「チャイコン」  No.21 010505
〜 音楽界きってのプリマドンナを聴く−2 〜
 
前回のメンコンとくればチャイコンも上げない訳にいかない。もちろんこれも4大ヴァイオリン協奏曲中の一つ。やはり前回の繰り返しになるが、チャイコンチャイコフスキーのヴァイオリン・コンチェルト(協奏曲)のこと。クラシック音楽界きってのプリマドンナその2、である。
「運命」「未完成」がそうであったように、メンコンとチャイコンは実に仲のいい、それも超の付く美人姉妹。実際、レコード業界でも昔から(LPになってから)揃ってカップリングされて来た。ホントは歳の離れた(約35歳)姉妹なのだが、実に流麗で憂いと輝かしさの両方をちりばめた両曲なのである。
共に30〜40分程度の演奏時間だからレコードの表・裏に分けて・・・・、なんてヤボなことを言ってはいけない。
チャイコフスキーは以前もチョロっとお話ししたように、友達にしたら疲れること請け合いのナイーブなナルシストであった(に違いない)。何てったってパトロンであった裕福な未亡人フォン・メック夫人と、十数年間に渡り手紙だけのプラトニック・ラブを貫いた強者である。同性愛者だったという説もすでに定説の域に達しているが、やはり何より本人自ら傷つくのを恐れた感が強い。
おまけに小心者?としても名を馳せ、自信を持って出した作品が不評だったりするとすぐ落ち込んで療養したり、誰かに何か言われると改訂を繰り返したりした。まあ、チャイコフスキーに限らずこの手の芸術家には事欠かないが、つまりはそのくらい感受性豊かでないと優れた芸術作品など・・・・ということなのだろう。
有名曲の多さでは古今の作曲家中でも指折りの大作曲家チャイコフスキー。彼はこれ以上ないくらい、人間らしい人間の弱さを持っていたようだ。
彼の曲は総じてロシアの「ワルツ王」とも「旋律家」とも言われる親しみやすさがあり、同時にロシアの冬を思わせる暗く感傷的な美しさをも併せ持つと言われる。私もまったく同感。ある意味「歌謡曲的」と言えるかも知れない。おそらくそんなところが、特に悲哀を好む日本では大きく大衆的な人気ともなってる理由だろう。どの曲からもどこか悲劇的な哀愁を感じない訳にはいかない。それはまさしく先の性格丸出しと言うような、旋律美として昇華されているのである。
曲は第一楽章、オーケストラがいかにも思わせぶりにひとしきり鳴った後、ヴァイオリンが極めて情動的且つ流麗な旋律を弾き始める。やがて楽章中頃に差し掛かると、金管の装飾音をバックにフルオーケストラの沸き立つような印象的な音楽。前後してヴァイオリンの更に情感豊かなカデンツァが輝かしい。先のフルオーケストラの部分は最近でもCMに取り上げられたばかりで、よく耳にしたお馴染みの部分だろう。
第二楽章はここでも旋律家チャイコフスキーの面目躍如。まさにエレジー(哀歌)という雰囲気バッチシの曲。
突然始まる第三楽章は飛び跳ねるようなリズムが印象的な舞曲風の音楽。絡み合い縺れ合いながら進展する。
この曲は別項(⇒こちら)でも言ったように、数あるヴァイオリン音楽中でも横綱級の技巧が必要とされる。作曲時には同じく彼の「ピアノ協奏曲第一番(⇒こちら)」と共に、こちらも演奏不可能とのレッテルが貼られたことで有名。そんな難曲さえ現代では誰でも演奏するが、当時は初演までに完成から3年を要し、その結果も惨憺たる不評だったらしい。こんなすばらしい曲に何が不満だったのか、今ではとても考えられないが・・・・
 
推薦盤

ヴァイオリン:アイザック・スターン
小沢指揮ボストン交響楽団(メンデルスゾーン)
ロストロポーヴィチ指揮ナショナル交響楽団(チャイコフスキー)
1977&1980録音 CD番号:22DC5533 ソニー

古今東西名盤を数え上げたら数知れず。巨匠から若手までヴァイオリニストならば一度は演奏し、また録音する名曲中の名曲。っということで前回メンコンと同じカップリング盤を紹介。約20年前、スターン絶頂期の演奏である。チャイコフスキーでは同じロシア系のロストロポーヴィチが抜群のサポートをする名演。
 
HOME       BACK