妙義山/小竹沢からつづみ岩(相馬岳北稜 P12) |
最終更新 2012年 5月20日 |
相馬岳北稜の見晴らしよりつづみ岩 (中央付近の白い岩壁基部が仙人窟、その上の急峻な白い岩稜が登行路となる。) |
妙義山北東面より大沢と並んでくい込む一見何の変哲もない小竹沢(昔は相沢又は会沢とも呼んでいた)。 地形図からはなかなか想像出来ないが、実は標高500〜600mにかけて大規模な連続滝を抱えている。 水流のあるまとまった一つの滝群としては標高差70mを誇り、私が知る限り妙義山塊最大級。 更に相馬岳北稜の奇峰「つづみ岩(P12)」には登路がなく、双方とも登攀用具必須である。 つづみ岩山頂付近では柏手を打つこと。日光の鳴き竜を思わせる明瞭な共鳴音が大きく響き渡る。 |
グレード | 5 判断基準 |
ルート | 小竹沢出合→石碑の滝→小竹の大滝→炭焼き跡→北稜(はさみ岩)→仙人窟→つづみ岩 →仙人窟→相馬沢下降→相馬沢出合→(車道歩行3.9km)→小竹沢出合 |
総歩行時間 | 5〜6時間程度(休憩・車道歩行含まず) |
登山適期 | 4月中旬〜5月中旬 及び 10月中旬〜11月下旬 |
地形図 | 松井田&南軽井沢 |
駐車場所 | 出合の旧道・相沢橋付近の路肩、又は新道妙義湖よりの路肩(駐車帯あり)。 |
注 記 | 岩経験者、及び塾達者以外はご遠慮願います。下降にはザイル必須! |
ガ イ ド (98年11月15日現在) | |||
出合は旧道相沢橋左から入る。堰堤を越え、倒木・流木を踏み越え明るい沢筋をしばらく。やがて杉林となると暗くなるかわりに歩きやすくなる。100トン以上はあろうかという大岩ゴロゴロの沢が再び広葉樹となり明るくなると、「明治26年3月??不動明王」と刻まれた石碑が大岩に立ち直下は2段5mほどの滝となっている。 両岸が狭まると岩壁に行く手を阻まれる。左は巨大なチョックストーン、右からは岩壁基部から本流の水が流れ出している。この岩壁と思われた岩、実は数千トンはあろうかという超巨大なチョックストーンであった。通過は左手のバンドのようになった岩上をバランスに注意しながら回り込む。登りきると更にチョックストーンが折り重なり、左手の隙間をレイバックで強引に乗り越える。 かぶり気味のここはザイルなしに安全な下降は不可能。忘れた場合は引き返した方がよい。ここから上部でのノーザイルによる下降は更に困難となり判断材料は一つしかない。 |
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再び大岩のゴーロとなり左岸の支流奥より大きな滝を見送ると、いよいよ「小竹の大滝」下部に出る。大滝全体はS字状に曲がった5段の滝となっており、それぞれ10m前後の滝となって連続している。合計の高さは70mほどとなり、付近は両岸とも大岩壁に囲まれ、妙義の沢では並木沢の大滝や北烏帽子沢上部のルンゼ群を思わせる。 一段目は右岸から、二段目も同じく右岸の岩稜を越えられそうだが、手がかりが遠く上部がきつそう。ここは左岸に回り左に3mほど逆層の岩場をスリップに注意しながら登る。 二段目、三段目の間はアーチ状に取り囲む岩壁内の広場で、歩き回りながら上に下にゆっくり滝を眺められる。登るには右岸からの小さなルンゼを登り(濡れている場合注意)、左に張り出した岩稜上に出る。四段目、五段目はそのまま右岸を高巻けばよい。乾いていれば直登も可能だろうが確保は必須。 |
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大滝落口は明るく、眺めも良い。上信越道やR18の車の音が思いの外間近に聞こえる。この先しばらくナメとゴーロが続くが、水量が少ない場合は早めに水を補給すること。いったん水流が消えると二度と現れない可能性が高い。 左岸から落ちるいくつかのルンゼを見送ると5mほどの滝が現れる。濡れてなければ右岸が階段状で登行は楽。危険な場合付近に良い登路が無く、50mほど手前の左岸のルンゼから大きく高巻く。 二俣を二つ過ぎると(いずれも右が本流)、やがてまだ現役で使えそうな立派な炭焼き跡がある。昔は道があった(あるいは今でも巻き道がある?)証拠なのだろうが、この沢をどうやって上り下りしたのか不思議である。 次の二俣は左に入る。すぐ右に3〜4人は泊まれそうな立派な岩屋があり、沢正面はチョックストーンに塞がれてしまう。ここは左の隙間をレイバックで登る。中央に大木のあるルンゼを過ぎ、次の二俣を左にとればヤブもなく稜線は近い。尚、ルンゼ内は濡れておりスリップに注意。 |
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辿り着いた相馬岳北稜は「はさみ岩」基部である。「仙人窟」へは右にやや上り気味に岩壁基部を回り込み、次の岩峰も同じ要領で回り込む。 仙人窟から「つづみ岩」への登路はなく、慎重なルートファインディングを要する。特にザイルなしでの安全な下降は不可能なので、その場合登行はあきらめること。 仙人窟小竹沢側右の岩場を登りいったん岩稜に出る。すぐ右に回り込み岩の基部を通過した後、立木に掴まって向こう側へ5mほどいったん下る。続いて交互に現れる岩と草付きの急斜面を灌木頼りにやや右に15mほど斜上。最後は左にバンド状の草付きをトラバースすれば岩稜上に戻れる。すばらしい高度感の(特に左側は100mくらいスッパリ)細い岩稜を20mほど登れば山頂である。 岩稜中は有り余るほど手がかりがあるが、妙義特有の風化した脆い火山岩なので注意が必要。 |
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山頂からは見慣れない角度からの表妙義と裏妙義の全貌が見渡せる。 この山頂では必ず柏手を打つこと。つづみ岩と言われる理由が否応なしに納得できる。ここで柏手を忘れたら苦労して登った意味がない? 隣の岩峰P11との下界から、びっくりするくらい大きな共鳴音が聞こえることだろう。 つづみ岩からの下降は登路を戻るが、岩と草付きの急斜面の下降にはザイルが必須! 仙人窟からは相馬沢へルートをとるのがよい。(大沢から相馬岳北稜参照) 尚、相馬沢出合から小竹沢出合までは車道歩行4km弱となる。 |
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120520追記 白雲山の第一峰(天狗岳?)のことを「鼓ヶ岳」と称する説があることを知った。山頂の祠を訪ねると深夜鼓の音が聞こえるという逸話を元にしているらしい。だとするとやはり本項は裏つづみ岩と呼ぶのが正解? なんだか分からなくなった・・・・^^;^^; 現在の地名や様相と多少矛盾&相違する部分はあるがこちら(碓氷郡志/大正13年/第四章地勢)参照。 |
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110925追記 これまで「裏つづみ岩」と紹介していたこの項ですが下記のように訂正致します。 地図上標高点890mがP11なのかP12なのかは判断に迷うところです。ここでは相馬岳北稜の核心部であり対を成す岩峰P11とP12の総称またはいずれかがつづみ岩であると判断し、小竹沢側から登れるP12を指して「つづみ岩」と表記致します。裏つづみ岩は松井田方面から見て裏手となり見えない、「P11西稜上の763m標高点」を指しているものと従来表記を訂正します。 |
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