姿を見た。見事な滑空技術、さすがです!!
 
岩が目立ちはじめる稜線
1818m峰 を過ぎると岩が出始めて、すぐ大岩に行く手を阻まれ右へ巻く。
 
旧三国峠
旧三国峠
最低鞍部を過ぎわずかに登ったもう三国山西の肩という所に旧三国峠。長野県側はパッと見どっちだ?って感じですが、群馬県側は水平に峠道が延びているのが見えます。今回下山はここまで戻らず三国山から上武県境稜線を下降しました。
 
三国山山頂
三国山山頂
群馬県最南端であり、その名の通り長野と埼玉を含め三県を分ける。
 
シャクナゲ林の急下降
県境稜線 1796m峰 からほぼ真北に石楠花林を急下降。
歩きやすくはないが、思ったほどには石楠花も被って来ない。登るのはごめんだが!?
 
小岩峰より振り返る
やがて小岩峰に登り着く。360度の好展望は全ルート中ここだけ!
 
虚峠間違い
正しくは虚峠(そらとうげ)。しかしこの場所は上武県境でありここはその虚峠でもありません。
 
崩壊地からの展望
左) 棒切の峰(1730m峰)西面を下り気味にトラバースし、崩壊地最上部を通過。
右) まともな展望があるのは先の小岩峰とこの崩壊地西面のみ。正面に高天原山、右奥に高岩(1962m峰・大蛇倉山)の岩峰。
ちなみに大蛇倉山は現在「だいじゃくらやま」と呼ばれることが多いようですが、筆者の持つ昭和30年代の紀行文では登り上げる沢が「大蛇倉沢(=大蛇ー沢/おおだくらさわ)」で、山名は「高岩」であり、大蛇倉山(おおだくらやま?)の名はありません。
 
トラバースする旧峠道
崩壊地を過ぎると旧峠道も比較的分かりやすくなってくる。
 
石楠花坂
やがてやや幅広の支稜に達するとほぼ真北に向かって「石楠花坂」の下りが始まる。旧峠道は写真のように明瞭だったり不鮮明だったり。
 
虚峠(そらとうげ)
虚峠
やがて鞍部に着くと尾根上の大きな岩塊を右に見て回り込み、ここがホントの虚峠! 1543m峰方面に尾根道が続いていますが、それは峠道ではありません。たぶん?!
尚、1543m峰南の鞍部に朽ちた宮が残っているらしく(筆者は未確認)、それを虚峠の証拠とする説もあります。しかし私見ですが石仏等含むその種の多くは西上州でお馴染みの山岳信仰(岩山信仰)の現れとして1543m岩峰を指す可能性が高く、峠道とは無関係のように思われます。
 
虚峠からの下降路
左) 峠から回れ右して先の大岩塊沿いに東へ下り、小沢を挟んだすぐ東の尾根に渡ります。
右) そこは棒切沢本流と小沢を分けるやせ気味の明瞭な尾根ながら、その小沢と共に地形図上はっきりとは存在しない尾根です。やがてその尾根も大きな岩峰に行く手を阻まれ、左に先の小沢へ降りるか、右の棒切沢本流に降りるか判断を迫られます。筆者は沢の傾斜からより安全と思われる右の本流へ降りました。
 
棒切沢上流部
降り立った棒切沢本流はまったくヤブも無く大変気持ち良い原生林!
 
のっぽの木の原生林
軽く20m以上はあるだろうのっぽの大木が雰囲気抜群!
時期的なこともあるだろうけど、この日は清々しく明るい本流でした。
 
二俣
二俣を振り返る。右がさっき見送った虚峠への小沢、左が下ってきた本流。
 
丸太橋
間もなく何とな〜く左右に峠道と思しき道跡や石積みが現れ始め、沢の左屈曲部手前から左岸に道が現れます。回り込むと丸太橋!
 
棒切沢出合付近
右岸に岩屋風の大きな岩塊下を通り過ぎ、更に右岸の道を少しで神流川との出合が見えてきました!
 
棒切沢出合の軌道跡
棒切沢出合では木材搬出用軌道跡や石積みの橋桁が往時を忍ばせます。
 
軌道跡と砂防ダム
平坦な軌道跡を振り返りながら、少し下流の砂防ダムを上れば登山口まで車道3km弱程度。
 
 
踏破軌跡
踏破軌跡(縮尺は任意)
GPSのものではありません。地図を元に筆者登山後の覚えですので、細部で異なる場合があります。
 
昭和30年代の紀行文によると、虚峠は「(上州側から)登っていくと三国峠と間違いやすいことから虚峠(うその峠「嘘峠」の意?)」と言うことのようです。また逆に「虚峠からジグザグに急下降し小沢に降り着くとそれが棒切沢である」とも。この辺、説明文があまりに簡単すぎて実際のルートがどうなのか、今のところはっきりとは分かりません。

ここからは私見ですが、ネット検索すると本沢方面に降りるルートが多く紹介されているようです。しかし本沢からだと虚峠を三国峠と間違えるには無理があり(東を向いて三国峠とは思えない)、やはり尾根を横断するルートとして西または南を向いて辿り着く棒切沢からが正しいように思われます。先の紀行文文脈から想像すると、筆者の下った小尾根を乗り越えて直接棒切沢本流に降りるのか、虚峠へ登り上げる上図青線で示した小沢を下っていくのかの二つが考えられそうですね。
 
大正期の三国峠道
尚、大正期の古地図(上図)を見ると本来の三国峠は信州川上(佐久)と武州中津川(秩父)を結ぶ峠道で、現在の地理院地図でも三国山東尾根にある破線の歩道がそれとなります。中津川林道による現在の三国峠も両地域の連絡路としては同じ訳ですね。旧三国峠は上信県境にありますが、三国山北面をほぼ水平に巻き群馬県は一瞬かするのみ。実はすぐ先上武県境から秩父道(東尾根)に入るというルートなんです。したがって筆者の歩いた虚峠を含む上野道(こうずけみち)は三国峠の支線と言うことになりそうです。上の古地図で三と国の間、上武県境沿いに北へ延びる破線がそれです。
 
 
最終更新  2018年 3月31日
追記更新  2015年 5月28日
新規追加  2015年 5月16日
 
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